“蔽”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
おお77.5%
おほ14.0%
おおい1.7%
1.4%
かく1.4%
かぶ0.9%
おい0.5%
おっ0.3%
おほは0.3%
おほひ0.3%
(他:10)1.7%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
過去と云うあやしき物をおおえる戸帳とばりおのずと裂けてがん中の幽光ゆうこうを二十世紀の上に反射するものは倫敦塔である。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
真鉄まがねたて黒鉄くろがねかぶとが野をおおう秋の陽炎かげろうのごとく見えて敵遠くより寄すると知れば塔上の鐘を鳴らす。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう、私は、」とたまりかねたか、早瀬の膝をハタと打つと、赤らめた顔を手巾ハンケチで半ばおおいながら、茶店を境内へつっと出る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この大きい絵看板ゑかんばんおほ屋根形やねがたのきには、花車だしにつけるやうなつくばなが美しく飾りつけてあつた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
寢卷姿の八五郎が、彌次馬の眼の前へ立ちふさがつた時は、お紋の醜體は、氣の毒なことに、おほふところなく諸人に見盡されてしまつたのです。
功利と文学との関係は正当には如何に解すべきかは此に論ぜずとするも、単なる勧懲主義、単なる教訓主義は以て文学の真意義をおほひ得べしとするか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
腕を引っこ抜くいきおいで、もがいて、掻巻をぱっとぐ、と戸棚のおおいは、もとの処にぼうとさがって、何事も別条はない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
同一おなじ色なのが、何となく、戸棚のおおいに、ふわりと中だるみがしつつも続いて、峠の雪路ゆきみちのように、天井裏まで見上げさせる。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
侍女一 二人が附添っております、(廻廊を見込む)ああ、もう御廊下まで。(公子のさしずにより、姿見に錦のおおいを掛け、とびらる。)
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どうした」と云いながら、かぶさるように細君と千代子の上から宵子をのぞき込んだが、一目見ると急にまゆを寄せた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『あら、日出雄ひでをは、ま、どんなにうれしいんでせう。』とつて、くれないのハンカチーフに笑顏えかほふた。
深山に連絡している周囲が、女のことについて、いろいろに自分を批評し合っているその声が始終耳にかぶさっているようで、暗い影が頭にまつわりついていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
先頭に立った一人が、うやうやしく三宝を目八分に捧げて、三宝の上には何物をか載せて、その上を黄色のふくさと覚しいのでかくしている。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
兎も角も此のまま置くとは何とやら其の人の冥福にも障る様な気がしたから余は手巾を取り出し、骸骨の顔をかくし、回向えこうの心で口の中に一篇の哀歌を唱えた。
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そして、彼女等の視線は、あからめもせず、半開きにした銀扇で、横がおをかくすようにした雪之丞の、白く匂う芙蓉ふようの花のようなおもばせにそそがれているのだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
蓊欝こんもりと木がかぶさつてるのと、桶の口を溢れる水銀の雫の樣な水が、其處らの青苔や圓い石を濡らしてるのとで、如何な日盛りでも冷い風が立つて居る。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
気紛れなあの雪の日も思ひ出せないやうなうらゝかな日、晴代はもう床を離れてゐたので、かぶさつた髪をあげ、風呂へも行つた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
で、その男は送つて来た米俵を、内庭に高く積み、その上へ大きな金網をかぶせて鼠除ねずみよけをしてゐる。
「武器は、一纏ひとまとめに、荷駄として、おいを着せ、要所へ先へ送っておく。そして人間のみを後から配置すればよかろう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘は浮かぬ顔を、愛嬌あいきょうに傾けて、床の間を見る。じくむなしく落ちて、いたずらに余る黒壁の端を、たてって、欝金うこんおいが春を隠さず明らかである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
月、星を左右の幕に、祭壇を背にして、詩経、史記、二十一史、十三経注疏ちゅうそなんど本箱がずらりと並んだ、手習机を前に、ずしりと一杯に、座蒲団ざぶとんすわって、おいのかかった火桶を引寄せ
絵本の春 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筮竹ぜいちくの長袋をまえ半じゃ、小刀のように挟んで、馬乗提灯うまのりぢょうちんの古びたのに算木をあらわしましたので、黒雲のおっかぶさった、蒸暑いあぜてらし、大手をって参ります。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夏だけに、物の色はまだ分りましたが、日は暮れるし、貴僧あなた、黒門まではい天気だったものを、急に大粒な雨!と吃驚びっくりしますように、屋根へかかりますのが、このおっかぶさった、けやきの葉の落ちますのです。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とあとは独言ひとりごとかまちに腰をかけて、足を突出つきだすやうにして下駄げた穿き、上へおっかぶさつて、沓脱越くつぬぎごし此方こちらから戸をあけるお辻の脇あけの下あたりから、つむりを出して、ひよこ/\と出て行つた。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
元来さう云ふイズムなるものは、便宜上のちになつて批評家に案出されたものなんだから、自分の思想なり感情なりの傾向の全部が、それでおほはれるわけはないでせう。
父が前にかしられて、たやすげぬ彼のおもては熱き涙におほはるるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
全部がおほはれなければそれを肩書にする必要はありますまい。
……途中とちゆうちりけるためおほひがはりに、おうら着換きがえを、とおもつて、権七ごんしち温泉宿をんせんやどまでりにつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おほひをかぶせた燈火あかり卓子テエブルの上に据ゑてあつた。
それから間もなく洛中らくちゅうの空に黒雲がおゝひろがって大雷雨が襲来し、風を起しひょうを降らして、宮中の此処彼処こゝかしこに落雷した。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そう云うと夫人は、厠の床に惜しげもなく両手をついて、ゆたかな黒髪におゝわれた高貴なつむりを心から青年の前に下げた。
両側から路の方へおゝいかぶさっている草を掻き分けながら行くので、たもとすそもしたゝか露に濡れて
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
W・Cへとほりがかりに、うへからおつかぶさるやうにときは、つののあるだけ、青鬼あをおにはうがましだとおもつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長崎屋、そのとき、ハッと思い当って、両手で顔をくそうと、もがいたが、手足が緊縛きんばくされて、それさえならぬ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
赤ん坊の顔と思ったのが、見る見る変って、伸び歪んで、世にも苦痛に充ちた老人のそれとなった、その夢裡むりの変化が、両手で面をくして、恐怖に五体がすくみ、声を出すことも出来ぬ長崎屋を、嘲けるが如く、追いかけて、つぶやくのだった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
黄金丸はいと不憫ふびんに思ひ、くだんの雌鼠を小脇こわきかばひ、そも何者に追はれしにやと、彼方かなたきっト見やれば、れたる板戸の陰に身を忍ばせて、此方こなたうかがふ一匹の黒猫あり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
蓊欝こんもりと木がかぶさつてるのと、桶の口を溢れる水銀の雫の様な水が、其処らの青苔やまろい石を濡らしてるのとで、如何いか日盛ひざかりでもすずしい風が立つてゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やぶれて 両肘りょうちゅうあらはる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
恥処ハヂオソふ為ばかりでなく、屍を完全に掩ふために、柴を与へて通つたのが、後世特定の場処に、柴や花をたむける風に固定したのである。
餓鬼阿弥蘇生譚 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
コノ四国ハ、二十年余ノ兵乱ニツテ、民屋ミンヲクハ兵火ニカカリ、村里ソンリノ業ハ破レ、田野ハ芒草バウサウオホハレ、五年三年ノ間ハ、ナホ、耕農モ整ハズ、五穀ノ満ツル日モナカラン。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敬ニシテ礼ニ中ラザルヲ野トイヒ、勇ニシテ礼ニ中ラザルヲ逆トイフ とか、信ヲ好ンデ学ヲ好マザレバソノヘイゾク、直ヲ好ンデ学ヲ好マザレバソノ蔽ヤカウ などというのも、結局は、個人としての子路に対してよりも、いわば塾頭格じゅくとうかくとしての子路に向っての叱言こごとである場合が多かった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)