狐兎こと)” の例文
翁いふ。吾主わぬし遠くゆき給ひて後は、夏のころより干戈かんくわふるひ出でて、里人は所々にのがれ、わかき者どもは軍民いくさびとに召さるるほどに、一四一桑田さうでんにはかに狐兎ことくさむらとなる。
口約束だけで間に合わせて行く。しかも然諾ぜんだくを重んずる。子供の頃には羊にる。弓をひいて鳥を射る。青年になると馬に騎って、弓をひいて狐兎ことを射る。食い物といえば肉ばかりだ。
沙漠の美姫 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それさへ狐兎ことゆるに任せ草莱さうらいの埋むるに任せたる事、勿体なしとも悲しとも、申すも畏し憚りありと、心も忽ち掻き暗まされて、夢ともうつゝとも此処を何処とも今を何時とも分きがたくなり
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)