)” の例文
「あんなことで、こすものじゃなくてよ。」と、しょうちゃんは、おねえさんにしかられました。ところが、その午後ごごでありました。
ねことおしるこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
それでもころんだり、きたり、めくらめっぽうにはらの中をして行きますと、ものの五六ちょうも行かないうちに、くらやみの中で
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
初更しよかういたるや、めるつまなよやかにきて、粉黛ふんたい盛粧せいしやう都雅とがきはめ、女婢こしもとをしてくだん駿馬しゆんめ引出ひきいださせ、くらきて階前かいぜんより飜然ひらりる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ生活せいくわつかくごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかへてちやみ、れから書齋しよさいはひるか、あるひ病院びやうゐんくかである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はやがさめても何時いつまでもるのがいゝか、おそがさめてもむつくりきるのがいゝか、そのことで兄弟きやうだいあらそつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
信長に身を寄せた漂泊の将軍家義昭よしあきは、その後、岐阜ぎふの城下西にしたなの立正寺を宿所と定められて、一行はそこにししていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しなあさから心持こゝろもち晴々はれ/″\してのぼるにれて蒲團ふとんなほつてたが、身體からだちからいながらにめうかるつたことをかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ばう谿間たにあひの崖に臨むで建てかけた新建しんたちで、崖の中程からによつきりときあがつて、欄干らんかんの前でぱつと両手をひろげたやうなかへでの古木がある。
茸の香 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
つきすると、木々きぎこずえ青葉あおばつつまれ、えだえだかさなりって、小鳥ことりもりこだまこして、うえはならすくらいに、うたしました。
馬もびっくりしましたぁね、(おいどいつだい、何の用だい。)おどおどしながらはねきて身構みがまえをしてうバキチにいたってんです。
バキチの仕事 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おどろいてめたが、たしかにねここゑがする、ゆめかいか、はねきてたらまくらもとにはれい兒猫こねこすはつてゐた、どこからしのんでたのやら。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
その苦しさは肉躰にくたい的なもので、まず嘔きけがこり、ついで胸を搾木しめぎにかけられるか、ひき裂かれでもするような気持になる。
寒橋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
わたしあがつて、をりからはこばれて金盥かなだらひのあたゝな湯氣ゆげなかに、くさからゆるちたやうななみだしづかにおとしたのであつた。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
小六ころく宗助そうすけきるすこまへに、何處どこかへつて、今朝けさかほさへせなかつた。宗助そうすけ御米およねむかつて別段べつだんその行先ゆくさきたゞしもしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
午睡ひるねする人達ひとたちもあわててとびき、うえしたへの大騒おおさわぎをえんじたのも道理どうり、その来客らいきゃくもうすのは、だれあろう、ときみかどうず皇子みこ
第一 毎日まいにちき、寢衣ねまき着替きかへ、蒲團ふとんちりはらひ、寢間ねま其外そのほか居間ゐま掃除さうじし、身體しんたい十分じふぶん安靜しづかにして、朝飯あさはんしよくすること
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
でも、そのかわり、人間のそばに近づくとき、いつも感じるあのこわいような気もちが、またまた、こってくるのでした。
千代ちいちやん今日けふすこはうかへと二枚折まいをり屏風べうぶけてまくらもとへすは良之助りやうのすけだせし姿すがたはづかしくきかへらんとつくもいたくせたり。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、彼はあがって、せい一杯いっぱいの早さで走り出しました。亀がどんなにせいを出しても追いつけないような早さで。
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
盗賊とうぞくどもはびっくりしてきあがりますと、の前に大きなおにがつっ立ってるではありませんか。みんなきもをつぶして、こしぬかしてしまいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
見渡みわたかぎり、あいちやんが針鼠はりねずみおくらうとおもところにはすべ畦畝うねがあつて、二れつになつた兵士へいしつねきて、毬投場グラウンド部分々々ぶゝん/\あるいてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
離間者の一言でこしもかしも出来るもんだと云ふことを発表しようとするのか——我々の周囲には日夜探偵の居ることを注意し給へ——
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
いはゆる文化的都市ぶんくわてきとし發達はつたつすればするほど、災害さいがい慘憺さんたんとなる。したがつて震災しんさいたいしても防備ばうびかんがへがこる。が、これも比較的ひかくてきあたらしい時代じだいぞくする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
さと そツてちや、けても起きらんとだもね。二へんも三べんもうだつなるばツ、そツでん目ば覚さんと……。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
つぎの朝はいつもより早くきだして、しろ公をつれて家のうらの丘の上へのぼり、入江の方を見ていました。が、おっかさんはかえってきませんでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
寢床ねどこうへたふれさっしゃるかとおもふと、やがまたきてチッバルトとばらっしゃる、かとおもふと、ロミオとばって、また横倒よこたふしにならっしゃります。
いそ其方そなたると少年せうねんは、いまこゑおどろ目醒めざめ、むつときて、半身はんしん端艇たんていそとしたが、たちまおどろよろこびこゑ
權藏ごんざう最早もう彼是かれこれ六十です。けれどもづるまへきてぼつするまではたらくことはいまむかしかはりません。そして大島老人おほしまらうじんかれすくふたときいはうえつて
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こんなふうに話しあっていると、よいことはこりません。二ひきのかえるはとうとうけんかをはじめました。
二ひきの蛙 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
或いは誰かにこされ、または室よりいださるることもあり。およそ静かに眠ることを許さぬなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
朝戸出あさとできみ足結あゆひらす露原つゆはらはやでつつわれ裳裾もすそらさな 〔巻十一・二三五七〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかし、いねはアグリの産後いっさいの物音に頭がめ、生家の隠居所にしをしていた。眉間みけんにいつも深い立皺たてじわをよせ、あおい顔をして手拭で鉢巻をしていた。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
シューラは素早すばやくはねきて、毛布もうふゆかへおっぽりすと、はだしでつめた床板ゆかいたをぱたぱたと大きくらしながら、ママのところへんでき、いきなりこうわめいた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
此處ここはどこなのかしら——彼女かのぢよあがらうと意識いしきなかでは藻掻もがいたが、からだ自由じいうにならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
水は音もしないで、静止したやうに星の影をひたしてゐた。対岸には濛靄が立罩たちこめてどこをてもきてゐるやうな家はなかつた。電車の響きばかりが劇しく耳についた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
今私は、こゝにまたも、打ちのめされ、踏みにじられてゐるのだ。この上、もうき上ることが出來ようか? 「駄目だ」と私は思つた。そして本氣に死なうと思つた。
座敷のうちにわかにぱッと明るくなったので、私も驚いて飛びきる、その途端に何処どこから来たか知らぬが一個ひとりの人かげが、この広い座敷の隅の方からふらふらと現われ出た。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
湖畔の学生生活が空気のように身について来ると、習慣的な朝夕のしの間に、しんしんとして、寂しいもの、しまれるもの、痛むものが心臓をつかみ絞るのであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
四階の一室では僅々きんきん数分間しか費やさなかったとみえて、艶子が家に帰り着いた時刻はふだんとほとんど違わなかったので、少しも係官の嫌疑をこさなかったのだった。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
あさになって野鴨達のがもたちきてみますと、見知みしらないものているのでをみはりました。
要吉の仕事しごとの第一は、毎朝まいあさ、まっさきにきて、おもての重たい雨戸あまどをくりあけると、年上の番頭ばんとうさんを手伝てつだって、店さきへもちだしたえんだいの上に、いろんなくだものを、きれいに
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
自分じぶん病氣びやうきはその上京じやうきやうして、すぐに結核性けつかくせい關節炎くわんせつえんだといふことがわかつたのだと、まちは、ふとをつとかほながらかんがへた。そのとき、まちはもはやあがることが出來できなかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
りよ前日ぜんじつ下役したやくのものにつていて、今朝けさはやきて、天台縣てんだいけん國清寺こくせいじをさして出掛でかけることにした。これは長安ちやうあんにゐたときから、台州たいしういたら早速さつそくかうとめてゐたのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
じぶんもいささか旅にでも出て都塵とじんを洗いたい気持ちもあったし、それよりも、気らくな旅のしに、まず二人を親しませたい心づかいから、折から大次郎が言いだしたのを幸い
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おゝ……おたけや/\。竹「なんだよ、しつかりおよ、梅喜ばいきさん/\、おきよ。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
弟子でし藤吉とうきちから、おせんがたとのらせをいた春信はるのぶは、たばかりでかおあらっていなかったが、とりあえず画室がしつとおして、磁器じきはだのようにんだおせんのかおを、じっと見詰みつめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
香央かさだ女子むすめ磯良いそら、かしこにきてより、つとき、おそく臥して、常に舅姑おやおやかたへを去らず、五〇をつとさがをはかりて、心を尽して仕へければ、井沢夫婦は五一孝節をでたしとてよろこびにへねば
「竜之助さんの修行半ば頃から、お父さんが病気にかかって、しが自由にならなかったもので、あの人の剣法が音無しの構えと言われるようになったのは、それから後のことだと聞きました」
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
幸い御両親とは離れた部屋にふししていましたのと、夫の門野は、あの人自身のことで夢中になっていましたのとで、その半月ばかりの間を、怪しまれもせず過ごすことが出来たのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼はいきなりきようとして、己も裸になっているのに気がいた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)