)” の例文
「無断でへやへ踏みこむのみか、いきなり縄をかけて、武士らしくとは、何たる暴言。この郁次郎にはせませぬ、理由をっしゃい」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほんに、そうっしゃれば秋らしい晩でございますこと。けれどわたくし、こう云う晩は淋しゅうて滅入めいるような気がいたします」
『わざわざ遠方とおくからあまたの軍兵つわものひきいて御出征おいでになられるようなことはありませぬ……。』橘姫たちばなひめはそうっしゃってられました。
須利耶さまがお従弟さまにっしゃるには、お前もさようななぐさみの殺生せっしょうを、もういい加減かげんやめたらどうだと、うでございました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あなたがいくら巧者なことをっしゃっても駄目ですわ、この噴水には水の仙女ニンフが一人も現れていませんわ」
噴水物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「ずるい! っしゃいな。」と、下から見上げる姉の眼に、かち合うと、すぐあらぬ方に、視線をそらして
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
如何いかなる件でありまするか、御遠慮なくつしやつて下ださい」篠田は火箸ひばしもて灰かきならしつゝあり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
それで、根本の公娼廃止と云ふ問題はあなたのつしやるやうな正当な理由から肯定の出来る事ですが、私は矯風会の人達の云ひ分に対しては矢張り軽蔑します。
青山菊栄様へ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
アノ時阿父おとっさんは何故なぜ坊主にするとっしゃったか合点がてんが行かぬが、今御存命ごぞんめいなればお前は寺の坊様ぼうさまになってるはずじゃと、何かの話のはしには母がう申して居ましたが
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
日出雄ひでをや、おまへいまこの災難さいなんつても、ネープルスで袂別わかれとき父君おとつさんつしやつたお言葉ことばわすれはしますまいねえ。』とへば、日出雄少年ひでをせうねん此時このとき凛乎りんこたるかほ
「わたくしなぞには歌のことなんか分りっこはございませんが、そうっしゃられれば、好い歌は好いと思われますね。」老刀自はしかたがなさそうに合槌あいづちを打つのである。
かつて紀介様はいつか何かのまぎれに、ふいにおせになったことがございました。
玉章 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「まあ、まあ、そんなにっしゃらないで、どうかお先へ。」とチチコフが言った。
よこしてくれた時は、皆大騒ぎよのい。吉田屋の姉さま、おりつ小母さままで来てて、『あれ、これが捨様かなし、そいったってもまあ、こんなに大きく成らっせいたかなし』なんてそうッせて……
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
先生が庭の離れから画を持って来いとおせになりましたので。
そして、何という不人情な事をっしゃるだろうと思います
婦人改造の基礎的考察 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
それであたしもっぱら案内役をうけたまわったんで、何か御覧になりたいものはって云ったら、阪神間の代表的な奥さんに会わせろってっしゃるの
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(おっかさんねむられないよう。)とっしゃりまする、須利耶すりやおくさまは立って行ってしずかに頭をでておやりなさいました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ナニ人間にんげん世界せかいにも近頃ちかごろ電話でんわだの、ラヂオだのという、重宝ちょうほう機械きかい発明はつめいされたとっしゃるか……それはたいへん結構けっこうなことでございます。
『……おっさん、折角せっかくですが、何度っしゃっても、環を家へ入れるなどという事は、許されるものではありません。もう、云わないでください』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何でもむかし東海道でよくお目にかかった作楽井の息子と言えばお判りでしょうとっしゃいますが」
東海道五十三次 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
吉野さんの方はどうかと聞けば、ヤレわたしが貧乏人のむすめであつても貰ひたいとつしやるのでせうかの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「道世様が、こうっしゃいました。この若者は、遠い田舎から都へ出て来て、親類もない者に違いない。傷が癒れば、家来にして使うてやろうと、仰っしゃいました。」
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
勿論もちろんきみ御决心ごけつしんで、運命うんめいまつたてんまかせて、ふたゝ小端艇せうたんていで、印度洋インドやうなみえて、本國ほんごくへおかへりにならうとつしやれば、仕方しかたがありませんが、わたくしけつして、其樣そん無法むほふことのぞみません
「あの浜田さんとっしゃるお方や、それから外のお方たちも、お一人でお越しになった事がございましたかと存じますが、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かりの童子とっしゃるのは。」老人は食器しょっきをしまい、かがんでいずみの水をすくい、きれいに口をそそいでからまた云いました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
『たった一しかいません……。おじいさんが、あまりってはけないとっしゃいますから……。わたしそんなにいたくもない……。』
と、お笑いになりながら、康清へ大杯をやれ、とっしゃる。満座も笑った。笑いがやむと康清はいま聞いた読人不知しらずの歌をいい声で朗詠しだした。
井上の奥様がサウぢやない、是れ/\の話でツて、私なぞには解からぬ何かむづしいことつしやいましてネ、其れでモウ内相談がまつて、来月三日の教会の廿五年の御祝が済むと
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
夫人おくさん! 先刻せんこく貴女あなた左樣さうつしやいましたねえ。わたくし眞個ほんたうに、此世このよでまた貴女あなたにおにかゝらうとはおもまうけませんでした、じつ不思議ふしぎですよ、一體いつたいあのとき如何どうして御助命おたすかりになりました。
「浜さん、黙っていないで何かっしゃいよ。———あの、綺羅子さんは何ですか、いつから浜さんとお友達におなりになって?」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いまは会うこと成らぬが、が隠居でもした後には、ゆるゆる会ってつかわそう——と、かように惣左衛門どのへっしゃったことがおありだそうで」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、さうっしゃってはあんまりでございます。それでお名前を何と云はれましたでございませうか。」
月夜のけだもの (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「はあ、その時はお二人ぎりで、今日はホテルに昼間のダンスがあるからとっしゃって、お出かけになったんでございますが、………」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
もちかえて、出仕しようとっしゃった父上のお気もちを、わたくしとて忘れません。……それに、わがのうちも、なんだかこのごろは、明るくなったし
で私のおたずね致したいことはパンフレットにもありました通り動物がかあいそうだからたべないとあなた方はっしゃるが動物というものは一種の器械です。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「じゃあ、………もしか先にお帰りになったら、十一時に迎えに出ているようにっしゃって下さらない? 電話をかけるつもりだけれど」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さあっしゃい、見つけましたよ。この月の扇の持ち主はだれですか。——と責めたのである。
「どうだらう。お客さまはこの通りの型でいゝとっしゃるが、君たちの意見はどうだい。」
毒蛾 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
お師匠様は鶯や雲雀の方がお前より忠義者だとっしゃるが忠義なのも無理がない、私等よりも鳥の方がずっと大事にされていると云った
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「どうしてそんなことを、っしゃるのです。あなたはまだまだお若いではありませんか。」
マリヴロンと少女 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「その……何とっしゃいましたッけ、桐代さんでしたか、千坂様のお嬢様は」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから三四年になるとっしゃっていらっしゃいましたが、と云うので、幸子は成る程そんなこともあったのを思い出した。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何もっしゃったんではございませんがちょっとしたらご存知かと思ひましたので。」
土神と狐 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「いえ、っしゃったのは、ご幕下ばっかのお方で……。すると、おん大将の新田殿は、それを聞いて橋の途中からお戻りになり、たいそうご機嫌のわるいお声で、お侍たちを叱ッておいでられました」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何にしても中姉なかあんちゃんに一遍様子を見に来て貰いたい、と、雪子とうさんはっしゃっていらっしゃいます、と云うのであった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「何もっしゃったんではございませんがちょっとしたらご存知かと思いましたので。」
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
待ちわびていた養父ちちからの返事である。返書が来たところをみると、若い二人を迎える使いはよこさないものとみえる。養父はどう考えているのだろうか、どう処置をせよとっしゃるのだろうか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうっしゃるのも一往はきこえておりますけれども、まえ/\から家来どもがじぶんをばかにするというひがみをもっていらっしゃるところへ
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いやいや、そのご謙遜けんそんは恐れ入ります。早速竜巻たつまきに云いつけて天上にお送りいたしましょう。お帰りになりましたらあなたの王様に海蛇めがよろしく申し上げたとっしゃって下さい。」
双子の星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)