こと)” の例文
「なに、老いてとな。山城もはや、ことし六十を迎えたが、まだまだ、老いた気はせぬ。おことらはちょうど、卵の殻を出たばかりの雛鳥ひなどりよ。はははは、男ざかりは、六十越えてじゃ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遮那しゃなよ、おことも、はや十六とはなったぞよ。ことしは髪をおろさねばなるまい。出家は嫌いと云いおるそうじゃが、生れてより持って出た宿命、生い立ち、今の時勢など、もうわきまえがついたであろう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「分りきったことを。いつまでおこと稚子ちごでいる気か」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そなたにも、また家臣たちにも、そう心配かけてはすむまい。……今は何事もにんの一字が護符ごふよ。この九郎さえ忍びきればおことらの心も休まろう。——通せ、ここでよい。義経が仮病けびょうでないことも、景季の眼に見せてくりょう」
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)