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断
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き
ふりがな文庫
“
断
(
き
)” の例文
旧字:
斷
いうまでもなく、上野介の夫人は、上杉家の当主
綱憲
(
つなのり
)
の母にあたる——吉良家と上杉、これは、
断
(
き
)
っても断れない関係のものである。
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
目で見る現在の景色と
断
(
き
)
れ
断
(
ぎ
)
れな過去の印象のジグザグが、すーっとレンズが過去に向って縮むにつれ、由子の心の中で統一した。
毛の指環
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
罵声
(
ばせい
)
が子路に向って飛び、無数の石や棒が子路の
身体
(
からだ
)
に当った。敵の
戟
(
ほこ
)
の
尖端
(
さき
)
が
頬
(
ほお
)
を
掠
(
かす
)
めた。
纓
(
えい
)
(冠の
紐
(
ひも
)
)が
断
(
き
)
れて、冠が落ちかかる。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
と云ったかと思うと電話は
断
(
き
)
れてしまった。主人は病気の模様を聞きたいと思ったが、電話が
断
(
き
)
れたので残念でたまらなかった。
長崎の電話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
生花の日は花や実をつけた
灌木
(
かんぼく
)
の枝で家の中が
繁
(
しげ
)
った。縫台の上の竹筒に挿した枝に
対
(
むか
)
い、それを
断
(
き
)
り落す
木鋏
(
きばさみ
)
の鳴る音が一日していた。
洋灯
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
▼ もっと見る
夕方から
零
(
お
)
ち出した雪が暖地には
稀
(
めず
)
らしくしんしんと降って、もう宵の口では無い今もまだ
断
(
き
)
れ
際
(
ぎわ
)
にはなりながらはらはらと降っている。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そこで出発しようとしていると
断
(
き
)
れていた雲がまた合って、また大雨になった。王成は仕方なしにまた一晩泊って翌日出発した。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
要求された量の小麦粒で、海と陸とをよせた大地球全体を、指の深さにちつとも
断
(
き
)
れ間のないやうに覆ふてしまふ事が出来る程なのです。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
立ち
断
(
き
)
るように吉良兵曹長はさけんだ。獣のさけぶような声であった。
硝子玉
(
ガラスだま
)
のように気味悪く光る瞳を、真正面に私に
据
(
す
)
えた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
東洋人独特の
淑
(
しと
)
やかさはあり、それに髪は
断
(
き
)
ってはいなかったが、シイカの面影にはどこかそのクララに似たところがあった。
橋
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
今まで何ともなかった蜘蛛の糸が、急に犍陀多のぶら下っている所から、ぷつりと音を立てて
断
(
き
)
れました。ですから犍陀多もたまりません。
蜘蛛の糸
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
だが、筋々が
断
(
き
)
れるほどの痛みを感じた。骨の筋々が、挫けるやうな疼きを覚えた。——さうして尚、ぢつとぢつとして居る。
射干玉
(
ぬばたま
)
の闇。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
と、
地面
(
じべた
)
に
匐
(
のたく
)
つた太い木根に
躓
(
つまづ
)
いて、其
機会
(
はずみ
)
にまだ新しい下駄の鼻緒が、フツリと
断
(
き
)
れた。チヨツと
舌鼓
(
したうち
)
して
蹲踞
(
しやが
)
んだが、
幻想
(
まぼろし
)
は
迹
(
あと
)
もなし。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
やはり思い
断
(
き
)
ることの出来ない様子や、そのまた叔父に、父親が次ぎ次ぎに金を出し出ししてもらってる事情が、お庄にも見え透いていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
母の、恐ろしい呻り声が美奈子の魂を
戦
(
をのゝ
)
かしたが、母の呻き声を聴いた途端に、悪夢は
断
(
き
)
れた。が、不思議に呻き声のみは、尚続いてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
これっきり女を
綺麗
(
きれい
)
さっぱりと思い
断
(
き
)
ってしまおうか、そうすると、この心の悩ましさを解脱することが出来て、どんなに胸が透くであろう。
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
黙然
(
もくねん
)
と聞く武男は
断
(
き
)
れよとばかり下くちびるをかみつ。たちまち
勃然
(
ぼつねん
)
と立ち上がって、病妻にもたらし帰りし
貯林檎
(
かこいりんご
)
の
籠
(
かご
)
をみじんに踏み砕き
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
丁度筋肉と骨の間に、煮滾つた熱湯を流し込まれるやうな感じで、ひどい時には痛む腕を
根本
(
ねもと
)
から
断
(
き
)
り
除
(
と
)
つてしまつたらどんなによからうと思ふ。
烙印をおされて
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
平
(
たいら
)
な沙地が、地平線の遠くにまで接している。南の方と思われた。雲の
裾
(
すそ
)
が明るく
断
(
き
)
れて、上は濃い墨を流したように厚みのある黒い線を
引
(
ひい
)
ている。
薔薇と巫女
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
急所を
殺
(
や
)
られてそのままこと
断
(
き
)
れた由蔵の
屍骸
(
しがい
)
を見捨てて、樫田武平は怖ろしい迄緊張した気持で変装に取かかった。
電気風呂の怪死事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「それに
想
(
おもい
)
を懸けるは宜く無い宜く無いと思いながら、因果とまた思い
断
(
き
)
る事が出来ない。この頃じゃ夢にまで見る」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
ごらんそら、氷河ね、氷河が海にはいるねえ、あれで少しずつ
押
(
お
)
されてだんだん
喰
(
は
)
み出してるんだよ、そしてとうとう氷河から
断
(
き
)
れて氷山にならあね。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
……ツイ今しがた
仕繰夫
(
しくり
)
(坑内の大工)の源次を載せて、眼の前の
斜坑口
(
しゃこうぐち
)
を上って行った六時の交代前の
炭車
(
トロッコ
)
が
索条
(
ロープ
)
でも
断
(
き
)
れて
逆行
(
ひっかえ
)
して来はせんか……。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
昨日の午後起重機のチェーンが
断
(
き
)
れて二人の人足が鉄板の下にまる
潰
(
つぶ
)
れになつて死んだ其の跡を見ながら行つた。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
小虎の鋭い叫びと殆ど同時に、
巌畳
(
がんじょう
)
に
綯
(
な
)
ってある藤蔓縄が、ぷつりと
断
(
き
)
れた。小虎は水音凄まじく新利根の堀割に落ちた。竜次郎の驚きは絶頂に達した。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
外道の口の間から、女の髪が
溢
(
こぼ
)
れて落ちる。やあ、胸へ、乳へ、
牙
(
きば
)
が喰入る。ええ、油断した。……骨も筋も
断
(
き
)
れような。ああ、手を
悶
(
もだ
)
える、
裳
(
もすそ
)
を
煽
(
あお
)
る。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ふたりは
前檣
(
ぜんしょう
)
の下へきて、その
破損
(
はそん
)
の
個所
(
かしょ
)
をあらためてみると、帆は上方のなわが
断
(
き
)
れているが、下のほうだけがさいわいに、
帆桁
(
ほげた
)
にむすびついてあった。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
その尾に
夥
(
おびただ
)
しく節あり、驚く時非常な力で尾肉を固く縮める故ちょっと
触
(
さわ
)
れば二、三片に
断
(
き
)
れながら
跳
(
おど
)
り廻る。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
それで、百合子は電話を
断
(
き
)
つた。——と彼女は、次の部屋でまごまごしてゐる滝本の傍らを、パジヤマの袖で顔を覆ふようにして、眼も呉れずに駆け抜けた。
南風譜
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
この
女
(
ひと
)
は、どっか大きな
家
(
とこ
)
の娘で、病気——ばかのようなので、髪を
断
(
き
)
らして遊ばせてあるのだろう、だから、あんなに
無作法
(
ぶさほう
)
なのだと——そう思えたほど
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
お父さんはちょっと歎息するように私の顔を見て言葉を
断
(
き
)
った。私はお嬢さんの方を眼で指しながら訊いた。
妖影
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
三「
何
(
なん
)
たる因果でお累は彼様な悪党の不人情な奴を思い
断
(
き
)
れないというのは何かの
業
(
ごう
)
だ、よ、覗いて見なよ」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
じぶんの体を支へた、天の糸の一本が
断
(
き
)
れて、傾いた柱時計の振子のやうに、体重は、歪んでゐるらしい。
独楽
(新字旧仮名)
/
高祖保
(著)
筆にも口にも説き尽すべからざる理想の妙趣は、
輪扁
(
りんぺん
)
の木を
断
(
き
)
るがごとくついに他に教うべからずといえども、一棒の下に
頓悟
(
とんご
)
せしむるの工夫なきにしもあらず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
漢文で習った「売柑者之言」の中に書いてあった「鼻を
撲
(
う
)
つ」という言葉が
断
(
き
)
れぎれに浮かんで来る。
檸檬
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
絶えなば絶えね、
断
(
き
)
れば断れよ、今はつれなき人の果てを見るべき命にもあらねば、我が身の果てをその人に見するをせめての慰めにと、慰めがたき日を過ごししに。
葛のうら葉
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
第一、電線がこのあたりでめちや/\に空間を
断
(
き
)
つてゐるので、こんなきれいな空のときはよけいにいやであつた。店も、このへんは下品である。なんとなく下品である。
四人
(新字旧仮名)
/
芥川多加志
(著)
と思うと眼が
霞
(
かす
)
んで何にも見えなくなって、今までにお鶴がささやいた
断
(
き
)
れ
断
(
ぎ
)
れの言葉や
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
何故か髪を
断
(
き
)
りて男の姿を学び、
白金巾
(
しろかなきん
)
の
兵児帯
(
へこおび
)
太く巻きつけて、
一見
(
いっけん
)
田舎の百姓息子の如く
扮装
(
いでた
)
ちたるが、重井を頼りて上京し、是非とも
景山
(
かげやま
)
の弟子にならんとの願いなれば
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そのうちに
断
(
き
)
れ
断
(
ぎ
)
れの雲間から、薄日がさし出した。三人は、神奈川の茶店で、朝食を食べて、着物を乾すことにした。鰊、
蒟蒻
(
こんにゃく
)
、味噌汁、焼豆腐で、一人前十八文ずつであった。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
鋭い、
断
(
き
)
れ
断
(
ぎ
)
れな
百舌鳥
(
もず
)
の声が背戸口で
喧
(
かしま
)
しい。しみじみと秋の気がする。ああ可憐なる君よ、(可憐という字を許せ)淋しき思索の路を二人肩を並べて勇ましく
辿
(
たど
)
ろうではないか。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
遥か野末から弦の
断
(
き
)
れたような物音が何ごとかを暗示し、そのまま何の解決もなしに永遠の流れに
融
(
と
)
けて入る——といったことを、彼は何も戯曲の中だけでやったのではないのである。
チェーホフの短篇に就いて
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
蘆葦茅草
(
ろいぼうそう
)
が枯れ枯れに
叢
(
くさむら
)
をなしているところ、それが全く
断
(
き
)
れて石ころの
堆
(
うずたか
)
いところ、その間を、
茸狩
(
きのこがり
)
か、潮干狩でもするような気分で、うかうかと屈伸しながら歩んで行くと、当然
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「まだそのときのわたくしは、きしゃな細火を背骨にし、べよべよ
撓
(
しな
)
るほどの溶岩を一重の肋骨として周りに持ち、島山の中央の
断
(
き
)
れ目から島地の上へ平たく膨れ上っただけの山でした」
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そして思想の
断
(
き
)
れ目毎に見える彼はもとのように静かで動かない。彼女はそのうちに異常な侮辱を感じて来た。そして
硬張
(
こわば
)
った神経の疲労のために泥のように寝入ってしまったのである。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
孟子は、母が夜もろくろく寝ずに織った、この尊い織物が、まだ完成をみないうちに
断
(
き
)
られたことを、こよなく悔いた。母にすまない気持ちが、年少の孟子の心を激しくゆすぶったのである。
孟母断機
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
湯村はこの日、朝ツから
癇
(
かん
)
が立つて、妹ばかり叱つて居た。
塩鰺
(
しほあぢ
)
の塩加減、座敷の掃除、
銅壺
(
どうこ
)
に湯を
断
(
き
)
らしたの、一々癪に触る。襦袢の洗濯を忘れて居たのでは、妹が泣出すほど叱り付けてやつた。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
それもぽつんと
断
(
き
)
れていて前後のつながりがまるでわからなかった。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
断腸草を食えば、はらわたが
断
(
き
)
れて死ぬということになっている。
中国怪奇小説集:15 池北偶談(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
広漠たる戦雲の所々の
断
(
き
)
れ目からその姿が見られた。
甲冑
(
かっちゅう
)
と叫喚と剣との交錯、大砲とラッパの響きのうちに馬背のすさまじい跳躍、整然たる恐るべき
騒擾
(
そうじょう
)
、その上に多頭蛇の
鱗
(
うろこ
)
のごとき彼等の胸甲。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
断
常用漢字
小5
部首:⽄
11画
“断”を含む語句
間断
切断
断念
独断
断片
引断
断崖
断然
断絶
断頭台
寸断
裁断
遮断
不断
言語道断
截断
途断
断々
診断
断定
...