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瞬
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まばた
ふりがな文庫
“
瞬
(
まばた
)” の例文
少しも恐れた気色がなく、
瞬
(
まばた
)
きもしないで彼の眼中を見すえているのだ。敷布の上にひろげた手は泰然として震えだも帯びていない。
空家
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
空には星が
瞬
(
まばた
)
きをしてゐる。平な雪の表面が際限もなく拡がつてゐる。そして地平線には、暗い森が
聳
(
そばだ
)
ち、遠い山の頂が突出してゐる。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
草木
(
さうもく
)
及
(
およ
)
び
地上
(
ちじやう
)
の
霜
(
しも
)
に
瞬
(
まばた
)
きしながら
横
(
よこ
)
にさうして
斜
(
なゝめ
)
に
射
(
さ
)
し
掛
(
か
)
ける
日
(
ひ
)
に
遠
(
とほ
)
い
西
(
にし
)
の
山々
(
やま/\
)
の
雪
(
ゆき
)
が
一頻
(
ひとしきり
)
光
(
ひか
)
つた。
凡
(
すべ
)
てを
通
(
つう
)
じて
褐色
(
かつしよく
)
の
光
(
ひかり
)
で
包
(
つゝ
)
まれた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
まず『本草綱目』に『礼記』に兎を
明眎
(
めいし
)
といったはその目
瞬
(
まばた
)
かずに瞭然たればなりとあるは事実だが兎に脾臓なしとあるは実際どうだか。
十二支考:02 兎に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
寝ぼけた奥から、小さい星がしきりに
瞬
(
まばた
)
きをする。句になると思って、また登る。かくして、余はとうとう、上まで登り詰めた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
虎之助は涙の溢れる眼で、
瞬
(
まばた
)
きもせずに老人の面を見上げた。師を得た、真の師と仰ぐべき人を得た、自分の行く道は決った。
内蔵允留守
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
父は
沸
(
に
)
える腹をこらえ手を握って
諭
(
さと
)
すのである。おとよは
瞬
(
まばた
)
きもせず
膝
(
ひざ
)
の手を見つめたまま黙っている。父はもう
堪
(
たま
)
りかねた。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
健吉も、小枝の膝に腰かけておとなしく
瞬
(
まばた
)
きしている。段々進んで「ポツダム宣言を受諾せざるを得ず」という意味の文句がかすかに聞えた。
播州平野
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少年はそういって、眼をパチパチ
瞬
(
まばた
)
いた。青竜王はパイプから盛んに
紫煙
(
しえん
)
を吸いつけていたが、やがて少年の方に向き直り
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
はっきりしない色の小さな眼は、顔のずっと奥の方で
瞬
(
まばた
)
きをしている。鼻は、まるまる肥えて盛り上った赤い顔を包む肉魂の中に埋まっている。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
二人の男はひと眼見たばかりで、その
昂
(
たかぶ
)
った心がわかるほど、烈しい
瞬
(
まばた
)
きをくり返していて、基経は用意して来た言葉も容易にいい出せなかった。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
彼の魂は
瞬
(
まばた
)
きせざる眼をもって見詰めながら闇の唯中を
彷徨
(
ほうこう
)
する。時に彼の眼が闇の中に光の幻覚を生ずることがあっても彼の魂は欺かれはしない。
語られざる哲学
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
秋子は
瞬
(
まばた
)
きをした。そして大きく眼を
睜
(
みは
)
った。彼は彼女の顔から遠ざかってなおも彼女の顔を見詰めた。彼女の眼の表情は汽笛の余韻を
辿
(
たど
)
っていた。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
町
(
まち
)
の
中
(
なか
)
には
何
(
なん
)
にもないとさ。それでも、
人
(
ひと
)
の
行
(
ゆ
)
かない
山寺
(
やまでら
)
だの、
峰
(
みね
)
の
堂
(
だう
)
だのの、
額
(
がく
)
の
繪
(
ゑ
)
がね、
霰
(
あられ
)
がぱら/\と
降
(
ふ
)
る
時
(
とき
)
、ぱちくり
瞬
(
まばた
)
きをするんだつて……
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私の
瞬
(
まばた
)
きした間に、奴は五十
恰好
(
かっこう
)
の眼鏡をかけた黒服の中老人になり大机の前の椅子によりかかったまま、悠然と口にはまだ火をつけぬ煙草をくわえて
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
妻木君も驚いたらしい
瞬
(
まばた
)
きを三ツ四ツした。そのまま未亡人は二分か三分の間ヒソヒソと
咽
(
むせ
)
び泣いたが、やがてハンカチの下から乱れた眉と
睫
(
まつげ
)
を見せた。
あやかしの鼓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
厄介千万な低能め——と
呆
(
あき
)
れ返っていた主膳の眼が、その白い太った肉附の一部を見せられると、
俄
(
にわ
)
かにその三つの眼が、あわただしく
瞬
(
まばた
)
きをしました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
瞬
(
まばた
)
きもせずに探偵は私の面を見守っていたが、決して私が探偵の言を疑っているのではなく、信じてはいるが、しかもなお信じられない事実にブツかって
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
空に星が
瞬
(
まばた
)
き始める頃、まるで日が暮れ切るのを待ってでもいた様に、気違い葬儀車は、
牛込
(
うしごめ
)
の
矢来
(
やらい
)
に近い、非常に淋しい
屋敷町
(
やしきまち
)
の真中で、ピッタリと停車した。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
右の眼は
瞬
(
まばた
)
きするが、左の方は決して動かない。魚の眼見たように何時も明いている。乃公も真似をして、
片方
(
かたっぽう
)
の目だけで瞬きして見たが、どうも巧く行かない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
すると最前から
瞬
(
まばた
)
きしていた
石燈籠
(
いしどうろう
)
の火も心あり
気
(
げ
)
にはたと消えるを幸い、二人の男女は庭の垣根に身を
摺寄
(
すりよ
)
せて互の顔さえ見分けぬほどな
闇
(
やみ
)
の夜をかえって心安しと
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
赤坊が泣きやんで大きな眼を引つらしたまま
瞬
(
まばた
)
きもしなくなると、仁右衛門はおぞましくも拝むような眼で笠井を見守った。小屋の中は人いきれで蒸すように暑かった。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
それに視線を奪われまいと、彼女はしきりに
瞬
(
まばた
)
きをしながら堀の底を透かして見ようとする。
晩春
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それらの灯のあるものは
点
(
とも
)
ったと思うとパチ/\/\とせわしなく
瞬
(
まばた
)
きをしてふっと消える。
雑記帳より(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
すぐ目の前で悟浄があわてて立上がり、
礼拝
(
らいはい
)
をするのを、見るでもなく見ぬでもなく、ただ二、三度
瞬
(
まばた
)
きをした。しばらく無言の
対坐
(
たいざ
)
を続けたのち悟浄は恐る恐る口をきいた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
今にも
前方
(
まえ
)
へ
仆
(
たお
)
れそうだ。見開かれた眼は床を見詰め、
瞬
(
まばた
)
き一つしようともしない。どうやら瞬きを忘れたらしい。両手を胸の上で握り合わせ、それを夢中で締めつけている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
瞬
(
まばた
)
きをすると、子供の姿は消え、園の中はもう薄暗くて、見通しがきかないのであった。
夢の図
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「なあに、さうでねえと。
瞬
(
まばた
)
きしるかしねえうちに向ふへ行きつくもんだつてこんだ。」
野の哄笑
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
矢張
眼瞼
(
まぶた
)
の中に引っかかる物があって、
瞬
(
まばた
)
きすると眼球が痛く、その度毎に涙が出る。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
前
(
さき
)
に熱したと同じ速度を以て次第に冷くなって、明かけの
抽斗
(
ひきだし
)
へ手を懸けたまゝ俯向て何やら考え出したが、その間の体の動かないことは、
瞬
(
まばた
)
きとてもしないかと思われるほどであった。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
私が小声にこう言うと、煙客翁は頭を振りながら、妙な
瞬
(
まばた
)
きを一つしました。
秋山図
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夕暮れの薄ら明かりに浮かびあがっているアリョーシャの、
蒼白
(
あおじろ
)
い
額
(
ひたい
)
と
瞬
(
まばた
)
きをしない黒い眼を持った顔は、不意にベリヤーエフに、ロマンスの最初の頃のオリガ・イワーノヴナを思い出させた。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
そして彼がメヅサの首を、さっと差上げると
瞬
(
まばた
)
きをする暇もなく、悪いポリデクティーズ王と、いけない顧問官達と、獰猛な全人民とは、単に王とその人民との群像でしかなくなっていました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
瞬
(
まばた
)
きをしてさえもその
聲
(
こゑ
)
は
絶
(
た
)
える。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
瞬
(
まばた
)
きもしないで見守っていた禰宜様宮田の、その眼の下には、今、辛うじて命をとりとめた若者のみずみずしい眼が、喜びの
囁
(
ささや
)
きのうちに見開かれた。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
が、貴女には既に心を許して、秘蔵の酒を飲ませた。海の
果
(
はて
)
、陸の
終
(
おわり
)
、思って
行
(
ゆ
)
かれない処はない。
故郷
(
ふるさと
)
ごときはただ
一飛
(
ひととび
)
、
瞬
(
まばた
)
きをする
間
(
ま
)
に
行
(
ゆ
)
かれる。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は両手で帽子の
庇
(
ひさし
)
をシッカリと握り締めた。自分の眼を疑って、二三度パチパチと
瞬
(
まばた
)
きをした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
家臣に対するとき、その眼で
瞬
(
まばた
)
きせず相手を見つめ、ひと言ごとに「いいか」「いいか」と云う癖がある、ちょっとみるとだだっ子が因業爺になったという印象であった。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「おわかりになりましたでしょう? 私はマルセ・モネス事務所のルカ・ロザリオです。いつぞやの晩お眼にかかりましたね」と青年の眼が二、三回
瞬
(
まばた
)
いて笑みを
湛
(
たた
)
えた。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
乃公は
何
(
ど
)
うしようかと思った。乃公が少し身体を動かすと、獅子は唸る。
此方
(
こっち
)
で
凝
(
じ
)
っとしていれば、
先方
(
むこう
)
でも黙って乃公の顔を見ている。時々
瞬
(
まばた
)
きをする。今に屹度食付くだろう。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
米友が
呆然
(
ぼうぜん
)
として円い眼を
瞬
(
まばた
)
きをして、初めて暮色の
暗澹
(
あんたん
)
たるにおどろきました。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お秀の口から
迸
(
ほと
)
ばしるように出た不審の一句、それも疑惑の星となって、彼女の頭の中に
鈍
(
にぶ
)
い
瞬
(
まばた
)
きを見せた。しかしそれらはもう遠い距離に
退
(
しりぞ
)
いた。少くともさほど
苦
(
く
)
にならなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
今も丁度彼女はそういう眼付をしていた。それがかすかに揺いで、ふと二つ三つ
瞬
(
まばた
)
きをしたかと思うまに、彼女はいきなり両の手でハンカチを顔に押し当てて、そばめてる肩を震わした。
野ざらし
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
彼女は
瞬
(
まばた
)
きもせず新一の顔を見つめて、静かに階段を降りて来るのであった。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そして入口の蔭から、第三十九号室の有様を、
瞬
(
まばた
)
きもせず、
注視
(
ちゅうし
)
していた。
鬼仏洞事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
老女は
不審
(
ふしん
)
そうに
瞬
(
まばた
)
きをした。
影
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その空へ、すらすらと
雁
(
かりがね
)
のように浮く、緋縮緬の女の眉よ! 瞳も
据
(
すわ
)
って、
瞬
(
まばた
)
きもしないで、
恍惚
(
うっとり
)
と同じ処を
凝視
(
みつ
)
めているのを、宗吉はまたちらりと見た。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして、なおも、相手を罵倒すべく、カッと眼を
剥
(
む
)
き出したが……そのままパチパチと
瞬
(
まばた
)
きをして、唾液をグッと呑み込んだ。呆れ返ったように自分の眼の前を見た。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そして最後に我々を驚かせたのはこの老人も少年も、我々の吸っている煙草がよほど珍しかったかして、眼を円くしながら、
瞬
(
まばた
)
きもせず、我々の口許を
瞶
(
みつ
)
めているのであった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ところが彼は
瞬
(
まばた
)
きをしながら天井の節穴を数えている。ははあ……そうか。みんなはじきにのみこんだ、彼らはぎ州のやりかたを知っている、そこで椅子がやかましく集まってきた。
留さんとその女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“瞬”の意味
《名詞》
(めまぜ、めまじ)目配せ。
(めまじろぎ)瞬き。
(出典:Wiktionary)
瞬
常用漢字
中学
部首:⽬
18画
“瞬”を含む語句
瞬間
一瞬
瞬時
目瞬
一瞬時
一瞬間
数瞬
屡瞬
電瞬
眼瞬
転瞬
瞬刻
瞬転
三十七年如一瞬
転瞬倏忽
瞬隙
瞬間瞬間
瞬間的
瞬間前
二三度瞬
...