)” の例文
女房かみさんは、よわつちやつた。可恐おそろしくおもいんです。が、たれないといふのはくやしいてんで、それにされるやうにして、またひよろ/\。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
細君さいくんから手移てうつしにしつけられて、糟谷かすやはしょうことなしに笑って、しょうことなしに芳輔よしすけいた。それですぐまた細君さいくんかえした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
少年しょうねんどくおもって、さかのぼるときに、そのくるまあとしてやりました。するとくるまうえから、ちいさないしころが一つころちました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでもわたくしはどうしてもこの方たちをおたすけするのが私の義務ぎむだと思いましたから前にいる子供らをしのけようとしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
兄宇迦斯えうかしは追いまくられて逃げこむはずみに、自分のしかけたつり天じょうがどしんと落ちて、たちまちし殺されてしまいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
文庫ぶんこ御宅おたくのでせうね。いんでせうね」とねんして、にもらない下女げぢよどくがらしてゐるところへ、最前さいぜん仲働なかばたらき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
主人あるじと妻と逗留とうりゅうに来て居る都の娘と、ランプを隅へしやって、螢と螢を眺むる子供を眺める。田圃たんぼの方から涼しい風が吹いて来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
與吉よきちはそれでもくぼんだしがめて卯平うへいがまだこそつぱくてゆびさき下唇したくちびるくちなかむやうにしながら額越ひたひごしに卯平うへいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と原文に三嶋安という東海道喰い詰めの悪党わるですからきゝません、いきなり息杖をっ取り、左右からブーンと風をまいて打って掛る
帆坂峠ほさかとうげ鷹取越たかとりごえの方に、姫路や岡山や高松や、諸国の兵が、たくさんにせて来たというから、兄様にいさまと一緒に見に行って来たの』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして二、三ぐんぐんしたとおもうと、めりめりとひどいおとがして、木はかわの上にどっさりとたおれかかって、りっぱなはしができました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ある日、わたしが彼女かのじょの部屋へ入って行くと、彼女は籐椅子とういすにかけて、頭をぎゅっと、テーブルのとがったふちしつけていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
水のためにいつし流されるかわかりません。でも、ケモノたちにおそわれたくなければ、ここでがまんしなければなりません。
しばらく唖然あぜんと突っ立っていたぼくは、折から身体をして行く銀座の人混ひとごみにもまれ、段々、酔いが覚めて白々しい気持になるのでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
むしろそのあまりに強情かたくな性質せいしつ……一たんうとおもえばあくまでそれをとうそうとする、我侭わがまま気性きしょうめであったようにおもわれました。
が七になつても、ふねはひた/\と波止場はとばきはまでせてながら、まだなか/\けさうにない。のうちまたしても銅鑼どらる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
現在げんざいわがくににある博物館はくぶつかんはそのすうすくないばかりでなく、殘念ざんねんながら世界せかいしてすぐれた博物館はくぶつかんとはまをすことが出來できません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
どうだの、これはべつに、おいらが堺屋さかいやからたのまれたわけではないが、んといっても中村松江なかむらしょうこうなら、当時とうじしもされもしない、立派りっぱ太夫たゆう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あいちやんはねんすやうにはれたのを面白おもしろからずおもつて、なにほか話題はなしはじめやうとして、れかれかとかんがへてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
どうもその砂が波を揚げて来るので荷物は砂にぶされてしまうし、バアーッと眼の中へ吹き込むから眼を開いて歩くことが出来ない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と、さけんだ。田川大作だった。かれは自分のまえにおいた「二宮翁夜話」をにぎりこぶしでしつぶすようにしながら言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そしてあるばん、にわかに甚兵衛のところし入り、ねむってる甚兵衛をしばりあげ、かたなをつきつけて、人形をだせとおどかしました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
近くの街の屋根瓦の重畳ちょうじょうは、おどってし寄せるように見えて、一々は動かない。そして、うるさいほどかたの数をそびやかしている高層建築と大工場。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
千代ちいちやん今日けふすこはうかへと二枚折まいをり屏風べうぶけてまくらもとへすは良之助りやうのすけだせし姿すがたはづかしくきかへらんとつくもいたくせたり。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
尚お都合のいことに同窓がべて凡人だ。成金の赤羽君にしても、欧州戦争という間違がもとで成功したのである。自分はもう仕方がない。
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
製作せいさくに付きては内部の充實じうじつしたる物と空虚くうきよなる物との二種有り形式けいしきに付きては全体ぜんたいふとりたる物と前後よりし平めたるが如き物との二種有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
水棹みずさおしていつもするようにへさきを砂浜によせ、母親の乗りこむのをまっている大吉の横顔に、いつもとちがったことばがいち早くとんできた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
たとえば野獣やじゅう盗賊とうぞくもない国で、安心して野天のてんや明けはなしの家でると、風邪かぜを引いてはらをこわすかもしれない。○をさえると△があばれだす。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
アヒルたちはあとずさりして、たがいにしあいながら、「早く言いな。早く言いな」と、ガアガアさわぎたてました。
ただ一つこまったことは、乳母車うばぐるまのどこかがわるくなっていて、しているとみぎみぎへとまがっていってしまうことだった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
かうして最初さいしよ大地震だいぢしんこらへる家屋かおくが、其後そのご三分さんぶんいち以下いか地震力ぢしんりよくによつてられることはないはずである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
下人は又、それを行かすまいとして、しもどす。二人は屍骸しがいの中で、暫、無言むごんのまゝ、つかみ合つた。しかし勝敗しようはいは、はじめから、わかつている。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
階段をのぼり切ったところに、頑丈がんじょうな扉がしまっている。じょうがおりていると見え、せど叩けどびくとも動かない。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
女優は自分の耳を疑ふやうに、戸をけてずつと入つて来た。も一度言つて置くが、その時は恰度ちやうど六月であつた。小僧はへんもない顔をして言つた。
「まだ五時位なのに誰だろう」そんな事を考えながら、ふすまして庭の透けて見える硝子戸をのぞくと、大きなあから顔の男が何気なく私の眼を見て笑った。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
ときおり御用聞きがその家のところまで自転車を重そうにし上げてくるらしい音が私のところまで聞えて来た。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
額からぽたぽたこぼれる血をぬぐい「覚えてなはれ」と捨台辞すてぜりふを残して憤然ふんぜんと座を立ちそれきり姿を見せなかった
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
たかやまうへはうからむらはづれの街道かいだうのところまでせてくろいはだのいしだのをるのもはじめてゞした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ですから、となごと全體ぜんたいが、もと命令めいれい意味いみつてゐました。そのなが命令めいれい言葉ことばのうちに、それをしつめたものが出來できたことは、すでまをしました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
こういって、外套室がいとうしつへかけ出した。このとき小使こづかいがベルのボタンをしたので、あじもそっけもない広い校舎こうしゃじゅうへ、けたたましいベルのおとひびき渡った。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
男は近づいて(何か御用ですか)と云うと、(ちょっと話したいのです。その戸は閉まっているようですが、せば開きます。どうぞ開けておはいり下さい)
女強盗 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「はっ」と言って源太夫はしばらくたたみに顔をし当てていた。ややあってなみだぐんだ目をあげて家康を見て、「甚五郎めにいたさせまする御奉公は」と問うた。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それで学校に式のある時など、他の教師は皆礼服で列席するのに、ヘルンは一張羅いっちょうらの背広でし通していた。
ある雨の日、小学校より帰る子どもこの山を見るに、処々ところどころの岩の上に御犬うずくまりてあり。やがて首をしたよりしあぐるようにしてかわるがわるえたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
脛押すねおしか。』と轟大尉とゞろきたいゐかほしかめたが、けぬ大尉たいゐ何程なにほどことやあらんとおなじく毛脛けずねあらはして、一押ひとおししたが、『あた、たゝゝゝ。』とうしろ飛退とびのいて
無垢むく若者わかものまへ洪水おほみづのやうにひらけるなかは、どんなにあまおほくの誘惑いうわくや、うつくしい蠱惑こわくちてせることだらう! れるな、にごるな、まよふなと
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「美代が悪いんだ」と、兄は怒つてでもゐるやうなこはい顔をして、かぶせるやうな強い口調で云つた。
イボタの虫 (新字旧仮名) / 中戸川吉二(著)
はだけた寝巻ねまきからのぞいている胸も手術の跡がみにくくぼみ、女の胸ではなかった。ふと眼をらすと、寺田はもう上向けた注射器の底をして、液をき上げていた。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ひがしもんからはひつて、露店ろてん參詣人さんけいにんとの雜沓ざつたふするなかを、あふひもんまく威勢ゐせいせた八足門はつそくもんまへまでくと、むかうから群衆ぐんしうけて、たか武士ぶしがやつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もしやと思って、し入れの戸を開けて見ましたが、そこにも何も変わったことはありませんでした。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)