こと)” の例文
「安土退去このかた、光秀の胸に怏々おうおうとしてれやらぬものあることを、おこととしたことが、察してはいなかったのか。——左馬介さまのすけ
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「死にがいも、生れがいもある時の潮が眼に見えて来た。おことらも、生命を惜しめ。ならば散り甲斐のある場所で枕をならべよう」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御主君には、何としても、お聞き入れはないのだ。道三様のみかお父上もまた、部屋住へやずみの分際で、おことらが知ったことではないと——」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いかにも、おことらのいうとおりな事実はある。しかし、それは貧燈の一僧をあわれむお方の布施ふせであるほかに何ものでもない」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
官兵衛、おこと胸算用むなざんようでは、いったい幾日をもって、どれほどな人員をもって成し得ると考えておるか。ひとつ成算せいさんを聞かしてもらいたいが
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こよいは秀吉がみずから彼の恨み多き義胆ぎたん忠魂に、一わんそなえてなぐさめてやろうと思う。おことらもそれにいて相伴しょうばんいたすがいい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おこと等、よい若人どもも、まさか草深い配所に、いもあわを喰ろうて、生涯流人の給仕をするために、佐殿に付いておるわけでもあるまいが」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「のう正季。わしの首一つに、丹後一郡の賞がかけられたとは、ほまれであるぞ。おことの首には何も賭けられていないそうな」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「身内の者どもが、柳の間で酒もりしておる。おことらも、打ち交じって、遊んでゆけ。筑前も相手になって遣わしたいが、風邪ゆえ早うやすむ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗業むねなりが、そちのために、書いたのか。……これほどの仮名かなの名手は、探してもそう数はない。よい師を持っていて、おことは、しあわせ者だ」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おことの軍勢は、直ちにここを陣払いして、国許へ帰れ。そして、丹後宮津一円の兵船を挙げて、越前の敵沿海をおびやかせ」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「社家へ見えた供の男の口うらが不審いぶかしいので、そっと物陰からおことの容子を見たところ、似ておいでるのに驚かされた」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかし貞盛。おことは、すでに先に、将門追討の官符を請うて、その令旨をたずさえて東国へ下っていたのではないか」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おお、よく訪ねて来た。正成もいちど会いとう思っていた。さるを無情つれない兄と恨んでくれるな。おことら夫婦を、この地におくことは相ならぬのだ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「秀長。こんどの四国攻めには、ひとつ、おことがわしの名代みょうだいをして渡ってみい。——秀次も、手伝え。秀長をたすけて」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「上杉家へは、べつに大坂表から、すぐ密使をやって、おことらへ、加担かたんするように申しておく。その辺も、心配すな」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうとも、こんなよい妻、遠慮などしたら、見損うた男と、犬千代はかえってさげすむぞよ。おことには、過ぎた女房ぞ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえその方の誠意を以てしても、御着一城の者が何としても固執こしつして動かぬ場合は……官兵衛、おことは何とする?
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「頼みというのは、おことたちが、京都へ行った折に、これを堀川の烏丸からすまる光広きょうのお手許まで届けてほしいのじゃが」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大儀大儀。筑前も、おことらが使いに来てくれて心が軽うなった。とかくひとに喧嘩をやらせてみたがる世間のものは、これでがっかり致したろうがの」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おこといて、誰がよくその任に当れよう。ただ筑前が案じていたのは、其方の生命だ。危険は充分にあるぞ」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……その年、ひとりの遺子わすれがたみは、生れてまだ五十余日と聞いていたが、さては、その折の嬰児あかごが、おことであったか
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おことら夫婦が、これへ来たのは、山田申楽の座に修行入りせんためとあるが、それもこう、六波羅者のさまたげでは、しょせん、願いはかなうまい。それよりは」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
身、武門にそだち、男として土岐源氏ときげんじの血をうけながら、やわか、信長ずれの駆使に身をかがめ、生涯を終ろうや。光春、おことには読めぬか、信長の腹ぐろさが
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(この筑前にも、時来って、ようやくほんとうのお勤めが与えられて来たようであるぞ。おことらも心せよや)
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ぜひもない、わしもほぞをかためよう。が、託磨、中村などをさとすあいだ、おことはやぐらの上へあがって、わしの合図を待て。合図を見てから敵を招き入れろ」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『お……。さき兵部権大夫時信ひょうぶのごんだゆうときのぶどのかな? ……。おこと、知らぬか』と、僧正はまた、供の舎人とねりにきく。
ただの使いや、飛脚の者の手に託しては、それゆえに、心もとないのじゃ。雨にもよごれぬよう、不浄なこともないように、おことたちが、大事にとどけてくれまいか
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こともはや二十歳ぞや。父君の御遺訓、よも忘れはあるまいの。朝廷への御奉公にかけて、兄たちに劣るまいぞ。留守は、おことが総大将、母は、どこまで家の母じゃ。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「立てっ、安政っ。——七右衛門もしっかりせいッ。おことら、へばるにはまだ早いぞ。——何のざま」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それはおことが謡ではない筈だぞ。わが君が何ぞというとよくお得意に謡い遊ばす敦盛あつもりの謡じゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おこと、きょうはよう話を聞きにござられたな。……したが、何でそう泣かれるのか、せぬが」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「沢庵坊。身の家臣、青木丹左衛門が、わしの指図も仰がず、おことに対して、この武蔵を捕えたら、その処分は、おてまえに任せるといったという話は——あれはまことかの」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただし、秀吉と思いを一つにするなれば、老職たるおことらが相結んで、三介様に迫り、お腹を召さすなり、髪をろさせ申すなれば、事は小さくすむ。兵も動かさずにすむ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうではない、役人どものうちにおことのようなのがいれば、ずいぶん助けておいて世のためになる人間もあろうが、しばるのを、吏務だと考えているやつばかりだから困る」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なにか、粗相いたしたか。その召使は、おことの国もとに近い、下総の良持の子じゃがの」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『おことら、これがさびしゅうないか。わしは、さびしい……よそばかりが、賑わしゅうて』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つわものたちの指揮、心がまえ、忠義一すじの鍛え、皆おことが軍配と徳にあること。きょうよりはなおなお、心しても。その身を、父君や兄達の亡き後の三世の忠義に備えておかれよ
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おことらは、なぜ痩せるかとおもっていたが、あまり心を労しすぎるせいだったの。食はたのしんで喰べねば意味がない。食はすべて天禄だ。よも碗の中にまで北条は居るまい」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安心せい、おことあたりの筆では、まず百年も世にあるまい。おまえが生きている間だけでもどうかな? ……よくしたものぞ、世は滔々とうとうと、無用の文字はちりに流して余しはせぬよ
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことらは、ただちに内侍所ないしどころ(三種ノ神器をおく所)へすすみ、つつしんで神璽しんじ御鏡みかがみなどを捧持ほうじして、早よう車のうちへうつしたてまつれ。……また公敏きんとし季房すえふさなんどは、供の用意を
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「かたじけないが後も大事だ。万一、毛利家に豹変あるときは、おことらの力につものが多い。ここの一塁は、毛利への抑えとして、筑前がたのみおくもの。呉々くれぐれ、抜からぬように」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、左様に首尾よく調ととのい終らば、おことらには、伊勢伊賀などの内で、関所の地を、それぞれ功としてつかわすであろう。……招いたのは、こういう内談じゃ、よく分別して答えい
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、世間眼せけんめというもので見ると——怒りなさるなよ……おことはもう男を知らぬ清女せいじょではない——清女でもない女を子等之館へ置くのは神地をけがすものだと——まアこういうのじゃな
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おことは、遠くの黄塵こうじんを、新手の参加と見たというが、それも違う」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『ちと、混み入った話があるのじゃ。おことは、彼方あっちへ行って居れ』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「真田どのの次男と申すことだが、おことは、ことし何歳になるか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「高氏、登子。ふたりとも今日は夜まで遊んでゆけ。高時もともに遊ぼう。おことらが見えたら、大いに祝うてやろうと、かねがね、道誉とも申しはかって、遊宴の支度なしてある。……夜までは帰さぬぞ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うるさいッ、おことらは、証人として立会うてくれれば済む。——わしらが二人討たれたら、骨は、宮本村へ送ってくだされよ。頼んでおくはそれだけじゃ。そのほかは、いらざる雑言、助太刀無用になされ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おことらは、さがって後も、口さがなく、騒ぎたてるな」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)