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怯
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お
ふりがな文庫
“
怯
(
お
)” の例文
少年は
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずこの店にはいり、空気銃を一つとり上げて全然
無分別
(
むふんべつ
)
に
的
(
まと
)
を
狙
(
ねら
)
う。射撃屋の店には誰もいない。少年の姿は膝の上まで。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それより、何より不愉快なのは、坑夫の半数を占める十二、三から十五歳位の惨めな少年坑夫達までが彼を
怯
(
お
)
じ恐れていることだった。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
三人の中には
怯
(
お
)
ず怯ずと兵員たちの腰に
佩
(
お
)
びた剣に触ってみるものもあれば、不思議そうに靴に眼を留めて、
凝乎
(
じっ
)
と眺めている者もある。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
出て来た女中に、鶴見がいますか、妹が来たと申し伝えて下さい、と
怯
(
お
)
じずに言った。やがて廊下に、どたばた足音がして
花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずと倉地をうかがうと、倉地は何事も知らぬげに、暖かに暮れて行く青空を振り仰いで目いっぱいにながめていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
男は
怯
(
お
)
じる色もなかった。二人の
他
(
ほか
)
にも、槍を向けて自分を
凝視
(
ぎょうし
)
している
鎖襦袢
(
くさりじゅばん
)
や、火事装束の人影が見えるのである。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お銀は床のなかで、その女が亭主に虐待されていたという話をして、自分の身のうえのことのように
怯
(
お
)
じ
怕
(
おそ
)
れた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
盲人
(
めくら
)
蛇に
怯
(
お
)
じず、
藪
(
やぶ
)
を突ついて蛇、毛を吹いて傷を求め、飛んで火に入る夏の虫か、
蟷螂
(
とうろう
)
の竜車に向う
斧
(
おの
)
、いやはや、いやはや、おかしくって
臍
(
へそ
)
が茶を沸かすぞ
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「しかし、傭人という私の立場も、十分お察し願いたいと思いまして」と訴えるような眼で、
憐憫
(
あわれみ
)
を乞うような前提を置いてから、
怯
(
お
)
ず怯ず二人の名を挙げた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
下等女の
阿婆摺
(
あばずれ
)
を活動力に富んでると感服したり、貧乏人の娘が汚ない
扮装
(
なり
)
をして
怯
(
お
)
めず臆せず平気な顔をしているのを虚栄に
俘
(
とら
)
われない天真爛漫と解釈したり
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
後藤
(
ごとう
)
男爵が少年のころ、何かの折りに、
岩倉公
(
いわくらこう
)
の前に
召
(
め
)
され、菓子を
饗
(
もてな
)
された。地方からポット
出
(
で
)
の男は
怯
(
お
)
めず
臆
(
おく
)
せず、その席上でムシャムシャと菓子を食った。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
よろしい、まずお前がその二十七貫を武芸者らしい身なりに
拵
(
こしら
)
え、剣術の道具を一組買って肩にかけ、いずれの道場を選ばず玄関から、
怯
(
お
)
めず
臆
(
おく
)
せず案内を頼む。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その簡単な批評がまたよく
肯綮
(
こうけい
)
に当っていた。私は先生の直観の鋭さに敬服すると共に、先生のものに
怯
(
お
)
じない不敵な魂を感じた。他の書物など、全く眼中にないようである。
西田先生のことども
(新字新仮名)
/
三木清
(著)
「見間違おうたってこのいい月。決して間違いはありません。……こう、
怯
(
お
)
じたように後さきを見ながらあっしのあけた破風の穴からソロソロと屋根裏へ入って行ったんです」
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
俺
(
わし
)
も東京へ行きましたが、静岡を見ているだあもの、
些
(
ち
)
っとも
怯
(
お
)
じにゃあでがんしたよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
さあ
汝
(
そなた
)
も
此方
(
こち
)
へ、と云いさして
掌
(
て
)
に持たれし花を
早速
(
さそく
)
に
釣花活
(
つりはないけ
)
に投げこまるるにぞ、十兵衛なかなか
怯
(
お
)
めず
臆
(
おく
)
せず、
手拭
(
てぬぐい
)
で足はたくほどのことも気のつかぬ男とてなすことなく
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
立花は
怯
(
お
)
めず、
臆
(
おく
)
せず、
驚破
(
すわ
)
といわば、
手釦
(
てぼたん
)
、襟飾を隠して、あらゆるものを見ないでおこうと、胸を据えて、
静
(
しずか
)
に
女童
(
めのわらわ
)
に従うと、空はらはらと星になったは、雲の切れたのではない。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尾長鳥は羽根の美しい鳥で、そしてさほどに人に
怯
(
お
)
ぢず、私の泊つてゐた松代町の宿屋の庭の木にも、また折々飮みに行つた料理屋の庭にも、ほんの縁さき窓さきの木の枝で遊んでゐた。
たべものの木
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
と、頭へ閃いた刹那、庄吉は、若僧の小太郎に、恐ろしさを覚え、
怯
(
お
)
じけ心を感じたが、その瞬間——ぽんと、鈍い、低い音がして、庄吉の顔が、灰土色に変じた。眉が、脣が、歪んだ。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼
(
か
)
の
女
(
ぢよ
)
の如何にも打ち解けて、人に
怯
(
お
)
ぢない物言ひは、快活ならずして不謹愼となり、斜に坐り、首を
傾
(
かし
)
げ、肩をゆする其の態度は、男の心を魅する女らしい、柔い、美しさではなくて
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
男は彼女が
怯
(
お
)
じているのか、あるいは運命のこの変をあきらめて受け入れたのだろうと思いちがいして、彼女を捨てばなしにして壁板のすきまに片足をかけた、それから剣を顎の下にして
剣のうた
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
我目に見ゆるは、唯だ頭上の青空のみ。忽ち我等がめぐりに、人々の
諸聲
(
もろごゑ
)
に叫ぶを聞きつ。我等は彼方へおし遣られ、又此方へおし戻されき。こは一二頭の
仗馬
(
ぢやうめ
)
の物に
怯
(
お
)
ぢて駈け出したるなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
一つ
怯
(
お
)
めず臆せずすべてをぶちまけようとかたくなりながら考えている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
汝は去り、われは
止
(
とど
)
まる、もの
怯
(
お
)
づる犬のごと
生けるものと死せるものと
(旧字旧仮名)
/
アンナ・ド・ノアイユ
(著)
鼠かしら、泥坊かしら、又はもう夜明けになつたのかしら?——わたしはどちらかと迷ひながら、
怯
(
お
)
づ怯づ細眼を明いて見ました。
雛
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「旦那様、まことにつかぬことを伺うようでございますが……」と遠慮しいしい何か恐ろしい物にでも触れるかのように
怯
(
お
)
ず怯ずと言い出してきた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
長久手以来、秀吉の
麾下
(
きか
)
は、三河武士の手なみにふかく
怯
(
お
)
じたぞと、敵は、声を大にして
云
(
い
)
い
囃
(
はや
)
しているからだ。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何をそう
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずしているのかい。そのボタンを後ろにはめてくれさえすればそれでいいのだに」
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
負けぬ気の椿岳は業を煮やして、桜痴が
弾
(
ひ
)
くなら俺だって弾けると、誰の前でも
怯
(
お
)
めず臆せずベロンベロンと
掻鳴
(
かきな
)
らし、勝手な節をつけては盛んに平家を
唸
(
うな
)
ったものだ。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
孫は、その
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずした小孩の声をきくと、いきなり荒々しく肩をかかえ込んで顔を引寄せた。
雲南守備兵
(新字新仮名)
/
木村荘十
(著)
もう三十七八ともみえる女は、その時も綺麗に
小皺
(
こじわ
)
の寄った
荒
(
すさ
)
んだ顔に薄化粧などをして、古いお召の
被布姿
(
ひふすがた
)
で来ていたが、お島の権幕に
怯
(
お
)
じおそれたように、
悄々
(
すごすご
)
出ていった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ゆえに演説中に誤りを笑うものがあるとも、その
笑
(
わら
)
いは冷笑でない。また出来
損
(
そこ
)
ねたからとて、あながち国名を
汚
(
けが
)
すことともなるまい。ブロークンながらも
怯
(
お
)
めず
臆
(
おく
)
せず元気よくやるがよい
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
茜さんが、もの
怯
(
お
)
じしたような眼付きで、キャラコさんを見あげながら
キャラコさん:11 新しき出発
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「しかしお前も、よくねばったものだねえ。案外あつかましいところがある。めくら
蛇
(
へび
)
に
怯
(
お
)
じずの流儀だが、でも、大成功だ。けがの功名で、お前は、ちょっと好感を持たれたかも知れない。」
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
コノール (
怯
(
お
)
じ
懼
(
おそ
)
れた囁き声で)あれは、ウスナの家の声だ!
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
お通は
怯
(
お
)
めず、
臆
(
おく
)
する色なく
琵琶伝
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ところがふと
囲
(
かこ
)
いの障子に、
火影
(
ほかげ
)
のさしているのを幸い、そこへ
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ず行きかけると、いきなり誰か
後
(
うしろ
)
から、言葉もかけずに組つきました。
報恩記
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
おそらく、その命松丸は、何かに
怯
(
お
)
じて尻込みしていたものだろう。おあるじの兼好法師に呼ばれると、初めて
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
肝
(
きも
)
の太いもんだなとつくづく舌を
捲
(
ま
)
きましたが、娘二人は慣れ切ったもので、何の物
怯
(
お
)
じするところもなく、私に電蓄をかけて——父親が
拵
(
こしら
)
えたとかいう、電気代りの回転装置をかけて
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その町へ着くまでに、汽車は寂しい停車場に、三度も四度も
駐
(
とどま
)
った。東京の
居周
(
いまわり
)
に見なれている町よりも美しい町が、自然の威圧に
怯
(
お
)
じ疲れて、口も
利
(
き
)
けないようなお島の目に異様に映った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何分
(
なんぷん
)
か
後
(
のち
)
、あの羽根を
傷
(
きずつ
)
けた山鳩は、
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずまたそこへ
還
(
かえ
)
って来た。その時もう草の上の彼は、静な寝息を洩らしていた。
素戔嗚尊
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
手綱をためていると、かえって、馬が人に
怯
(
お
)
じて
飴屋
(
あめや
)
の傘が、老公のからだに傾くほど、道ばたに押しやられた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その鈍感が私の顔を見るたびに何か謝りたそうに
怯
(
お
)
ず怯ずしているから噴飯ものよ。ともかくあの手この手はもうあんな鈍感には効かないの。莫迦もあそこまで屈従を心得ていれば天下無敵ね。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
笹村はびしゃりとその頬を打ったが、子供は一層
怯
(
お
)
じ
怖
(
おそ
)
れてもがいた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そこに西洋人の人形が一つ
怯
(
お
)
ず
怯
(
お
)
ずあたりを
窺
(
うかが
)
っている。
覆面
(
ふくめん
)
をかけているのを見ると、この室へ忍びこんだ
盗人
(
ぬすびと
)
らしい。室の隅には金庫が一つ。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
北条や
梶原
(
かじわら
)
のおべッか者や、またその権力に
怯
(
お
)
じ怖れている小心者の
大名輩
(
だいみょうばら
)
に、どうして、これがいえるか。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかも私の
凝視
(
みつめ
)
ている視線の前に
怯
(
お
)
じ恐れたように口も開き得ずにいるその姿が言いようもなく私の心を打たずにはおかなかった。私が笑って見せたら少年の唇も美しく微笑んだように思われた。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
僕は
怯
(
お
)
ず怯ずふり返り、やっとこのバアの軒に
吊
(
つ
)
った色
硝子
(
ガラス
)
のランタアンを発見した。ランタアンは烈しい風の為に
徐
(
おもむ
)
ろに空中に動いていた。……
歯車
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
今日までは、人がみな関羽と聞くと、
怯
(
お
)
じ怖れるのを、何故かと
嗤
(
わら
)
っていたが、真に、彼こそ稀代の英傑であろう。人のことばは、
実
(
げ
)
にもと、つくづく感じ入った。
三国志:09 図南の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
最早何の
怯
(
お
)
じ恐れるところもない。不貞の妻に夫として当然の権利の行使をするのだ。妻に裏切られた憤りと忿懣に口もきけぬくらい顔を
痙攣
(
ひきつ
)
らせつつも、私は力強い男の怒りに満ちた声を出した。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
怯
漢検準1級
部首:⼼
8画
“怯”を含む語句
卑怯
卑怯者
怯気
怯々
怯懦
気怯
物怯
勇怯
怯者
聞怯
御卑怯
怯勇
怯々然
心怯
氣怯
卑怯至極
悪怯
怯弱
怯気々々
怯惰
...