)” の例文
「なにか、こころからむすめよろこばせるようなうつくしいものはないものか。いくらたかくてもかねをばしまない。」と、両親りょうしんは、ひとはなしました。
笑わない娘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女学生は女学生で、このお面のカムフラージュによって、あこがれのボーイッシュ・ガールを、声をしまず声援することができた。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
みんなほんとうに別れがしそうでその顔いろも少し青ざめて見えました。ジョバンニはあぶなく声をあげて泣き出そうとしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
砲弾にうたれ、裂けてくだけて散る人の命というものを、しみ悲しみ止どめることが、どうして、してはならないことなのだろう。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
しいけど、僕、あきらめるよ。それに、そんなもん、大してしかないんだもの。銀貨の一つやそこら、あったってくったって!
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
老人ろうじんたちは、ごんごろがねわかれをしんでいた。「とうとう、ごんごろがねさまもってしまうだかや。」といっているじいさんもあった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
九円じゃ東京までは帰れない。茶代なんかやらなければよかった。しい事をした。しかし九円だって、どうかならない事はない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
義眼の副司令の女を、柳ちどりと思っていたのは笹枝弦吾のしい誤解ごかいだった。柳ちどりは確かに機関銃で殺された踊り子だった。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なによりも名をしむ武士にとって、これはいつまでも耐えられる問題ではない、折さえあったら華ばなしくたたかって汚名をそそごうと
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
けれどもこれほどのえらい将軍しょうぐんをただほうむってしまうのはしいので、そのなきがらによろいせ、かぶとをかぶせたまま、ひつぎの中にたせました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(なんじゃ、また勧進か)大衆は、銭乞いに、りている。しげなく、彼を残して、散ってしまう。ただ一人、立ち残って
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど。そうか。——しかし、大河にしちゃしかったね。おしまいごろにはかんしゃくをおこしていたようだったが。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
香織かおりくしかしながらも、『折角せっかくこうしてきれいにしてあげても、このままつくねてくのがしい。』とってさんざんにきました。
夢中むちゅうはらったおれん片袖かたそでは、稲穂いなほのように侍女じじょのこって、もなくつちってゆく白臘はくろうあしが、夕闇ゆうやみなかにほのかにしろかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
間もなく不量のことで負傷し、肋膜炎ろくまくえんを起してその年の冬、即ち一八九〇年十一月八日、多くの弟子達でしたちしまれながら、パリの宅に長逝ちょうせいした。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
「いえ……その……金魚きんぎょですよ。こいつは三びきともかなり上等じょうとうのランチュウです。んでしまつているから、どうもしいことしたとおもいまして」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
その頃のヘルンは、瞬時をしんで仕事に熱中していたため、以前のようには、度々妻と一所に旅行したり、散歩したりすることができなかった。
人込みの中で騒ぎたてては面目めんもくないという理窟りくつをその時私は胸の中で考えていたのだが、実は振り放すには余りにしいような気もしていたのだ。
婦人おんなは早や衣服きものひっかけて縁側えんがわへ入って来て、突然いきなり帯を取ろうとすると、白痴ばかしそうに押えて放さず、手を上げて、婦人おんなの胸をおさえようとした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僧都が(いや、わしの行く先は、ここではない)と、云うと、その男が声を荒らげて(命はしくないのか。そのきぬいで、どこへでも勝手に行け)
大力物語 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
成経 わしは他人のしみのかかった獲物をほしいとは思わない。(俊寛の前に小鳥をたたきつける)持ってゆけ!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それからている我が子に名残なごりをしみつつ「いしくば訪ね来てみよ和泉いずみなる———」と障子へ記すあの歌。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ぷんの休憩時間がしいくらいに早くたってしまう。ありがたいのは雨の日の昼休みだ。天下晴れて語りあう。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「もっとくれ! のこすのはしい、おれが一でいただいちまおうよ。」といいながら、とうとう一人ひとりで、みんなべてしまって、ほね食卓テーブルしたげました。
又人に物をれと云った事が一度も無いから付けた名前で、慈善小僧というのは、この小僧が貰った物の余りを決してめず他のあわれな者にもなく呉れてしま
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
起居ききょ振舞ふるまいのお転婆てんばなりしは言うまでもなく、修業中は髪をいとまだにしき心地ここちせられて、一向ひたぶるに書を読む事を好みければ、十六歳までは髪をりて前部を左右に分け
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
しいところで、またこの次にしなくてはならない。戦争は、明日あすにならなければ始まりません。
キャラコさん:08 月光曲 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ただに氏のわたくしめにしむのみならず、士人社会風教ふうきょうめに深く悲しむべきところのものなり。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
湖畔の学生生活が空気のように身について来ると、習慣的な朝夕のしの間に、しんしんとして、寂しいもの、しまれるもの、痛むものが心臓をつかみ絞るのであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ふなやたなごは迷惑めいわくな、るほどにるほどに、夕日ゆふひ西にしちてもかへるがしく、其子そのこのこくおさかなつて、よろこかほたいとでもおもふたので御座ござりましよ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蝶子の肚はそろそろ、三度目のヤトナを考えていた。ある日、二階の窓から表の人通りを眺めていると、それが皆客に見えて、商売をしていないことがいかにもしかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「そんなものはしくもないけれど、いったいおまえは何者だ」とおたしなめになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
棒砂糖少し持てきたりしが、煮物に使つかわんことしければ、無しと答えぬ。茄子なす胡豆いんげんなど醤油のみにて煮て来ぬ。鰹節かつおぶしなど加えぬ味頗むまし。酒は麹味を脱せねどこれも旨し。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
亭「へい良いお鑑定めきゝいらっしゃいまするな、恐入りました、おおせの通り私共わたくしども仲間の者も天正助定てんしょうすけさだであろうとの評判でございますが、しい事には何分無銘むめいにて残念でございます」
小布こぎぬの意味であります。一つは南部地方のもので「菱刺ひしざし」と呼びます。「こぎん」の方はもうほとんど絶えましたが、近頃それをしんで再び立ち直ろうと試みられております。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
当人の心事しんじ如何いかんは知るによしなしとするも、るにてもしむべきは勝氏の晩節ばんせつなり。
今日とりてはしき事をしましたと談次だんじ、先生にわかにたちえんの方にいでらる。
されど翁はもはやこれをしとも思わざりき。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
つまり離別りべつしむ記念にするのであろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
知りなばしき銭をすてむや
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
といってしんだ。
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
そしてしげもなく、それをアネモネのはなといわず、といわず、あたまからふりかけました。はなは、どんなにびっくりしたことでしょう。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなほんとうにわかれがしそうで、その顔いろも少し青ざめて見えました。ジョバンニはあぶなく声をあげてき出そうとしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ここのうちは、いか銀よりも鄭寧ていねいで、親切で、しかも上品だが、しい事に食い物がまずい。昨日も芋、一昨日おとといも芋で今夜も芋だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
大人おとなたちは、あまり時間じかんがないし、もうみんなじゅうぶんわかれをしんだのだから、鐘供養かねくようはしなくてもいいだろう、といった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
捜査本部においても、それはたいへん遺憾なことであった。せっかく屋上に追いつめた痣蟹を逃がしてしまったことはしかった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何のもなく七堂伽藍がらんの善美や九百余坊の繁昌仏国ぶっこくをすてて、北へ北へ、たましいのを求めて、孤影を旅の風にまかせて歩いた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しんだりうらやましがる同僚どうりょうもいたが、とくに引きとめようとしないのは、大石先生のことがなんとなく目立ち、問題になってもいたからだ。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
きましょ。透通いて見えん事は無けれどもよ……障子越は目に雲霧じゃ、のぞくにはっきりとよう見えんがいの。)
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
有王 私の尊いご主人様、私はあなたのために命をしみませぬ。幼い時からあなたに受けたご恩を思えば、私はよろこんであなたのために死にまする。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)