二月も末のことである。春が近づいたとはいいながらまだ寒いには寒い。老年になった鶴見には寒さは何よりも体にこたえる。湘南の地と呼ばれているものの、静岡で戦災に遭って、辛い思いをして、去年の秋やっとこの鎌倉へ移って来たばかりか、静岡地方と比べれ …
| 著者 | 蒲原有明 |
| ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
| 原題 | 黙子覚書 |
| 初出 | 「藝林間歩」1946(昭和21)年6月~1947(昭和22)年5月 |
| 文字種別 | 新字新仮名 |
| 読書目安時間 | 約3時間29分(500文字/分) |
| 朗読目安時間 | 約5時間48分(300文字/分) |