“まえ”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
81.8%
以前10.1%
前方2.5%
前面1.0%
前途0.3%
0.3%
正面0.3%
目前0.3%
眼前0.3%
面前0.3%
前囘0.2%
前庭0.2%
前番0.2%
前髪0.2%
座前0.2%
往時0.2%
旧時0.2%
0.2%
0.2%
正方0.2%
0.2%
着前0.2%
0.2%
0.2%
陰門0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
片手かたてにブリキかんをぶらさげて、片手かたてにはさおをち、いつも帽子ぼうし目深まぶかにかぶって、よくこの洋服屋ようふくやまえとおったのでありました。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
夏姫は、夫に済まなさを感じるでもなく、さりとて、軽蔑を感じるでもない。ただ、以前まえより一層心優しく夫をもてなすようになった。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「これ、そう顔を近づけちゃ、前方まえが見えなくて、危いじゃないですか。一緒に河の中へおっこちてしまいますよ」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ちょうどその前面まえに、大鏡が立て掛けてあるからたまらない。閑山老人、見てはならないところをことごとく見てしまった。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鶏は脇の処で恐しい羽ばたきをしますね、私あそのあおりで宙へ上りそうで足も地につきませんや。背後うしろの方でも、前途まえの方でも、その時分にようようワッという人声が陰にこもって聞えました。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婆「はいかしこまりました、じきにいってまえりまする」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
正面まえへ廻って藤吉はその柘榴ざくろのような突傷をめつすがめつ眺めていたが、いっそう身体を伏せると、指で傷口を辿り出した。それから手習いをするように自分の掌へ何かしら書いていた。
おのれッ! 一度わが目前まえに現われてみよ……!
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「おいせよ、女の眼前まえで、そんなの脱がすのは止せよ」
(新字新仮名) / 徳永直(著)
けれど、面前まえにいるこの女?
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
多助の女房になりますのは前囘まえに申上げました通り、御用達藤野屋杢左衞門の娘お花で、実に別嬪でございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
剣士一統、矢鱈やたらに柄を叩いて敷台しきだいから前庭まえの植込み、各室へ通ずる板廊いたろうのあたりをガヤガヤ押し廻っていると
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
立って歩行あるく、雑談ぞうだんは始まる、茶をくれい、と呼ぶもあれば、鰻飯うなぎめしあつらえたにこの弁当は違う、とわめく。下足の札をカチカチたたく。中には、前番まえのお能のロンギを、野声を放って習うもござる。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
前髪まえを剃上げて見せたということだから、以前せんの頭はあんまり縁起のい頭じゃアございません、首実検のための頭だと云います、それから追々剃りまして糸鬢奴いとびんやっこが出来ましたが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その座前まえに、こんもりした萌黄もえぎの風呂敷包が、恭しく供えてあるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
只今なれば起るのが十時でげすな、往時まえ巳刻よつと云った時分にようやく眼を覚して
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
差出さしだすを、侍は手に取って見ましたが、旧時まえにはよくお侍様が刀をす時は、刀屋の店先で引抜ひきぬいて見て入らっしゃいましたが、あれはあぶないことで
時刻の判然はっきりしないのには困りますネ、西洋では五分の違いで有罪と無罪と分れたという実例もありますが、左様は我国では参りませんネ、まえに一高の教授が
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
それから的を見透すというと、これはさす、これはおちる、これはまえ、これは西うしろということが明瞭はっきりとわかるのでござる
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
立てた膝頭へひじを突き、てのひらの上へあごを乗せた。それを灯明が正方まえから照らした。肘の外側が仄々ほのぼのと光った。薄瑪瑙うすめのう色の光であった。立てた膝頭からはぎにかけ、足の甲まで仄々と光った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「気をとりなおして、すこし、食べたい物でも考えたがよい。医薬士くすしもいうた、おまえのからだには、どこというて、病はないのじゃと。ただ、心がわずろうているのじゃと」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぎょッ! として立ちどまったのをすかし見ると、長身痩躯そうく、乱れた着前まえに帯がずっこけて、左手の抜刀をぴったりとうしろに隠している。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
舟といえば、この渡しの舟の形はおかしい、まえうしろもない、ひきがえるを踏みつけたようなペッタリした舟だワイ、あちらの岸の舟もそうだ。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この盆にもこの正月にも心付けしてくれたお吉と気がついて八五郎めんくらい、素肌に一枚どてらのまえ広がって鼠色ねずみになりしふんどしの見ゆるを急に押し隠しなどしつ、親分、なんの、あの
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さればこの蛇の害に依って水死せる者を、その肛門の常ならざるについて、皆水虎かっぱの業とはいい習わしたるものか云々。また女子の陰門まえに蛇入りしといえるも、かの水蛇の事なるべし。