“幾重”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
いくえ80.3%
いくへ16.7%
いくかさ1.5%
いくちょう1.5%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
みな、涙ぐみながら、てんでに毛布やクッションを持ち出してきて、幾重いくえにも梓さんの身体に巻きつけて『着ぶくれ人形』のようにしてしまった。
「そういうことに致しましょう。これはどうも飛んだ失礼を致しました、そそっかしいことでお恥かしうございます、幾重いくえにもお許し下さいまし」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
奥様の方では、少しも御存じのない男から、突然、此様このよう無躾ぶしつけな御手紙を、差上げます罪を、幾重いくえにもお許し下さいませ。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わがよろこび誠に筆紙のつくすべき処ならず幾重いくえにもよろしくとてその日は携へ来りし草稿『すだれの月』一篇を差置きもぢもぢして帰りけり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
あの船や鴎はどこから来、どこへ行ってしまうのであろう? 海はただ幾重いくえかの海苔粗朶のりそだの向うに青あおと煙っているばかりである。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
『前は鳥居や門や扉で、幾重いくへにもなつてますのに、後は板一枚だすな。……わたへ何處どこの宮はんへ參つても、さう思ひまんな。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わたしつまなかれるために、幾重いくへものかきつくつてゐる、その幾重いくへものかきよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
厚きしとねの積れる雪と真白き上に、乱畳みだれたためる幾重いくへきぬいろどりを争ひつつ、あでなる姿をこころかずよこたはれるを
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
根津の藍染川あゐそめがは、麻布の古川ふるかは、下谷の忍川しのぶがはの如き其の名のみ美しき溝渠こうきよ、もしくは下水げすゐ、第六は江戸城を取巻く幾重いくへほり
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
私達はかう言つて、その時のさま——幾重いくへにも折れ曲つてゐる松花江の氷の上を其処に一隊、かしこに一隊といふ風にして命から/″\逃げ避けて来た人達のさまをそれとはなしに眼の前に描くのでした。
一少女 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
鉾杉の鉾のとがりの幾重いくかさたたなはる谿に雪はふりにけり
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
塚のうちには幾重いくちょうかくがあって、そのとびらはみな回転して開閉自在に作られていた。