“正面”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
まとも57.3%
しやうめん16.0%
しょうめん9.2%
ファサード3.8%
ファサアド3.1%
まと2.3%
しようめん1.5%
まえ1.5%
まむき1.5%
しゃうめん0.8%
しら0.8%
せうめん0.8%
まおもて0.8%
むこう0.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
兩手を上げて後頭部をさゝへた脇の下から兩乳りやうちゝのふくらみが、ともしびの光を正面まともに受けて、柔い線をば浮立つばかり鮮かにさせて居る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
正面しやうめん待乳山まつちやま見渡みわた隅田川すみだがはには夕風ゆふかぜはらんだかけ船がしきりに動いてく。水のおもて黄昏たそがれるにつれてかもめの羽の色が際立きはだつて白く見える。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
見れば、正面しょうめん床几しょうぎに、だかさと、美しい威容いようをもった伊那丸いなまる、左右には、山県蔦之助やまがたつたのすけ咲耶子さくやこが、やや頭をさげてひかえている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、正面ファサードの方ばかしではない。闇をすかして眺めると、駅寄りの側面の方にも、裏手にも、さながら現象のように隠現する黒い無数の影がある。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
賭博場キャジノの建物は航空母艦のように平たく長かった。正面ファサアドに赤い満月が懸っていた。それは大型電気時計のように出来ていて、針が動いていた。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
石仏は正面まと向きおはし須臾しゆゆに見る空うつしけくはてなかりにし
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『や、寢※ねすぎたぞ。』といそ飛起とびおき、衣服ゐふくあらため、櫛髮くしけづりをはつて、急足いそぎあし食堂しよくどうると、壯麗さうれいなる食卓しよくたく正面しようめんにはふね規則きそくとしてれいのビールだる船長せんちやう威儀ゐぎたゞして着席ちやくせきし、それより左右さゆう兩側りやうがわ
やがて彼は碑を正面まえにして坐った。彼の手には、鞘に納められた天国が、握られていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は故意わざ附元気つけげんき高声たかごえで、「御機嫌よう!」と一礼すると、くるまが出たから、其儘正面まむきになって了ったが何だか後髪を引かれるようで、くるまが横町を出離れる時、一寸ちょっとうしろを振向いて見たら
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
マーキュ (笑って)なんと、かう洒落しゃれのめしてゐるはうが、れたの、れたのと呻吟うめいてゐるよりはましであらうが? 今日けふこそは、つッともう人好ひとずきのする立派りっぱなロミオぢゃ、今日けふこそは正面しゃうめん
此の男は、正面しらの切れない人間なのだ。てれかくしに下手な輕口を叩いてゐるうちに、止度が無くなつて、自分でも困つてゐながら、きれいに切あげるうでが無い。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
昨夜さくや以來いらいわが朝日島あさひじま海岸かいがんは、およかぎ裝飾さうしよくされた。大佐たいさいへ隙間すきまもなくまる國旗こくき取卷とりまかれて、その正面せうめんには、見事みごと緑門アーチ出來できた。
変な人が、女房の正面まおもてへ、写真館の前へ出たのであった。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是れでお瀧は茂之助へ面当つらあてしく、わざとつい一里と隔たぬ猿田村やえんだむら取附とりつきに山王さんのうさまの森が有ります、其の鎮守の正面むこうに空家が有りましたからこれを借り、葮簀張よしずばり掛茶店かけぢゃやを出し
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)