“断”のいろいろな読み方と例文
旧字:斷
読み方割合
き28.6%
た26.1%
ことわ24.8%
ちぎ5.2%
だん3.6%
ぎ2.5%
こと2.1%
キ1.0%
ことは1.0%
たた1.0%
ことわり0.8%
あきら0.4%
きれ0.4%
しきり0.4%
たっ0.4%
たゝ0.4%
タ0.4%
ことわっ0.2%
ことはり0.2%
たち0.2%
だち0.2%
とど0.2%
シ0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
いうまでもなく、上野介の夫人は、上杉家の当主綱憲(つなのり)の母にあたる——吉良家と上杉、これは、断(き)っても断れない関係のものである。
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
早く俗縁を断(た)つて、過去の繁華を夢に見つゝ心地よく衰頽の平和に眠つて行く此の長崎に来い………と諭(さと)してくれるやうにも思はれた。
海洋の旅 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
断(ことわ)るのもめんどうと思(おも)って、手(て)ににぎっていた財布(さいふ)を、急(きゅう)にむしろの下(した)に隠(かく)して、目(め)をつぶって眠(ねむ)ったふりをしていたのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
時遷(うつ)るにつれて黄蝋の火は次第に炭(すみ)の気(け)におかされて暗うなり、燭涙(しょくるい)ながくしたたりて、床(ゆか)の上には断(ちぎ)れたる紗(うすぎぬ)、落ちたるはな片(びら)あり。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
断(だん)じて、僕はいう。君の姉さんの病気はきっと僕がなおして見せる。そのかわり、昨日僕がいったことは、一時忘れていてくれたまえ。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
目で見る現在の景色と断(き)れ断(ぎ)れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に向って縮むにつれ、由子の心の中で統一した。
毛の指環 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
広田先生は其話(そのはなし)をした時に、笑ひながら、尤も是は私(わたし)の説(せつ)ぢやないよと断(こと)わられた。成程三四郎にも何処(どこ)が名文だか能(よ)く解(わか)らない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
島の東岸、箱崎・筒城(キ)の磯には、黒い岩と、灌木の青葉と、風に断(キ)れ/\になつて、木の間に動く日の光りとが、既に、夕陽(ユフカゲ)を催してゐた。
雪の島:熊本利平氏に寄す (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
「怪しからんぢやないか、断(ことは)りもなしに他人の小屋に這入り込んで吾もの顔で威張り散らすとは何たる事だ。さつさつと出て行つて呉れ。」
船の中の鼠 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
が、左の手は、ぶらんと落ちて、草摺(くさずり)の断(たた)れたような襤褸(ぼろ)の袖の中に、肩から、ぐなりとそげている。これにこそ、わけがあろう。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうですか、皆様(みなさん)にもうかねてお断(ことわり)がしてあるんだのに、何かこういう御心配をなさるから困るよ、ああ、とかく御婦人方は、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの一番手近な方法を、残り惜し気に断(あきら)める事になってしまう。けれども、あの玉幡に、重量と膨脹とを与えたとしたらどうなるだろう
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
妙源 ——血でひたひたになった本堂の隅へ、悪魚の泳ぐように這いつくばって、とかげのような舌の断(きれ)を抓(むし)りながら、「執念が何だ、邪婬の外道が何の法力に叶うかい」
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
暗い燈火(あかり)の下に蒐(あつ)まっている瑠璃子と女中達を、もっと脅かすように、風は空を狂い廻り、波は断(しきり)なしに岸を噛(か)んで殺到した。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
然し止めてみたところで別に金の工面の出来るでもなし、さりとて断然母に謝絶することは妻(さい)の断(たっ)て止めるところでもあるし。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
我が彼女と相見し第一回の会合に於て、我霊魂は其半部を失ひて彼女の中(うち)に入り、彼女の霊魂の半部は断(たゝ)れて我中(うち)に入り、我は彼女の半部と我が半部とを有し
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
月ハ天南ヲ断(タ)チテ、雁(カリ)ノ飛ブ無シ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その仕事をして居るのを政府が誉めると云うなら、先(ま)ず隣の豆腐屋から誉めて貰(もら)わなければならぬ、ソンな事は一切(いっさい)止(よ)しなさいと云(いっ)て断(ことわっ)たことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
主人(あるじ)の留守に断(ことはり)なしの外出、これを咎(とが)められるとも申訳の詞は有るまじ、少し時刻は遅れたれど車ならばつひ一ト飛(とび)、話しは重ねて聞きに行かう
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いや、断(たち)ものです。」
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
処が六月月初(つきはじ)まりになりますと、角右衞門は風の心持から病が重(かさな)りて、どっと床に就きましたゆえ、孝行な多助は心配いたし、神仏(かみほとけ)に願をかけ、精進火の物断(だち)で跣足参(はだしまい)りを致しまするが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『人死亡(みまか)る時に、若くは経(わな)きて自ら殉(したが)ひ、或は絞きて殉はしめ、及び強(あなが)ちに亡(ゆき)し人の馬を殉へるが如き旧俗は、皆悉く断(とど)めよ』
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
「思はぬを思ふと言はゞ、真鳥栖む雲梯(ウナテ)の杜(モリ)の神し断(シ)るらむ」(万葉集巻十二、三一〇〇)とあるのなども一つで、神罰を附けて語の偽りなきを証するのは、やはり古意ではなかつた。