こと)” の例文
お秀の事はさて置いてと、このことを通信して明日の新聞に間に合うように直ぐ(じゃむこう)を走らせよう。深川夫人と名を載せます。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見そなはす如きわらわ容体ありさま、とても在命ながらえる身にしあらねば、臨終の際にただ一こと阿姐あねごに頼み置きたきことあり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
急に校長は椅子を離れて、用事ありげに立上つた。何事かと人々は聞耳を立てる。校長は一つ咳払ひして、さて器械的な改つた調子で、敬之進が退職のことを報告した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「——病気のことですよ、それからまた——おとうさんも久しく会わンからッてね」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
それほど名誉が大切なら、なぜあのことを見られた当座に、飛かかって秀を殺してその手を返して咽候のどを切って、御自害をなさらなかった。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「だって、あんまりじゃごわせんか。誰から聞きなすったか知りゃせんが、今更そんなことを持出して私を責めたって……」とお隅はさもさもはかないという目付で、深い歎息ためいきいて
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まづかれもときて、事の由来おこり白地あからさまに語り、このことを頼むにかじ
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
「面目次第も無いことさ。三年ぜんだ、やっぱりこの土地で、鉄道往生をしそくなった、その時なんです。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
郡視学が校長に与へた注意といふは、職員の監督、日々にち/\の教案の整理、黒板机腰掛などの器具の修繕、又は学生の間に流行する『トラホオム』の衛生法等、主に児童教育の形式に関したことであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
頼みといふはこのことのみ。頼む/\
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
==今朝のね、こと==というに到りて、小間使は直ちに呑込み、「何の奥様、誰が饒舌しゃべりますもんですか。」「ああ、そうだろうとは思うけれども、きっとかえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『実は——すこし御願ひしたいことが有まして。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)