)” の例文
旧字:
五百の姉安をめとった長尾宗右衛門は、兄の歿した跡をいでから、終日手杯てさかずきかず、塗物問屋ぬりものどいやの帳場は番頭に任せて顧みなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ノッケから読者を旋風に巻込むような奇想天来に有繋さすがの翁も磁石に吸寄せられる鉄のように喰入って巻をく事が出来ず、とうとう徹宵してついに読終ってしまった。
露伴の出世咄 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
近をきて遠を謀るは愚人の常態にして、陋なること笑ふべければ、西の諺の方は甚だ佳趣あり。楽あれば即ち苦あるは免る能はざるの数ながら、語に奇味あること無し。
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
家にあるに手杯てさかづきかず、客至れば直に前にならべた下物げぶつを撤せしめて、新に殽核かうかくを命じた。そして吾家に冷羮残炙れいかうざんしやを供すべき賤客は無いと云つたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
暁井げうせい 残月をみ、寒炉かんろ 砕澌さいしく。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
忽ち顔をしかめて記録を手からいた事がある。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)