甲戌の歳も押詰って、今日は一年のドンじりという極月の卅一日、電飾眩ゆい東京会館の大玄関から、一種慨然たる面持で立ち現われて来た一人の人物。鷲掴みにしたキャラコの手巾でやけに鼻面を引っこすり引っこすり、大幅に車寄の石段を踏み降りると、野暮な足 …
著者 | 久生十蘭 |
ジャンル | 文学 > 日本文学 > 小説 物語 |
初出 | 「新青年」博文館、1937(昭和12)年10月~1938(昭和13)年10月 |
文字種別 | 新字新仮名 |
読書目安時間 | 約9時間48分(500文字/分) |
朗読目安時間 | 約16時間20分(300文字/分) |