)” の例文
始めは木の間をめた霧の間から、時折八ヶ岳の頂上が望まれたが、下るに従って霧は大粒となり、梢から露が雨のようにちて来る。
夕方からち出した雪が暖地にはめずらしくしんしんと降って、もう宵の口では無い今もまだぎわにはなりながらはらはらと降っている。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それが村で持余された重右衛門の亡骸なきがらを焼く烟かと思ふと、自分は無限の悲感に打れて、殆ど涙もつるばかりに同情をそゝがずには居られなかつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
外に立てば、銀河は天に横たわり、露はちて、旌旗せいきうごかず、更けるほどに、じゃくさらに寂を加えてゆく。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身は学舎にあり、中宵枕を排して、燈をりて亡友の為に哀詞を綴る。筆動くこと極めて遅く、涕つること甚だ多し。相距あひへだゝること二十余日、天と地の間に於てこの距離は幾何いくばくぞ。
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ちたる影や紀念かたみ花小草はなをぐさ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
病みてはつるなみだのみ
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あるひつゆこぼ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
見れば男は露一厘身動きなさず無言にて思案のこうべ重くれ、ぽろりぽろりと膝の上に散らす涙珠なみだちて声あり。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
空は瑠璃色に冴えて、仰ぐ梢からは露がちて来る。崖(麹岩の名がある)からのり出した日蔭つつじの黄花が、薄暗い木蔭にほんのりと暖い色を浮べる。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その手の指の先にても、これこの露にさはるなら、たちまちちて消えますぞえ。
北村透谷詩集 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
舌よりも真実を語る涙をば溢らす眼に、返辞せぬ夫の方を気遣ひて、見れば男は露一厘身動きなさず無言にて思案の頭重くれ、ぽろり/\と膝の上に散らす涙珠なみだちて声あり。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)