)” の例文
それ故に、いの目から見れば、ふびんに見えてなりませぬ。自体が吾まま育ち、それに、人には明かされぬ短命な病気がござります。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なるほど、あかくさびた、いぼれたくぎが、いっしょうけんめいにレールをさえつけているのでした。はちはそこへんできてとまると
雪くる前の高原の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たしかにそうも思いはしたが、それよりも、急に、わたしの胸をいてきたものがある。廿五年の歳月は、こんなにもみんなをわしたかと——
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
もとよりこばむべき筋合すじあいのものでございませぬから、わたくし早速さっそく身支度みじたくしてこの親切しんせつな、いたる竜神りゅうじんさんのあとについて出掛でかけることになりました。
不思議な水々しさがあり、若さといと、青春と頽廢たいはいとの一種の交錯が、屈從と諦らめとに慣れた態度の下に、何にかのはずみで隱見するのでした。
勿論、お嬢さんの持って居る肉体の美は、れから二三十年も過ぎて、じょれて来ると同時に、何処いずこともなく消えうせてしまうには違いない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「おい、れ! 娘を借りようかの。このとおり、野郎ばかりでらちの明かぬところ。酒の酌が所望じゃ——。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのうちに世は動力利用の時代になってきて、多数の桑名屋徳蔵くわなやとくぞうい去ってあとぐ者なく、湊々みなとみなと日和山ひよりやまは、大抵はもう遊園地に化してしまった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
雄雄ををしい日本の古天才も皆この椎ののやうに、悠悠としかも厳粛にそそり立つてゐたのに違ひない。その太い幹や枝には風雨のあとを残した儘。……
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おいらなければいず、ぼく池上權藏いけがみごんざうぬるまでおいないだらうとおもひます、ぬるいまはのきはにも、かれさら一段いちだん光明くわうみやうなる生命せいめいのぞんでるだらうとおもひます。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
とにかく、メンスのあがつた女性ぢよせいで(どうもこれも失言しつげんらしいが)いてます/\さかん(これもまた失言しつげんらしいが)なのは、關西くわんさいでは林歌子はやしうたこ關東くわんとうでは長谷川時雨はせがはしぐれだけである。
ロンドンの市民はいも若きも、メリー号の見える埠頭ふとうや高層建築のまどにあつまってきた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自然しぜん法則ほうそく依然いぜんとしてもとのままです、人々ひとびとはやはり今日こんにちごとみ、い、するのでしょう、どんな立派りっぱ生活せいかつあかつきあらわれたとしても、つまり人間にんげん棺桶かんおけ打込うちこまれて
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それでも勘次かんじおそろしい卯平うへいひとかまどであるよりもかへつ本意ほんいであつた。おふくろんでからいた卯平うへい勘次かんじひとつにらなければならなかつた。そのときはもう勘次かんじあるじであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これまで、頑固が通して来たいの一徹、屋根瓦を剥がされたくらいで、旗を巻くもんかい
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それ程ほうけたように見える父は、女にはいかにも心細かった。女はもう自分の運命が自分の力だけではどうしようもなくなって来ている事に気がつかずにはいられなかった。
姨捨 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
三人とも口をふうじられた。どしんと大きな沈黙を横たえられた感じだった。お婆さんは眼を開いて弥平のやつれた淋しい顔に視線を据えていたが、それも長くは続かなかった。
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「このいぼれめ。よけいな世話をくな」とガロフォリが急に調子をえてさけんだ。
そう厄介船やっかいぶねと、八人の厄介やっかい船頭と、二十余人の厄介やっかい客とは、この一個の厄介物やっかいものの手にりてたすけられつつ、半時間ののちその命を拾いしなり。このいてめしいなる活大権現かつだいごんげんは何者ぞ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまり、今夜だと、おしろを守っているのは、クッラベルイにいかれないようないぼれの弱いネズミだけですからね。だから、きっと灰色ネズミたちは、目的をはたすでしょうよ。
いぼれた、血の気のかれきった木石ではなく、何か、そこに解けきれない、たんまりしたものが滞っているような歯痒はがゆい気持を、一同に持たせてしまったことも事実でありました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
カピ妻 おゝ、かなしや! このいたましい死樣しにざまは、いゆく此身このみをばはかいそがす死鐘しにがねぢゃ。
さむき日をひねもすくりやにおりたちてわれにいひはますわれのづま十一月十八日
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
という順序で子供をつくり、四男が風邪かぜのこじれから肺炎おこして、五歳で死んで、それからすっかりいこんで、それでも、年に二篇ずつ、しっかりした小説かいて、五十三歳で死にます。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
妒婦とふやしなひがたきも、いての後其のこうを知ると。ああこれ何人のことばぞや。
かくていんの願ひにはあらねど、さすが人並ひとなみかしこく悟りたるものを、さらでも尚とやせんかくやすらんのまどひ、はては神にすがらん力もなくて、人とも多くは言はじな、語らじなと思へば
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
二人ふたりさくらをかのぼりていま櫻雲臺をううんだい傍近そばちかときむかふより五六りようくるまかけこゑいさましくしてるを、諸人しよにん立止たちどまりてあれ/\とふ、れば何處いづこ華族樣くわぞくさまなるべき、わかひたるぜに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女のいさらばえた肉体がまだっているうちは、その上に置かれた氷のように冷え果てた片手のもとで胸がまだ苦しげに波うっているうちは、まだその身から最後の力がけきらないうちは
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
さま/″\な批評ひゝやうもてあそばれながら、繪葉書のうへいて行く女優たちの顏!これらがやがていろもなくもなくなつていつた時には一體いつたいどうなるのでせう? それはたとひ、虚榮きよえいあやまられたその不明ふめい
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
剛気の爺さんは、此まゝ楽隠居で朽果つるをきらった。札幌農学校に居た四男を主として、北海道の山奥開墾牧場経営を企て、老夫婦は養老費の全部及びいの生命二つを其牧場に投ず可く決心した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
松並木まつなみきみち流石さすがひろくつて、まつなりにふといてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いにけらしな今ははや。……なんの芸匠げいしょうには年はないよ」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さながらいし葬式女はうりめの、たゆげに被衣かづき引延ひきはへて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
たいでて早くもいし顔する駱駝らくだの子のごと
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
紅裙翠黛人終老 紅裙翠黛こうくんすいたい ひとつい
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
玉手たまでさしにしゆらし
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
家の下部しもべが、かゞ
かさぬ宿 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
かみしろくきみいませり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
いにける朝毎あさごと
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
家光は、許すとも許さぬともいわず、しばらく黙然としていたが、但馬守のいの白髪しらがを見ると、不愍ふびんを感じたのであろう
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はははそのころモー七十ぐらいわたくし最後さいごにおにかかったときとは大変たいへん相違そういで、かげもなく、いさらぼいてりました。
こうおもいつくと、いざるは、かなしそうに一声ひとこえたかく、ともだちをあつめるべく、そらかってさけんだのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「わたしのようないぼれになんの技術ぎじゅつがありますものか」とかれは冷淡れいたんに答えた。
コウノトリの巣のふちには、灰色のフクロウが二と、灰色のしまのある年とったネコが一ぴきと、で、目のショボショボしたいぼれネズミが十二ひきもいっしょにいるのですもの。
一空さまは、小石川の金剛寺坂に、若松屋の雇い人になっているお高の現在を思い出して、いったいどういうことばでこの吉報を伝えたものであろうかと、い胸がわくわくするのを覚えた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と、はたを織っていたという話もあり、或いはいたる男女の鼠が奥の
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自然しぜん法則はふそく依然いぜんとしてもとまゝです、人々ひと/″\猶且やはり今日こんにちごとみ、い、するのでせう、甚麼立派どんなりつぱ生活せいくわつあかつきあらはれたとしても、畢竟つまり人間にんげん棺桶くわんをけ打込うちこまれて、あななかとうじられてしまふのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これ、佐藤次信さとうつぎのぶ忠信たゞのぶ兄弟きやうだいつま二人ふたりみやこにて討死うちじにせしのち、はゝ泣悲なきかなしむがいとしさに、をつと姿すがたをまなび、ひたるひとなぐさめたる、やさしきこゝろをあはれがりてときひと木像もくざうきざみしものなりといふ。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
序詞役 さていにたる情慾じゃうよくまさ最期いまはとこねぶりて
これや、はたいにしなつ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)