“往昔”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
むかし65.0%
おうせき17.5%
そのかみ7.5%
そのむかし5.0%
かみ2.5%
そのいぜん2.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
獅子は百獣の王、その毛を持っていれば、さすがの狂犬も慴伏しゅうふくして寄りつかぬというのだ。てのひらに虎の字を書く往昔むかしの落語を思い出される。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この辺は古い戦場の跡ででもあって、往昔おうせき海の口の城主が甲州の武士と戦って、戦死したと言伝えられる場所もある。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふところに抱く珠の光りをに抜いて、二百里の道を遥々はるばると闇の袋より取り出した時、珠は現実の明海あかるみに幾分か往昔そのかみの輝きを失った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この浅間敷あさましい老人の姿——空腹と老衰と病弱とに虫喰むしばまれている老人の姿を、誰が今日見たところで、その老人が往昔そのむかし、逞しい体の所有者で、そして素晴らしい好男子で
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その往昔かみのこのおすみという女の童も、うつそみの世にはいのちを阻まれる節があり末の世を頼みに、そのいのちをせめて非情の草木に向けて生い移した不幸な女性群の一人ではなかったのでしょうか。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
築地と木立ちとに囲まれた、古い蒼然としたこの館は、外形おもてがかりこそ廃屋めいていて、寂しくもあれば恐ろしくもあったが、なかへはいると往昔そのいぜんは、陽気でもあれば華やかでもあった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)