“往昔”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
むかし68.6%
おうせき17.1%
そのかみ8.6%
かみ2.9%
そのいぜん2.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
いつもの道だが、加茂川から一二丁の間隔を置いて平行にはしつてゐる高い堤(それは往昔むかしの加茂川のそれではないかと思ふ)の上を北の方へあるいて行つた。
女はだんだん往昔むかしの追憶が起ってくるというように、自分の心の底に想い沈んでいるというようであったが、自分の話に興を感ずるといったようにこう言った。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
古い城址じょうし周囲まわりだけに、二人が添うて行く石垣の上の桑畠も往昔むかしいかめしい屋敷のあったという跡だ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平和家なみだを啜つて曰く、往昔むかしの日本は実に無量の罪悪を犯せり、われ幸にして、当時貴邦に遊ばず、若し遊びしならば、我は為に懊悩して死せしならむと。
想断々(1) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
記憶きおくのこみせがまへいまには往昔むかしながらひと昨日きのふといふ去年きよねん一昨年をとゝし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この辺は古い戦場の跡ででもあって、往昔おうせき海の口の城主が甲州の武士と戦って、戦死したと言伝えられる場所もある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
——余ノ調査研究セルトコロニレバ、既ニ往昔おうせきヨリコノ種ノ犯罪ガ行ワレツツアリシ事実ヲ認ムルヲ得ベシ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
刑事裁判がその源を復讐に発していることは争うべからざる事実であるが、その最も著明な証跡とも見るべきは、刑事訴訟の起訴者が現今は国家であるが、往昔おうせきにあっては私人であったことである。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
往昔おうせき福建省福州府、浦田ほだ県九連山山中に、少林寺と称する大寺あり。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そう思って、鶴見は往昔おうせきを追想してなつかしがっている。
なるほど二人の往昔そのかみの仲は、死ぬの生きるの夫婦いっしょになろうのと、そういったような深い烈しい、燃え立つような仲ではなかった。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ふところに抱く珠の光りをに抜いて、二百里の道を遥々はるばると闇の袋より取り出した時、珠は現実の明海あかるみに幾分か往昔そのかみの輝きを失った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さればこそ土は往昔そのかみ生物の極めて完全なるにふさはしく造られ、また處女をとめみごもりしなれ 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
坂にカッシーノある山にては、往昔そのかみ巓に登りゆく迷へるゆがめる人多かりき 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
その往昔かみのこのおすみという女の童も、うつそみの世にはいのちを阻まれる節があり末の世を頼みに、そのいのちをせめて非情の草木に向けて生い移した不幸な女性群の一人ではなかったのでしょうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
築地と木立ちとに囲まれた、古い蒼然としたこの館は、外形おもてがかりこそ廃屋めいていて、寂しくもあれば恐ろしくもあったが、なかへはいると往昔そのいぜんは、陽気でもあれば華やかでもあった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)