トップ
>
瞬
>
またたき
ふりがな文庫
“
瞬
(
またたき
)” の例文
大慈大悲の仏たちである。大して御立腹もあるまいけれども、
作
(
さく
)
がいいだけに、
瞬
(
またたき
)
もしたまいそうで、さぞお
鬱陶
(
うっとう
)
しかろうと思う。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
空は
爽
(
さはやか
)
に
晴渡
(
はれわた
)
ツて、星が、何かの眼のやうに、ちろり、ちろり
瞬
(
またたき
)
をしてをる。もう村の
若衆等
(
わかいしゆたち
)
が、
夜遊
(
よあそび
)
の
歸途
(
かへり
)
の
放歌
(
うた
)
すら
聞
(
きこ
)
えない。
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
福太郎はその時にちょっと
首肯
(
うなず
)
きたいような気持になった。しかし依然として全身が硬直しているために、
瞬
(
またたき
)
一つ出来なかった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
階の
両側
(
ふたがわ
)
のところどころには、
黄羅紗
(
きラシャ
)
にみどりと白との
縁取
(
ふちど
)
りたる「リフレエ」を着て、
濃紫
(
こむらさき
)
の
袴
(
はかま
)
を
穿
(
は
)
いたる男、
項
(
うなじ
)
を
屈
(
かが
)
めて
瞬
(
またたき
)
もせず立ちたり。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
さて
只今
(
ただいま
)
から幻燈会をやります。みなさんは
瞬
(
またたき
)
やくしゃみをしないで目をまんまろに開いて見てゐて下さい。
雪渡り
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
甲野さんは静かに茶碗を
卸
(
おろ
)
して、首を心持藤尾の方へ向け直した。藤尾は来たなと思いながら、
瞬
(
またたき
)
もせず窓を通して
映
(
うつ
)
る、イルミネーションの
片割
(
かたわれ
)
を専念に見ている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女は
瞬
(
またたき
)
をした。彼女は見ていたのだ。そして呼吸も
可成
(
かな
)
り整っているのだった。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
Sara …… sara ……とふる雪の幽かな
瞬
(
またたき
)
を聴きわけるほど——
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
満枝は彼の
面
(
おもて
)
を
絶
(
したたか
)
に
怨視
(
うらみみ
)
て
瞬
(
またたき
)
も
為
(
せ
)
ず、その時人声して
闥
(
ドア
)
は
徐
(
しづか
)
に
啓
(
あ
)
きぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
疲れてもまた元に返る力の消長の中に暖かい幸福があるのだ。あれあれ、今
黄金
(
こがね
)
の
珠
(
たま
)
がいざって遠い海の緑の波の中に沈んで
行
(
ゆ
)
く。
名残
(
なごり
)
の光は遠方の
樹々
(
きぎ
)
の上に
瞬
(
またたき
)
をしている。今赤い
靄
(
もや
)
が立ち昇る。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
お通は
瞬
(
またたき
)
もせず
瞻
(
みまも
)
りながら、手も動かさず
態
(
なり
)
も崩さず、石に化したるもののごとく、一筋二筋頬にかかれる、
後毛
(
おくれげ
)
だにも動かさざりし。
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あまりの事に驚き悲しんで
狂気
(
きちがい
)
のようになって王宮を駈け出ると直ぐ、そこに繋いでおいたこの国第一の名馬「
瞬
(
またたき
)
」というのに飛び乗って
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
はてなと思ってしばらくするうちに、また誰か駆けて行く。不思議だと
覚
(
さと
)
って
瞬
(
またたき
)
もせず城壁の上を見つめていると、また誰か駆けて行く。どう考えても人が通るに違いない。
満韓ところどころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
お月様はまるで
真珠
(
しんじゅ
)
のお
皿
(
さら
)
です。お星さまは野原の
露
(
つゆ
)
がキラキラ固まったようです。さて
只今
(
ただいま
)
から幻燈会をやります。みなさんは
瞬
(
またたき
)
やくしゃみをしないで目をまんまろに開いて見ていて下さい。
雪渡り
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
呆
(
あき
)
れたる貫一は
瞬
(
またたき
)
もせで耳を
傾
(
かたぶ
)
けぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
しかし私は
瞬
(
またたき
)
一つしないまま未亡人の顔を凝視した。
俄
(
にわ
)
かに変って来たその態度を通じて、告白の内容を予想しながら……。
けむりを吐かぬ煙突
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
正面の
襖
(
ふすま
)
は暗くなった、破れた
引手
(
ひきて
)
に、襖紙の
裂
(
さ
)
けたのが、ばさりと動いた。お君は
堅
(
かた
)
くなって真直に、そなたを見向いて、
瞬
(
またたき
)
もせぬのである。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
先生の世界観が
瞬
(
またたき
)
と共に変るように明るくなる。小野さんはまだ
螺旋
(
ねじ
)
から手を放さない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右はじの
子供
(
こども
)
がまっすぐに
瞬
(
またたき
)
もなく私を見て
訊
(
たず
)
ねました。
インドラの網
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
けれども三人は
瞬
(
またたき
)
一つ
為
(
せ
)
ず、身動き一つ出来ず、只黒光りする鉄の死骸の、虚空を掴んだ恐ろしい姿を、穴の明く程見つめて立っていました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
と、片頬夕日に
眩
(
まぶ
)
しそう、ふくれた片頬は色の悪さ、
蒼
(
あお
)
ざめて
藍
(
あい
)
のよう、銀色のどろりとした目、
瞬
(
またたき
)
をしながら呼んだ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
代助は、突然例の眼を認めて、思わず
瞬
(
またたき
)
を一つした。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
沖から
遠眼鏡
(
とおめがね
)
で望んだら、
瞬
(
またたき
)
する間も静まらず、
海洋
(
わだつみ
)
の
蒼
(
あお
)
き口に、白泡の歯を鳴らして、刻々島根を
喰削
(
くらいけず
)
らんず、怖しき浪の
頭
(
かしら
)
を
圧
(
おさ
)
えて、
巌窟
(
いわや
)
の中に鎮座まします
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ところが不思議なことに若林博士も、私のそうした顔を、
瞬
(
またたき
)
一つしないで見下しているのであった。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
やがて
瞬
(
またたき
)
を一つすると共に、眼は急に近くなった。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
へいげんはあるいは呆れ、あるいは
愕
(
おどろ
)
き、
瞬
(
またたき
)
もせで三郎の顔を
瞻
(
みまも
)
りたりしが、やや有りて
首
(
こうべ
)
を
低
(
た
)
れて
金時計
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうしてその死骸を平気で蹴飛ばして
瞬
(
またたき
)
一つせずに立去り得る人間は殆んど居なかったであろう。奈良原到翁の風貌には、そうした冴え切った凄絶な性格が、ありのままに露出していた。
近世快人伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と
促
(
うな
)
がすように言いかけられて、ハタと
行詰
(
ゆきつま
)
ったらしく、
杖
(
ステッキ
)
をコツコツと
瞬
(
またたき
)
一
(
ひと
)
ツ、唇を
引緊
(
ひきし
)
めた。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ハッと正気づかれたように眼を丸くして、二三度パチパチと
瞬
(
またたき
)
をされました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
お夏さんは酌をしておくんなさる気で瓶を持ちながら、ふと雛の壇を見ましたがね、どうなすったんだか、おや! といってこう、瞳を据えて、
瞬
(
またたき
)
もしないでしばらく。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
けれども、眼をこすることは愚か、
呼吸
(
いき
)
も出来ないような気持になって、なおも
瞬
(
またたき
)
一つせずに、
見惚
(
みと
)
れていると、やがてその長く切れた二重瞼の間に、すきとおった水玉がにじみ現われはじめた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
婦人は
後
(
うしろ
)
に
佇
(
たたず
)
みて、帯の間より手帳を取出し、鉛筆をもて何やらん
瞬
(
またたき
)
もせず書き
認
(
したた
)
め、一遍読返して、その紙を一枚引裂き、音低くしてしかも遠きに
達
(
いた
)
る口笛を吹鳴らせば
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お前は強いからベソを掻いたわけ、」と念のためいってみて、
瞬
(
またたき
)
した、目が渋そう。
海異記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかも九時半の処を指して、時計は死んでいるのであるが、
鮮明
(
あざやか
)
にその数字さえ
算
(
かぞ
)
えられたのは、一点、
蛍火
(
ほたるび
)
の薄く、そして
瞬
(
またたき
)
をせぬのがあって、胸のあたりから、
斜
(
ななめ
)
に影を宿したためで。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
およそ天下に、
夜
(
よ
)
を一目も寝ぬはあっても、
瞬
(
またたき
)
をせぬ人間は決してあるまい。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
桂木は
塞
(
ふさ
)
がうと思ふ目も、鈴で撃つたやうになつて
瞬
(
またたき
)
も出来ぬのであつた。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
その上、一面に
嬰児
(
あかご
)
の
掌
(
て
)
ほどの穴だらけで、干潟の蟹の巣のように、ただ
一側
(
ひとかわ
)
だけにも五十破れがあるのです。勿論
一々
(
ひとつびとつ
)
継
(
つぎ
)
を当てた。……
古麻
(
ふるあさ
)
に濃淡が出来て、こう
瞬
(
またたき
)
をするばかり無数に取巻く。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小宮山は三蔵法師を
攫
(
さら
)
われた悟空という格で、きょろきょろと
四辺
(
あたり
)
を
眗
(
みまわ
)
しておりましたが、頂は遠く、
四辺
(
あたり
)
は
曠野
(
こうや
)
、たとえ蝙蝠の翼に乗っても、虚空へ飛び上る法ではあるまい、
瞬
(
またたき
)
一つしきらぬ
中
(
うち
)
湯女の魂
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
静
(
しずか
)
に云うと、黙って、ややあって
瞬
(
またたき
)
して
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は、ぱちぱちと
瞬
(
またたき
)
した。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
瞬
(
またたき
)
をする
間
(
ま
)
も
止
(
や
)
まぬ。
蠅を憎む記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“瞬”の意味
《名詞》
(めまぜ、めまじ)目配せ。
(めまじろぎ)瞬き。
(出典:Wiktionary)
瞬
常用漢字
中学
部首:⽬
18画
“瞬”を含む語句
瞬間
一瞬
瞬時
目瞬
一瞬時
一瞬間
数瞬
屡瞬
電瞬
眼瞬
転瞬
瞬刻
瞬転
三十七年如一瞬
転瞬倏忽
瞬隙
瞬間瞬間
瞬間的
瞬間前
二三度瞬
...