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しやうめん
正面に
待乳山を
見渡す
隅田川には
夕風を
孕んだ
帆かけ船が
頻りに動いて
行く。水の
面の
黄昏れるにつれて
鴎の羽の色が
際立つて白く見える。
且つは
暗い。……
前途下りに、
見込んで、
其の
勾配の
最も
著しい
其處から、
母屋の
正面の
低い
縁側に
成る
壁に、
薄明りの
掛行燈が
有るばかり。
二人は
蓮池の
前を
通り
越して、五六
級の
石段を
上つて、
其正面にある
大きな
伽藍の
屋根を
仰いだまゝ
直左りへ
切れた。
玄關へ
差しかゝつた
時、
宜道は
なしければ藤八は先
此方へと云まゝ九助は座敷へ通りけるに
正面に十界の曼陀羅を
飾り左右に
燈明香花を
正面にはもう
多田院の
馬場先きの
松並木が
枝を
重ねて、ずうつと
奧へ
深くつゞいてゐるのが
見えた。
松並木の
入口のところに、
川を
背にして、
殺生禁斷の
碑が
立つてゐた。
正面は
本院に
向ひ、
後方は
茫廣とした
野良に
臨んで、
釘を
立てた
鼠色の
塀が
取繞されてゐる。
……
是から
案内に
従つて十二
畳許の
書院らしい
処へ
通る、次は八
畳のやうで
正面の
床には
探幽の
横物が
掛り、
古銅の
花瓶に花が
挿してあり、
煎茶の
器械から、
莨盆から
火鉢まで
私は
跳上つて
眼を
放つと、
唯見る、
本船々首正面の
海上に、
此時まで
閃々たる
光は
絶えず
海の
八方を
照しつゝ
既に
一海里ばかり
駛り
去つた
海蛇丸は、
此時何故か
探海電燈の
光パツと
消えて
銀行を
横にして、
片側は
燒け
原の
正面に、
野中の
一軒家の
如く、
長方形に
立つた
假普請の
洋館が
一棟、
軒へぶつつけがきの(
川)の
字が
大きく
見えた。
此靜かな
判然しない
燈火の
力で、
宗助は
自分を
去る四五
尺の
正面に、
宜道の
所謂老師なるものを
認めた。
彼の
顏は
例によつて
鑄物の
樣に
動かなかつた。
色は
銅であつた。
恭々敷正面の
床に
飾り
悠々として
控へたり大膳左京の兩人は
斯こととは
爭で知るべき盃の數も
重なりて早十分に
醉を發し今は
好時分なり
率や
醉醒の仕事に掛らんと兩人は
剛刀を
格子戸作になつて
居ましてズーツと
洗出の
敲、
山づらの一
間余もあらうといふ
沓脱が
据ゑてあり、
正面の
処は
銀錆の
襖にチヨイと
永湖先生と
光峨先生の
合作の
薄墨附立書と
云ふので
屏風岩の
上を二十ヤードばかり
進むと、
正面に
壁のやうに
屹立つたる
大巖石の
中央に、
一個の
鐵門があつて、
其鐵門の
前には、
武裝せる
當番の
水兵が
嚴肅に
立つて
居つたが、
大佐等の
姿を
見るより
上段づきの
大廣間、
正面一段高い
處に、
疊二疊もあらうと
思ふ、
恰も
炎の
池の
如き
眞鍮の
大火鉢、
炭火の
烈々としたのを
前に
控へて、
唯見る
一個の
大丈夫。
呼出す此時
正面には松平
縫殿頭殿少し下りて右の座へ
梶川庄右衞門殿次には
公用人櫻井文右衞門田村治兵衞此方には川上
貞八石川彌兵衞
浦野紋兵衞
縁側際には
足輕五六人
非常を
主人は
大きな
眼鏡を
掛けた
儘、
下から
坂井の
顏を
見上げてゐる。
宗助は
挨拶をすべき
折でもないと
思つたから、
其儘行き
過ぎやうとして、
店の
正面迄來ると、
坂井の
眼が
徃來へ
向いた。
「
止しませう……
最う
私、
行かないで
置きますわ。」と
正面に
男を
見て、
早や
坂の
上を
背にしたのである。
門を
出ると、
右左、
二畝ばかり
慰みに
植ゑた
青田があつて、
向う
正面の
畦中に、
琴彈松といふのがある。
白井さんの
姿は、
火よりも
月に
照らされて、
正面の
縁に
立つて、
雨戸は
一枚づゝがら/\と
閉つて
行く。
提灯を
一個引奪つて、
三段ばかりある
階の
正面へ
突立つて、
一揆を
制するが
如く、
大手を
拡げて
正面に
伸上つて
見れば、
向ふから、ひよこ/\
来る
三個の
案山子も、
同じやうな
坊主に
見えた。
襖障子が
縱横に
入亂れ、
雜式家具の
狼藉として、
化性の
如く、
地の
震ふたびに
立ち
跳る、
誰も
居ない、
我が
二階家を、
狹い
町の、
正面に
熟と
見て、
塀越のよその
立樹を
廂に
まして、
大王の
膝がくれに、
婆は
遣手の
木乃伊の
如くひそんで、あまつさへ
脇立の
座の
正面に、
赫耀として
觀世晉立たせ
給ふ。
小兒衆も、
娘たちも、
心やすく
賽してよからう。
嵐気漓る、といふ
癖に、
何が
心細い、と
都会の
極暑に
悩むだ
方々からは、その
不足らしいのをおしかりになるであらうが、
行向ふ、
正面に
次第に
立累る
山の
色が
真暗なのである。
その
月の
出の
正面にかざつて、もと
手のかゝらぬお
團子だけは
堆く、さあ、
成金、
小判を
積んで
較べて
見ろと、
飾るのだけれど、ふすまは
外れる。
障子の
小間はびり/\と
皆破れる。
と
今度のは
完成した。
而して
本堂の
正面に、
支も
置かず、
内端に
組んだ、
肉づきのしまつた、
膝脛の
釣合よく、すつくりと
立つた
時、
木の
膚は
小刀の
冴に、
恰も
霜の
如く
白く
見えた。
途次、
彼の
世に
聞えた
鬼門關を
過ぎようとして、
不案内の
道に
踏迷つて、
漸と
辿着いたのが
此の
古廟で、べろんと
額の
禿げた
大王が、
正面に
口を
赫と
開けてござる、うら
枯れ
野に
唯一つ
と
罵るか、
笑ふか、
一つ
大聲が
響いたと
思ふと、あの
長靴なのが、つか/\と
進んで、
半月形の
講壇に
上つて、ツと
身を
一方に
開くと、
一人、
眞すぐに
進んで、
正面の
黒板へ
白墨を
手にして
片手で、
尚ほつよく、しかと
婦人の
手を
取つたまゝ、その
上、
腰で
椅子を
摺寄せて、
正面をしやんと
切つて、
曰く
此時、
神色自若たりき、としてあるのは、
英雄が
事變に
處して、
然るよりも
暫くすると
今其奴が
正面の
戸に
近いたなと
思つたのが、
羊の
啼声になる。
大な
鼻頭の
正面にすつくりと
立つた。
正面の
二階の
障子は
紅である。
“正面(正面性)”の解説
正面性
見る側に対し、左右対称、平行(視線と直交)、その他、正面で向き合おうとすること、およびその性質
見る者に向ける面(正面)を明確・一義的にする性質
(出典:Wikipedia)