また)” の例文
彼は闇の中でまたたきをした。睡魔—敢えて此の場合「睡魔」と云う—が彼を見捨てようとして、足で彼の肩を蹴ったのだ。
けれど十六露里ヴェルストの里程標もまたたく間にとおり過ぎてしまったのに、村らしいものはいっこう眼につかなかった。
なおもマジマジと大きなまたたきを続けていたが、やがて何事かを警戒するように恐る恐る問い返した。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
蚊帳の外にある有明行灯の火がじじじとまたたく、なに事もない、……いやそうじゃあない、廊下の隅のほうがぼうと明るくなった、青白い光がふわふわ揺れている。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
血管のようにくねくねと闇にはしるネオンサインを小さくまたたかせながら垂れめていた。
蝕眠譜 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
気がついて見ると真中に若い女が坐っている、右のはじには男が立っているようだ。両方共どこかで見たようだなと考えるうち、またたくまにズッと近づいて余から五六間先ではたととまる。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またたけばまた夜明よあけて
わなゝき (新字旧仮名) / 末吉安持(著)