“累”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かさ28.3%
るい19.1%
かさな14.5%
わずら13.3%
かさね8.1%
わずらい2.9%
わざわい2.3%
わづらひ2.3%
るゐ1.7%
しき1.2%
わずらわ1.2%
わづら1.2%
わずらひ0.6%
うず0.6%
しきり0.6%
たま0.6%
わざわ0.6%
わづ0.6%
わづらは0.6%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
 千仭せんじんがけかさねた、漆のような波の間を、かすかあおともしびに照らされて、白馬の背に手綱たづなしたは、この度迎え取るおもいものなんです。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
郁次郎の身に秘密があったばかりに、ご息女の花世どのには、意外な苦労をかけ、貴殿にはるいを及ぼして、あたら自害をさせてしまった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぱうは、大巌おほいはおびたゞしくかさなつて、陰惨冥々いんさんめい/\たる樹立こだちしげみは、露呈あらはに、いし天井てんじやううねよそほふ——こゝの椅子いすは、横倒よこたふれの朽木くちきであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「子供一人を取って別れるよりほかない。そして母と妹とを呼び寄せて、わずらいのない静かな家庭の空気に頭をひたしでもしなければ……。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
かさね崇禅寺そうぜんじ馬場の大石殺し、または、大蛇の毒気どくけでつるつるになった文次郎ぶんじろうの顔などが、当時の悪夢さながらに止められているのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこで最も身軽な矢川文一郎と、乳飲子ちのみごを抱いた妻というわずらいを有するに過ぎぬ浅越玄隆とをば先に立たせて、渋江一家が跡に残った。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
当時はあからさまに言ひがたき事なきにあらざりしかど十年一昔ひとむかしの今となりては、いかに慎みなきわが筆とて最早もはわざわいを人に及さざるべし。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
彼はその夫とともに在るをはんやう無きわづらひなれど、又そのひとりを守りてこの家におかるるをもへ難くいぶせきものに思へるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我当局の忌違きゐに触れん事疑なきの文字少からず。出版当時有名なる訴訟そしよう事件を惹起じやくきしたるも、また是等艶冶えんやひつるゐする所多かりし由。
すでにして幕府の吏と陣を設くるの処を議し、論しきりに合わず。けだし幕府の二藩の兵を用うるは、夷輩が非を為すを禁訶きんかするに非ず、実に夷輩のために非常を警衛するのみ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
尤もその頃は今の展覧会向きのような大画幅を滅多に描くものはなかったが、殊に椿岳は画を風流とする心にわずらわせられて、寿命を縮めるような製作を嫌っていた。
尤も前にも云つたやうに、「負郭ふくわくの田三百畝、半はきびう」と云ふので、いんの為に家産がわづらはされるやうなおそれは、万々ない。
酒虫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
命惜まぬ客人よ。生くといふには種々あり。少年の心は物に感じ易しといふに、吾黨がかくわずらひなくさはりなき世渡するを見て、羨ましとは思はずや。
長次は後ろへ手を延ばして、用箪笥の抽斗ひきだしから取り出したのは、二十五両包みの切餅が二十、うず高く畳の上に重ねて、鯛六の方へ押しやります。
「禍故重畳ちようでふし、凶問しきりに集る。永く崩心の悲みをいだき、独り断腸のなみだを流す。但し両君の大助に依りて、傾命わづかに継ぐのみ。筆言を尽さず、古今の歎く所なり」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そして私は手早くいろいろな品物や書類のたまっている中から、手ざわりの角の荒い写真をつまみ出し、それを懐中にしまい曳出しをしめた。
童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
末路寂寞せきばくとしてわずか廓清かくせい会長として最後の幕を閉じたのはただに清廉や狷介けんかいわざわいしたばかりでもなかったろう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
では、如何いかんだらいゝかとへば、これも、多少たせうひとつてちがふかもれないが、かく何者なにものにもわづらはされずに、正直しやうぢき態度たいどむがいゝ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此の佐用が家はすこぶる富みさかえて有りけるが、丈部母子のかしこきをしたひ、娘子をとめめとりて親族となり、しばしば事にせて物をおくるといへども、口腹こうふくの為に人をわづらはさんやとて、あへくることなし。