)” の例文
仁王立におうだちになってにらみすえながら彼れは怒鳴どなった。子供たちはもうおびえるように泣き出しながらず仁右衛門の所に歩いて来た。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「やっぱし炭山と変らないで、死ぬ思いばしないと、きられないなんてな。——瓦斯ガスッかねど、波もおっかねしな」
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
づ/\橋板を踏むと、足の底がふわりとして、一足毎に橋は左右に前後に上下に搖れる。飛騨山中、四國の祖谷いや山中などの藤蔓の橋の渡り心地がまさに斯樣こんなであらう。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ず/\橋板を踏むと、足のそこがふわりとして、一足毎ひとあしごとに橋は左右に前後に上下にれる。飛騨ひだ山中、四国の祖谷いや山中などの藤蔓ふじづるの橋の渡り心地がまさに斯様こんなであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そういう連中の振りかざす大義名分にじ怖れて、徳川御宗家を見捨てるという法があろうか。
仇討禁止令 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
みんな、行ったばかりの、パリの感想というものは、暗かった、古っぽかった、湿っぽかったという巴里は、そらくお雪にも、他の日本人が感じた通りの印象を与えたのだろう。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
直ぐに見て貰へば一と思ひに済むのだけれども、待たされてゐるとさま/″\な恐怖の幻を描いて、だん/\ぢ気づいて来る。外の患者達は皆顔馴染みで、代診や看護婦達と雑談をしてゐる。
青春物語:02 青春物語 (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
所謂目暗蛇にじざる者であったのだ。
法隆寺再建非再建論の回顧 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
づる風情ふぜい
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
十六歳の夏、兄と阿蘇あその温泉に行く時、近道をして三里余も畑のくろ草径くさみちを通った。吾儘わがままな兄は蛇払へびはらいとして彼に先導せんどうの役を命じた。其頃は蛇より兄が尚こわかったので、ず/\五六歩先に立った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)