“こと”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:コト
語句割合
35.5%
18.4%
13.8%
11.1%
4.9%
3.6%
1.8%
糊塗1.8%
事件1.6%
1.0%
(他:83)6.5%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
例の晩酌ばんしゃくの時と言うとはじまって、貴下あなたことほか弱らせられたね。あれを一つりやしょう。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その子供のおもざしは母親によく似ていて、ことに眼付なぞは節子にそっくりで、幼い遊び友達と二人で写真にれていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ハハハハそうだろうと思った――しかしほんこと、泥棒は飛んだ災難でしたな。山の芋ばかり持ってたのですか」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
のくらゐなことが……なんの……小兒こどものうち歌留多かるたりにつたとおもへば――」
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
渋江保さんのことに従へば、清川〓に二子があつて、兄を玄策徴げんさくちようと云ひ、弟を安策孫あんさくそんと云つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
自分じぶんのは合憎あいにうまことをトン/\拍子びやうしふやうな對手あひてでないから
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そもそも内行の不取締は法律上における破廉恥はれんちなどとは趣をことにして、直ちにとがむべき性質のものにあらず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これ既にゴンスやミジヨンの如き日本美術の研究者また旅行者の論ずるが如く、日本寺院の西洋とことなる所以ゆえんである。
甲樂人 成程なるほど御道理ごもっともでござります、したが、いま如何どうにかなる「こと」でござりませう。
「あのことの主さ。君が大いに見たがった娘さ。せっかく見せてやろうと思ったのに、下らない茶碗なんかいじくっているもんだから」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こと櫻木大佐さくらぎたいさは、春枝夫人はるえふじん令兄れいけいなる松島海軍大佐まつしまかいぐんたいさとは
いつもことだが、この晩餐ばんさんことわたくしためには愉快ゆくわいであつたよ。
「そうとも、こんなよい妻、遠慮などしたら、見損うた男と、犬千代はかえってさげすむぞよ。おことには、過ぎた女房ぞ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上杉家へは、べつに大坂表から、すぐ密使をやって、おことらへ、加担かたんするように申しておく。その辺も、心配すな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはんなが寄ってたかって、今まで糊塗ことして来た自分の弱点を、早く自白しろと間接に責めるように思えたからである。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして自分の交友関係というものについて、そのなかにふくまるる虚偽と自偽と糊塗こととの醜さを厭う心をしみじみと感ずる。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「ソレソレ。その日田金がドウヤラ今度の振袖娘胴切の事件こと発端おこりらしいケニ、世の中はどう持ってまわったものかわからん」
もっともいずれにせい、わしが思うたほどの事件ことでない、とだけは了解したのじゃけれども、医学士などは、出たら目じゃろう。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼓村師の、大きな体と、ひろびろしたほおをもつ顔に似合わない、小いさな眼が、ことの上に顔ごとつきだされた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
はじめのかたは大抵そらにも覚えをり候へば、読みゆくうれしさ、今日ここにて昔のことの師匠にひしと同じここちに候ひし。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
東京とことわる以上はもう少し奇麗にしそうなものだが、東京を知らないのか、金がないのか、滅法めっぽうきたない。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十時少し廻った頃、松本は菓子と御布施おふせを僧の前に並べて、もうよろしいから御引取下さいとことわった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それは三吉が姉と一緒に東京で暮した頃の事実ことで、ところどころ拾って読んで行くうちに、少年時代の記憶が浮びあがった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
信吾は心に、ういふ連想からか、かの「恋ざめ」にかかれてある事実こと――いなあれを書く時の作者の心持、否、あれを読んだ時の信吾自身の心持を思出してゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
事情ことをわけて頼まれてみれば、なおさら辛い立場であった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出来た事情ことは出来た事情ことである。
よもやまの話 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
「面目次第も無いことさ。三年ぜんだ、やっぱりこの土地で、鉄道往生をしそくなった、その時なんです。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
校長は一つ咳払ひして、さて器械的な改つた調子で、敬之進が退職のことを報告した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これは当地の中流以下の用うることばで字引にないような発音をするのみならず、前の言ばと後の言ばの句切りが分らないことほどさよう早く饒舌しゃべるのである。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから猴の話に必ず引かるる例の『今昔物語』巻の二十六、飛騨国猿神生贄を止むること第八に、猴神にせた生贄を供うれば、神怒りて作物もからず、人も病み郷も静かならず、因って生贄に供うべき人に何度ともなく物多く食わせ太らする習俗を載す。
勿體もつたいないことであつたれどらぬことなればゆるしてくだされ、まあ何時いつから此樣こんことして、よくそのよはさわりもしませぬか
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たつた今の先までも知らぬ他人の車夫くるまやさんとのみ思ふてゐましたに御存じないは当然あたりまへ勿体もつたいない事であつたれど知らぬ事なればゆるして下され、まあ何時いつからこんなことして
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「分りきったことを。いつまでおこと稚子ちごでいる気か」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに、老いてとな。山城もはや、ことし六十を迎えたが、まだまだ、老いた気はせぬ。おことらはちょうど、卵の殻を出たばかりの雛鳥ひなどりよ。はははは、男ざかりは、六十越えてじゃ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかし一言ことせりふ、一目のおもいれもて、萬人に幸福を與へしおん身なるを。
その後九年を経て病院のかのことありしまで、高峰はかの婦人のことにつきて、予にすら一言ことをも語らざりしかど、年齢においても、地位においても、高峰は室あらざるべからざる身なるにもかかわらず、家を納むる夫人なく、しかも渠は学生たりし時代より品行いっそう謹厳にてありしなり。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
午後四時に私は岡田と交代して改札口を出ると今朝大騒ぎのあった隧道のところにまた人が群立って何か事故ことありげに騒いでいる。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
と男は声を低うした。ここに事故ことありと聞きつけて、通行の人集ひとだかりをはばかって、さりげなく知合が立話でもするごとく装おうとしたらしい。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何かこう大きな事業ことをしそうな人だなんて、豊世なぞもよくそう言っています」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そりゃもう、皆さんの成さる事業ことですから、私が何を言おうでは有りませんが……何時まで待ったらけんが見えるというものでしょう。どうも吾夫やどの話ばかりでは私に安心が出来なくて……」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「主税こと解きましてござります」
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身代りが、――そのことで、やいの、の、殿、まだ「とりあげ」が出来ぬに因って、一つな、このあたりで、間に合わせに、ろう!……さて、どれにしょうぞ、と思うて見入って、ながまわいていたがやいの、のう、殿。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おいイワン、ちょっと見てくれ、俺の鼻ににきびができたようだが。」そう言っておきながら、さて肚の中では、【大変ことだぞ、もしやイワンが『いいえ、旦那様、にきびどころか、肝腎の鼻がありゃしませんや!』とでも言ったらどうしよう!】と思った。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
「師匠、凶死だからのう、おめえも諦めが悪かろうが、ものは考えよう一つだってことよ、まあ、それがお美野さんの定命だったと、思いなせえ。あんまり嘆いて、ひょっとお前が寝つきでもしようもんなら、姉妹ふたりで他に見る者のねえこの大鍋の身上は、それこそ大変ことだからのう。」
そうかと思うと悪戯好いたずらずきの社友は、余が辞退したのを承知の上で、ことさらに余を厭がらせるために、夏目文学博士殿と上書うわがきをした手紙を寄こした。
互を軽蔑した文字をてんとして六号活字に並べ立てたりなどして、ことさらに自分らが社会から軽蔑されるような地盤を固めつつ澄まし返っている有様ありさまである。
文芸委員は何をするか (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ピストルのたまは前額に深く這入っていたがまだこと切れてはいなかった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
この隠居が椽端えんばた近く歩み出て、今や掻堀を面白半分に騒ぎ立つ家来共を制して、もうもうそれには及びませぬ、ことの仔細はわしう知っていますと云うから
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だぼはぜ嬢は、相不変あいかわらずの心臓もので、ぼく達よりも一船前にホノルルを去った野球部のDさんやHさんに、生のパインアップルをやけに沢山たくさんことづけました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「いえ、花井さんを呼んでことづけて貰いました。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たゞわけもなく考想かんがへてうちにふとおもうかんだ一事ことがある。
上方者は自分の物だと言って他人の物を引入れましたかどは重罪でございますけれども格別のお慈悲を以て所払いを仰せ付けられまして其の一件ことは相済みましたが、深見新左衞門の奥方は、あゝ宗悦は憫然かわいそうな事をした
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
長持ながもちかつぎの人足にんそくにいたるまで、そつのないものが適当に割当てられ、旧幕時代の万事ことを知るものが
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これ、壁辰殿、拙者は、かほどまでに事理ことを別けて頼んでおるではないか――こういう用がある以上、いま直ぐ貴殿の繩にかかるという訳には参らぬが、その代り、何年、いや、何十年かの後、この十七人の十七人目、最後の一人を首にしたその日に、拙者のほうから必ず再びこの家へ参って、その時こそは逃げも隠れもせず、この両の手をうしろへ廻して、笑って貴殿の繩を受け申そう。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おなじ時代を歩んでいるのではあるが、まあ、なんと、今日いまから見れば、そんな些事ことを――といわれるほどの、何もかもの試練にさらされて来た人たちだろう――
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)