しゆん)” の例文
壇に吸ひ付けられた六百の眼は、暫らくは氷の如く凝つと靜まりましたが、次の一しゆん忽然としてそれが恐ろしい動搖に變つたのです。
まぶしいものが一せん硝子ガラスとほしてわたしつた。そして一しゆんのち小松こまつえだはもうかつた。それはひかりなかひかかゞや斑點はんてんであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
つがせんと思居たりしに其年五月大病にて死亡みまかりしにぞ其力落しより間もなく妻も病死なし僅か一年の中に妻子に別れ夫より手代なども引負して掛先のたふれ多く斯程の身代も一しゆんの間に不手廻になり四郎右衞門も大病を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
伊勢屋新兵衞の顏には、一しゆん躊躇ちうちよの色が浮びましたが、思ひ定めた樣子でくわんの側に近づくと、暫く物も言はずに突つ立つて居りました。
頬冠りの男の辭色は、一しゆんはげしくなりましたが、ハツと氣のついた樣子で、元の靜かな絶望的にさへ見える態度に變ります。
宵闇をつんざく若い女の聲は、雜司ざふしの靜まり返つた空氣を、一しゆん、煑えこぼれるほど掻き立てました。
娘を殺したのがお狩場の四郎だつたら、飛びかかつて、噛み殺しもし兼ねまじき、動物的な本能の怒りが、この老人を一しゆん此上もない猛々たけ/″\しいものに見せるのです。
この激しいが、一しゆんで片付いた爭ひが濟むと、障子の外には下男の猪之吉が、縁側の下にはお縫の義兄の門太郎が、うづくまつて涙にひたつて居るのが見付かりました。
中はもう焦熱地獄、吐く息も焔になりさうで、新しい世界を見出した不思議な縁の父と娘が、犇々ひしひしと相抱いたまゝ、しゆん一瞬と迫る、死の手を待つ外はなかつたのです。
しづまり返つた隅田川の夜氣を亂して、船の中には、一しゆん氣違ひ染みた旋風せんぷうが捲き起つたのです。
品吉の表情は一しゆん激しく動きましたが、やがてもとの靜けさに還つて、かう言ひきるのでした。
ほの白い顏をそむけて、かすかな表情の動き、——笑つたか、泣いたかわかりませんが、僅かに見せた心の隙間、一しゆんにして消え去つた媚態は、錢形平次をハツと立ち縮ませたのです。
お比奈はパツとすそを蹴返すと、一しゆん、鬪志沸々ふつ/\たる惡少年皆吉になつて居りました。
銭形平次捕物控:239 群盗 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
その信者の一人なる浪人者御厩おうまや左門次が同じく東海坊の門弟で、用人を兼ねてゐる定吉といふ白い道服の中年男と共に、群衆の整理、修法の進行等、一しゆんの隙もなく眼を配つて居ります。
廊下に溢れる人達は、一しゆんシーンとなりました。と、その後ろの方から
騷ぎは一しゆんのうちに、山名屋を煮えくり返らせました。
この闇試合はしんに一しゆんのうちに片附きました。
しゆん、傳助の顏はけはしくなりました。