往昔そのかみ)” の例文
ふところに抱く珠の光りをに抜いて、二百里の道を遥々はるばると闇の袋より取り出した時、珠は現実の明海あかるみに幾分か往昔そのかみの輝きを失った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なるほど二人の往昔そのかみの仲は、死ぬの生きるの夫婦いっしょになろうのと、そういったような深い烈しい、燃え立つような仲ではなかった。とはいえ双方好き合い愛し合った。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さればこそ土は往昔そのかみ生物の極めて完全なるにふさはしく造られ、また處女をとめみごもりしなれ 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
坂にカッシーノある山にては、往昔そのかみ巓に登りゆく迷へるゆがめる人多かりき 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)