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そしてようやく、復職のめどもつき、あとは殿帥府でんすいふ最高の大官、こう大将の一いんが書類にされれば……というところまでぎつけて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、オクターヴォ判型の書簡紙に二枚ほどのものでしたが、認め終ると、その上に金粉をいて、さらに廻転封輪シリンドリカル・シールしました。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
出づれば、その道まさり、その伴ふ星またまさる、しかしてその己がさがに從ひて世の蝋をとゝのかたすこといよ/\いちじるし 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
彼等の頭はみんな半分剃り落されて、ぼうの隙間からは苔の痕が見えた。多数の者は顔一面に黒々と、焼けた鉄で烙印がされて居た。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
脇差の切先きっさきを調べて見ると肉には触れている、橋の上をよくよく見ると血のしたたりが小指でしたほどずつすじを引いてこぼれております。
可哀相にスッカリ気まりが悪くなった銀行家は、法螺丸の俥引くるまひきにも劣るというミジメな烙印をされて、スゴスゴと帰って行く。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
大「いや/\腹を切る血判ではない、爪の間をちょいと切って、血がにじんだのを手前の姓名なまえの下へすだけで、痛くもかゆくもない」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いかにもその赤い花と緑の葉とがその冴えた空気の中にぴたりとされてあるやうに感じられる。硝子戸を透して見たのなどは殊に好い。
野の花を (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
花嫁は評判の堅い娘で、八百峰の総領とは許嫁いいなずけ同士、色恋の道行でないことは、口善悪くちさがない近所のおかみさん達までが牡丹餅判ぼたもちばんします。
私はまた擦り直す。その時逆にした灰吹の口に近く指に当るところに磨滅した烙印らくいんで吐月峰としてあるのがいつも眼についた。
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いんけは首にかけて持っていたから、こゝへ何うぞと言ったら、『こゝか?』と見当をつけて、スポンと掛け声をしてした。皆笑ったぜ
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
病ややかんになりて、ほのかに武男の消息を聞くに及びて、いよいよその信に印されたる心地ここちして、彼女かれはいささか慰められつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
中等以上のラマですと、その方法書を自分の侍者に書かせてラマ自身に実印をし、そしてその書面を尋ねに来た人に渡すです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
しょっちゅうとびついて、そんな風に自分たちの虚弱ひよわい体の重みでもって、壁紙のまだらな色模様をし出しているのだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
云いつけると、外交部から交付される筈の、外国へのパスポートまで、ちゃんと、印まで間違いのない印をしてこさえてきた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
私はもちろん肝心の保証人になって印判ハンコすつもりであったから先祖伝来の途方もない大きなハンコを一個首からぶら下げ
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
赤い丸い月が出て居る有様を朱肉で丸印がしてあるものとして、一行の雁字と共に一幅いっぷくを成して居るかのやうにしやれて見たのであらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「死んだおやじは明きめくらだったから、証文といっても拇印ぼいんだけで、それが本当におやじのしたものかどうかさえ調べることはできない」
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その約束にそむいたらこないこないしられるやとか、何ぼでも虫のええこと書いたあって、「これでよかったら此処い名ア書いて判しなさい」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「名前ははっきり書いてなかった。ただ、差出人の名前に相当するところには、矢を二つぶっちがえた印がしてあった」
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
不断でも支那に行く沖縄の使節は琉球国王の印をした白紙を用意していて、いざ鎌倉という時にどちらにも融通のきくようにしたとの事である。
沖縄人の最大欠点 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
帰りがけに名を尋ねたら、ゴム印でした紙切れをくれた。それにはこうあった。酒田市十王堂じゅうおうどう町弐八金具店白崎孫八。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
千代松はいつも自分の坐るところへ例ものやうな形に、はんこでした如くキチンと坐つて、肩を搖り/\低い聲で言つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
印をす事はどうも危険ですからやめたいと思います。しかしその代り私の手で出来るだけの金を調ととのえて上げましょう。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十五世紀から十九世紀までも英国で行なわれたような、労働立法を制定して、額に烙印らくいんすのが一等だ。むちで打つのだ、耳を半分切り取ることだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
父が持って生れた任侠にんきょうの性質は、頼まるゝごとに連帯の判もした。手形の裏書もした、取れる見込のない金も貸した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
民さんのお内儀さんが来てたすけてくれといい、彼は海岸にある大森警察署に行って、請人うけにん印形いんぎょうしてこの男が鉄柵てっさくの中から出てくるのをむかえた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
私が夏休みに大川の水練場へ通ったときに毎日出精簿に判をしてもらったところから祖母が思いついたのである。
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
その奥には漾虚碧堂蔵書という隷書れいしょの印がしてある。さてこの手紙を読むにつけていろいろ思い出すことがある。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
では、蕗屋君、これに署名して、拇印で結構ですからして呉れませんか。君はまさかいやだとは云いますまいね。
心理試験 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その時分じぶん先生せんせい御質素ごしつそなものであつた。二十幾年にじふいくねんもつとわたしなぞは、いまもつて質素しつそである。だんは、勤儉きんけんだいして、(大久保おほくぼ)のいんしてもい。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以上は青幇の問答なので、云う事が判でしたように、ちゃんときまっているのです。云って見れば日本の博徒仲間で行う、仁義というあれなのです。
それとも烙印らくいんのようなものでもすとか、そんなわけにはいかんものでしょうかね……さもないと、もしそこに混乱が起こって、一方の範疇の人間が
伯爵家から名入りの印絆纒ばんてんをだして着せ、その上に伯爵の候補者推薦名刺には、大隈という認印までしてある。
春宵因縁談 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
どれでも判でしたようにおなじで、どこかに型にはずれた動きが一カ所でもあれば、すぐわかるものなんだそうです……警察では、追突されたようすも
喪服 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
かつ、彼女はそのとき妊娠中であったが、獄中で子を生んでは、生れた子に焼印をすようなものであるから、それやこれやで彼女は少なからず煩悶した。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「女紋の方をしておくれ」とおっしゃるので、「何になさるの」と聞きますと、「まあ、待っておいでなさい。」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
何故ならこの接吻は、私の足枷あしかせされた封印のやうに思はれたから。その後も、彼はこの儀禮を略さなかつた。
ポリッジとベイコンエッグス、ライプドオリーブ、それに紅茶とパンと、十年一日、判でしたような朝食を済ましてから、伊東は松林に囲まれた家を出た。
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
それは庸介へあてたので差出人の名前の代りに、兄が下宿していた旅舎の商用のゴム印がされてあった。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
毎月、月末ちかくに金をもらいに行き、判をして、屋敷が荒されていないかを事こまかに観察をし、それから湘南海岸の家に金を郵送するのが私の仕事だった。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
虎に殺された者のしかばねを一族の墓地に埋めぬとある、また正月ごとに林地の住民ぶた一疋に村の判をした寄進牒きしんふだを添えて林中に置くと、虎が来てふたつながら取り去る
それだのに、此の人に逢っていると又昔のように、向うですげなくすればするほど、自分のきずを相手にぎゅうぎゅうしつけなくては気がすまなくなって来そうだ。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
もう十年早く気が附いたらとはたれしも思う所だろうが、皆判でしたように、十年後れて気が附く。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
郷里くにに居る正太の知人で、叔父の請判うけはんがあらば、貸出しそうなものが有る。商法の資本もとでとして、二千円ばかり借りて来たい。迷惑は掛けないから、判だけしてくれ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
籒、ちゅう、抽の三字は皆相通ずるのである。抽斎の手沢本しゅたくぼんには籒斎校正の篆印てんいんほとんど必ずしてある。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「お前そんなことをしてもいいだかい。自分の娘のことじゃないから、私はまア何とも言わないが、長くいるようじゃダメだぞえ。」と、念を押しながら判をしてくれた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
すると孫はにやりと笑ってポケットから賃貸借通帳を取出し、それにぽんと印をしてこちらに寄越よこした。それを見ると家の借り手は、僕と野呂の二人の連名になっています。
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
が、それにも増して驚いたのは、迎えに出て来た十人ばかりの少女で、それが揃いも揃って、まるでハンコをしたように、彼の傍で微笑している小池慶子とソックリ同じなのだ。
地図にない島 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
どっちつかずの御座形おざなりで、そんな場合にはいつも判でしたように、自分は世間的には誠につまらぬ蛆虫同様の者で、人様からかれこれ心配していただくほどの人間ではないとか