“むかし”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ムカシ
語句割合
63.1%
往時6.0%
往昔5.4%
昔時5.2%
3.7%
2.7%
以前2.7%
昔日1.9%
往古1.5%
古昔1.2%
往年0.8%
在昔0.6%
旧時0.6%
過去0.6%
古代0.4%
太古0.4%
昔者0.4%
疇昔0.4%
徃時0.2%
原始0.2%
当時0.2%
往事0.2%
往日0.2%
0.2%
曩昔0.2%
曩時0.2%
維新前0.2%
維昔0.2%
0.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
うちよりけておもていだすは見違みちがへねどもむかしのこらぬ芳之助よしのすけはゝ姿すがたなりひとならでたぬひとおもひもらずたゝずむかげにおどろかされてもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何卒どうかしてお新を往時むかし心地こころもちに返らせたいと思って、山本さんは熱海まで連れて行ったが、駄目だった。そこで今度は伊東の方へ誘った。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いつもの道だが、加茂川から一二丁の間隔を置いて平行にはしつてゐる高い堤(それは往昔むかしの加茂川のそれではないかと思ふ)
と、隠居たちが派手なしきたりや、お鯉自身もどんなに困っても昔時むかしの通りだということを、どうしようもないようにつぶやくように話した。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
むかしの学者は『書を以て書を読む』と言つてゐるが、実際さういふ風にならなければ、複雑な進んだ読方は出来ないものである。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
むかしに返し得べき未練の吾に在りとや想へる、愚なる精衛のきたりて大海だいかいうづめんとするやと、かへりてかたくなに自ら守らんとも為なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
淵瀬の以前むかし知らぬ人も気の毒がり、水臭からぬ隣の細君かみさま、お秋が提ぐる手桶の、重さうなるを、助けて運びくるる事もあり。
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
国民の膏血かうけつを分けて貰つて、不義の栄耀ええうふけり、其手先となつて昔日むかし朋友ほういうの買収運動をさへなさるとは、姉さん、まア、何と云ふ堕落でせうか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
これは往古むかし、漢土から爆竹の風が伝わって、左義長さぎちょうと言って代々行われた土俗が遺っているのである。
古昔むかしそう文帝ぶんていころの中書學生に盧度世ろとせいと云者あり崔浩さいかうの事に坐し亡命にげ高陽かうやうの鄲羆の家に竄る官吏やくにんの子をとらへて之を掠治たゞす其子をいましめて曰君子は身を殺てじん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そぞろに金三の上忍ばれて、お艶に金三の事聞き合はす時あれど。お艶はいつも不興気にて、父様とは往年むかしの事、私をもお前をも、お捨てなされし淵瀬様の事、いつまでも父様といふものでなし。
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
在昔むかし何国のなにがしは、いったん絶命して再び蘇生する間に、あるいは極楽を見、あるいは地獄をうて帰れりといい、また第三問題に対しては、死したる子供を葬るときに
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この縁故の深い、旧時むかし恋しい人の前に、三吉は考え沈んで、頭脳あたまの痛くなるような電車の響を聞いていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「エエほんとに、怖ろしい故郷ね、あそこの憶い出に、一つだッて、いい過去むかしはありゃしません」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宛然まるで古代むかしに帰つた様な気持ぢやありませんか!』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
昔者むかしプラトー、ソクラテスの口をして曰わしめて曰く、“It is not mere life, but a good life that we court”と。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それが茫々たる なん千年の疇昔むかしのこと
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
これが徃時むかしの、妻か、夫か、心根可愛や、懐かしやと、我を忘れて近寄る時、忽然たちまちふつと灯は滅して一念未生みしやうの元の闇に還れば、西行坐を正うして、能くこそ思ひ切り玉ひたれ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
されば徃時むかしは朕とても人をば責めず身を責めて、仏に誓ひ世に誓ひ、おのれが業をあさましく拙かりしと悔い歎きて、心の水の浅ければ胸の蓮葉はちすばいつしかと開けんことは難けれど
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
いつの原始むかしから湛え始め、いつの未来まで湛え続くとも判らぬ海。はてしも知らぬ海。あらゆるものを育みそだて、あらゆるものを生きて働かせ、あらゆるものを葬り呑んで行く海。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
当時むかし盲縞めくらじまの腹掛けは今日黒の三つ紋の羽織となりぬ。金沢裁判所新任検事代理村越欣弥氏は、実に三年前の馭者台上の金公なり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幻花子げんくわし新聞しんぶんはういそがしいので、滅多めつたず。自分じぶん一人ひとり時々とき/″\はじめのところつては、往事むかし追懷つひくわいすると、其時そのとき情景じやうけい眼前がんぜん彷彿ほうふつとしてえるのである。
その往日むかしそこの斷崖ガンケぢて此方のいりうみの岸を見かへしたことがある、私の十六の春を回想した。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
むかしの園を捨てて行かまし
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
六年の田舎住居、多少は百姓の真似まねもして見て、土に対する農の心理の幾分をしはじめて見ると、余はいやでも曩昔むかしみとめずには居られぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
要するに曩時むかしの純農村は追々都会附属の菜園になりつゝある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
気の小さい維新前むかしの者は得て巡的をこわがるやつよ。なんだ、高がこれ股引きがねえからとって、ぎょうさんに咎め立てをするにゃあ当たらねえ。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
維昔むかし天孫豊葦原を鎮め給いしより、文化東漸とうぜんし、今や北海辺隅へんぐうに至る迄億兆ひとしく至仁じじん皇沢こうたくに浴せざるものなし。我が一家亦世々其恵を受け、祖先の勤功と父母の労苦とに由り今日あるを致せり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
からずむかしをいはば三千ごく末流まつりうなりといふ、さらば旗下はたもと娘御むすめごにや、親御おやごなどもおはさぬか、一人ひとりみとはいたはしきことなりと、はやくもそのひと不憫ふびんになりぬ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)