ことわり)” の例文
旧字:
「そうですか、皆様みなさんにもうかねておことわりがしてあるんだのに、何かこういう御心配をなさるから困るよ、ああ、とかく御婦人方は、」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな風に、ことわりなしで外出したためしは三吉に無いことであった。直樹は山の上で一夜を明す積りで出掛けたので、無論夕飯には帰らず、夫婦ぎりで互に黙ったまま食卓にむかって食った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
開いて見ると、約束通りいっしょに帰るつもりでいたが、少し事情があって先へ立たなければならない事になったからと云うことわりを述べた末に、いずれ京都でゆっくり会おうと書いてあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どちらとも彼奴あいつの返事をお聞き下さい。あるいは、自分、妙を欲しいではないが、ほかなら知らず河野へはっちゃ不可いかん、と云えば、私もおことわりだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はばかんながら大橋からこっちの床屋はな、山の手の新店だっても田舎の渡職人わたりじょくにん附合つきええはしねえんだ、おともだち、お気の毒だが附合はこっちでおことわりだ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)