またゝき)” の例文
本尊ほんぞんは、まだまたゝきもしなかつた。——うちに、みぎおとが、かべでもぢるか、這上はひあがつたらしくおもふと、寢臺ねだいあし片隅かたすみ羽目はめやぶれたところがある。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千年ちとせに亙らむや、しかも千年を永劫に較ぶればその間の短きこと一のまたゝきをいとおそくめぐる天に較ぶるより甚し 一〇六—
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「ねえ貴方」と照ちやんはまたゝきし乍ら春三郎を見た。春三郎は默つた儘で笑顏を作つて照ちやんに答へた。
そこにはすゝけた聖者の像の前にともしてある、小さい常燈明が、さも意味ありげにまたゝきをしてゐる。
駆落 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
三千代みちよかほげた。代助は、突然とつぜん例のみとめて、思はずまたゝきを一つした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
月清く波靜なる夜半に、獨り舟中にあるときは、ともすれば艫を搖す手のおのづから休み、澄み渡りて底深くふる藻のゆらめくさへ見ゆる水にきと目をけて、またゝきもせず打目守うちまもることあり。
姫様ひいさま、それ/\、ほしひとつで、うめぢや。またゝきするに、十度とたびる。はやく、もし、それ勝負しようぶけさつせえまし。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らふ白粉おしろいした、ほとんいろのないかほ真向まむきに、ぱつちりとした二重瞼ふたへまぶた黒目勝くろめがちなのを一杯いつぱいみひらいて、またゝきもしないまで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いまふさがず、れいみはつて、ひそむべきなやみもげに、ひたひばかりのすぢきざまず、うつくしうやさしまゆびたまゝ、またゝきもしないで、のまゝ見据みすえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしくらんだんでせうか、をんなまたゝきをしません。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)