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往時
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むかし
ふりがな文庫
“
往時
(
むかし
)” の例文
往時
(
むかし
)
は匪徒を伊豆の諸島に流すに、この橋の
畔
(
ほとり
)
と永代橋の畔より船を出すを例とし、かつこゝよりするものは帰期あるものと予定し
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
何卒
(
どうか
)
してお新を
往時
(
むかし
)
の
心地
(
こころもち
)
に返らせたいと思って、山本さんは熱海まで連れて行ったが、駄目だった。そこで今度は伊東の方へ誘った。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
旅館
(
はたごや
)
は高田を始め、新旧俳優の多くが巣のやうにしてゐるが、松井須磨子なども、文芸協会の
往時
(
むかし
)
から、いつも
其家
(
そこ
)
に泊つてゐる。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それらが座敷に敷いてある
往時
(
むかし
)
父が眠くなるとその端を取って葉巻虫のように身体に巻きつけて寝たという紺の
毛艶
(
もうせん
)
の端の上に載っています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
今日
(
こんにち
)
の
方々
(
かたがた
)
は
随分
(
ずいぶん
)
無理解
(
むりかい
)
な
仕打
(
しうち
)
と
御思
(
おおも
)
いになるか
存
(
ぞん
)
じませぬが、
往時
(
むかし
)
はよくこんな
事
(
こと
)
があったものでございまして……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
▼ もっと見る
だからおなじ
蒙塵
(
もうじん
)
(天子の御避難)でも、今日の恐怖は、
往時
(
むかし
)
の比ではない。——
賢所
(
かしこどころ
)
の
渡御
(
とぎょ
)
(三種ノ神器の移動)を忘れなかったのがやっとであった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此處
(
こゝ
)
往時
(
むかし
)
北越
(
ほくゑつ
)
名代
(
なだい
)
の
健兒
(
けんじ
)
、
佐々
(
さつさ
)
成政
(
なりまさ
)
の
別業
(
べつげふ
)
の
舊跡
(
あと
)
にして、
今
(
いま
)
も
殘
(
のこ
)
れる
築山
(
つきやま
)
は
小富士
(
こふじ
)
と
呼
(
よ
)
びぬ。
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
また
往時
(
むかし
)
の
慣習
(
しきたり
)
からして、双生児の畜生児は殺さねばならなかったということも、さらに里虹が両親からの云い伝えで、クイロスの船を赦免船と信じてしまったことも……。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
棺の
内
(
なか
)
には木乃伊が在る。胸へ手を組んだその木乃伊の、手の指に握られた耳飾は、巨大な金剛石に
鏤
(
ちりば
)
められ、数千年の
往時
(
むかし
)
から、二十世紀の今日まで、同じ光に輝いている。
木乃伊の耳飾
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
真正の彼岸ザクラすなわち Prunus subhirtella Miq. は
往時
(
むかし
)
から彼岸ザクラと称え、それ以外の名は
小
(
こ
)
ザクラがその一名であるように思われるけれど
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
自分は
往時
(
むかし
)
のよしみもあり、それに
他
(
ひと
)
の自伝とか日記とかに殊に興味を持つ方だから、喜んで引受けるには引受けたが、なにしろ長い間のことが書いてあつて、それに達者な女文字と来てゐるから
一葉の日記
(新字旧仮名)
/
久保田万太郎
(著)
播磨
(
はりま
)
の伊藤といへば
往時
(
むかし
)
からの百万長者、随分
難
(
むつか
)
しい家憲もあれば家風もある。気の毒にもそんな
間
(
なか
)
に生れ落ちたのが今の伊藤長次郎氏。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
福山すなわち
松前
(
まつまえ
)
と
往時
(
むかし
)
は
云
(
い
)
いし城下に
暫時
(
ざんじ
)
碇泊
(
ていはく
)
しけるに、北海道には
珍
(
めず
)
らしくもさすがは旧城下だけありて
白壁
(
しらかべ
)
づくりの家など
眸
(
め
)
に入る。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
眼鏡越しに
是方
(
こちら
)
を眺める青木の眼付の若々しさ、
往時
(
むかし
)
を
可懐
(
なつか
)
しがる布施の
容貌
(
おもて
)
に
顕
(
あらわ
)
れた真実——いずれも原の身にとっては
追懐
(
おもいで
)
の種であった。
並木
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
よくまァ
御無事
(
ごぶじ
)
で……
些
(
ち
)
ッとも
姫
(
ひい
)
さまは
往時
(
むかし
)
とお
変
(
かわ
)
りがございませぬ。お
懐
(
なつ
)
かしう
存
(
ぞん
)
じます……。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
離して逃げられでもしたらと用心して
確
(
し
)
っかり握りしめてついて来た加奈江は、必死に手に力をこめるほど
往時
(
むかし
)
の恨みが
衝
(
つ
)
き上げて来て、今はすさまじい気持ちになっていた。
越年
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
直ぐ
邸宅
(
やしき
)
の立派なのを欲しがるのと打つて変つて、今も
往時
(
むかし
)
も
宿屋
(
ホテル
)
の
室借
(
まがり
)
で、その全財産を鞄一つに
蔵
(
をさ
)
めてけろりとしてゐる。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
此のあたりの地をば吾が家にて有ちし
往時
(
むかし
)
もありければ、一
ト
言にても糺されしことの胸わろきにつけて、よし無き感を起しゝも烏滸がまし。
鼠頭魚釣り
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
丁度
往時
(
むかし
)
故郷の広い楽しい
炉辺
(
ろばた
)
で、ややもすると
嫌味
(
いやみ
)
なことを言う
老祖母
(
おばあ
)
さんを前に置いて、
碌々
(
ろくろく
)
口も
利
(
き
)
かずに食った若夫婦の時代と同じように
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「原稿?」と小説家は古い
往時
(
むかし
)
の話でもする折のやうな顔をした。「原稿とお言ひなのは、手で書いた文字の事なんですか。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
橋の上流下流にて花火を打揚ぐる川開きの夜の賑ひは、
寺門静軒
(
てらかどせいけん
)
が記しゝ
往時
(
むかし
)
も今も異りなし。橋の下流
少許
(
しばし
)
にして東に入るの一水あり。これを
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
こういう人の側に、山本さんは遠慮勝に腰掛けて、
往時
(
むかし
)
お新や
異母妹
(
いもうと
)
と一緒に菖蒲田の海岸を歩いた時の
心地
(
こころもち
)
に返った。海は山本さんを九年若くした。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「一寸伺ひますが、
往時
(
むかし
)
一
夜
(
や
)
のうちに琵琶湖とか富士山とか出来たと言ひますが、富士山を取崩したら、見事琵琶湖が埋まるでせうかな。」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
途中白石の町は
往時
(
むかし
)
民家の二階立てを禁じありしとかにて、うち見たるところ今なお
巍然
(
ぎぜん
)
たる家無し。片倉小十郎は面白き制を
布
(
し
)
きしものかな。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
緩慢
(
なだらか
)
な地勢に沿うて岡の上の方から学校の表門の方へ弧線を描いている一筋の
径
(
みち
)
だけは
往時
(
むかし
)
に変らなかったが、門の
側
(
わき
)
に住む小使の家の窓は無かった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
松助老人はにや/\笑ひながら、
夕飯
(
ゆふめし
)
の
鮪
(
まぐろ
)
の事か、
往時
(
むかし
)
の
昵懇妓
(
なじみをんな
)
の事でも考へてるらしい、そつけない眼つきをしてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
往時
(
むかし
)
普門院といふ寺の鐘この淵に沈みたればこの名ありとは江戸名所図会にも載せたる伝説ながら、けだし恐らくは信ずるに足らざるの談ならん。
水の東京
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一つは
往時
(
むかし
)
英語を学んだ先生から自分の学校へ来てくれないかとの手紙で、是方は寂しい田舎ではあり、月給も少かった。しかし三吉は後の方を択んだ。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「さう。
阿母
(
おつか
)
さんも有つたの。」娘は
護謨
(
ごむ
)
人形のやうに急に母親に飛びついた。「やつぱり
往時
(
むかし
)
も今も同じだわねえ。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
引っ掛けたねんねこばかりは
往時
(
むかし
)
何なりしやら
疎
(
あら
)
い
縞
(
しま
)
の糸織なれど、これとて幾たびか水を潜って来た
奴
(
やつ
)
なるべし。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
温厚な長者らしい主人は、自分も
往時
(
むかし
)
を思出したという風で、三吉と一緒に縁側に立って、あそこに井戸があった、ここに倉があった、と指して見せた。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
身に着けた物のうちで、一番
大切
(
だいじ
)
な物といふと、
往時
(
むかし
)
はいふ迄も無く男には刀、女には鏡で無ければならなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
今もなお
往時
(
むかし
)
ながらの
阿蒙
(
あもう
)
なるに
慚愧
(
ざんき
)
の情身を
責
(
せ
)
むれば、他を見るにつけこれにすら悲しさ増して言葉も出でず。
突貫紀行
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
往時
(
むかし
)
は大きな漁業を営んで、氷の中にまで寝たというこの老人の豪健な
気魄
(
きはく
)
と、
絶念
(
あきらめ
)
の早さとは年を取っても失われなかった。女達の親しい笑声が起った。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
引つ掛けたねんねこばかりは
往時
(
むかし
)
何なりしやら
疎
(
あら
)
い縞の糸織なれど、此とて幾度か水を潜つて来た奴なるべし。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
葬式の日は、親類一同、小さな棺の
周囲
(
まわり
)
に集った。三吉が
往時
(
むかし
)
書生をしていた家の直樹も来た。この
子息
(
むすこ
)
は
疾
(
とっく
)
に中学を卒業して、最早
少壮
(
としわか
)
な会社員であった。
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
英語で一番綴りの長い
語
(
ことば
)
は何だらうといふ事は、
往時
(
むかし
)
からよく無駄話の
材料
(
たね
)
にされたもので、ある人は。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
弟の阿利吒は尊げなる僧の
饑
(
う
)
ゑたる
面色
(
おももち
)
して空鉢を
捧
(
ささ
)
げ還る
風情
(
ふぜい
)
を見るより、図らず
惻隠
(
そくいん
)
の善心を起し、
往時
(
むかし
)
兄をば
情
(
つれ
)
なくせしことをも思ひ浮めて悔いつつ
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「家なぞはどうでも可い」とよく
往時
(
むかし
)
思い思いした正太ではあるが、いざ
旧
(
ふる
)
い家が
壊
(
こわ
)
れかけて来たと成ると、自分から進んでその波の中へ
捲込
(
まきこ
)
まれて行った。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「酒の為に潰す米なんて知れたもんだよ。
往時
(
むかし
)
から馬鹿の大食ひといつて、馬鹿が一等沢山米を食ふのだ。その馬鹿の大食ひを治すには何よりかも酒を飲ますに限るんだからね。」
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
無かった縁に
迷
(
まよ
)
いは
惹
(
ひ
)
かぬつもりで、今日に満足して
平穏
(
へいおん
)
に日を送っている。ただ
往時
(
むかし
)
の
感情
(
おもい
)
の
遺
(
のこ
)
した
余影
(
かげ
)
が太郎坊の
湛
(
たた
)
える酒の上に時々浮ぶというばかりだ。
太郎坊
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
苦笑ひには
往時
(
むかし
)
から値段はついてゐない、誰でもが持合はせてゐるものだから。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
学士は又、そんな関わない
風采
(
ふうさい
)
の中にも、
何処
(
どこ
)
か
往時
(
むかし
)
の
瀟洒
(
しょうしゃ
)
なところを失わないような人である。その胸にはネキタイが面白く結ばれて、どうかすると見慣れない
襟留
(
えりどめ
)
なぞが光ることがある。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ねだって買ってもろうたる博多に
繻子
(
しゅす
)
に未練もなし、三枚重ねに忍ばるる
往時
(
むかし
)
は罪のない夢なり、今は苦労の
山繭縞
(
やままゆじま
)
、ひらりと飛ばす
飛八丈
(
とびはちじょう
)
このごろ好みし毛万筋
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
一寸
往時
(
むかし
)
の事を言つたまでだ。小杉家から出た宝物とは何の関係もない。
青磁の皿
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
浅間は大きな爆発の為に崩されたような山で、今いう
牙歯山
(
ぎっぱやま
)
が
往時
(
むかし
)
の噴火口の跡であったろうとは、誰しも思うことだ。何か山の
形状
(
かたち
)
に一定した面白味でもあるかと思って来る旅人は、大概失望する。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そも/\我と汝とは
往時
(
むかし
)
如何なる契りありけむ、かく相互に睦ぶこと是も他生の縁なるべし。草木国土
悉皆成仏
(
しつかいじやうぶつ
)
と聞くときは猶行末も頼みあるに、我は汝を友とせん。
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「兄さんの禿は
往時
(
むかし
)
からですよ」
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
知
(
し
)
らぬ『
往時
(
むかし
)
』にたてまつり。
白羊宮
(旧字旧仮名)
/
薄田泣菫
、
薄田淳介
(著)
是や見し
往時
(
むかし
)
住みにし跡ならむ蓬が露に月の隠るゝ有為転変の有様は、
色即空
(
しきそくくう
)
の
道理
(
ことわり
)
を示し、亡きあとにおもかげをのみ遺し置きて我が
朋友
(
ともどち
)
はいづち行きけむ無常迅速の
為体
(
ていたらく
)
は
二日物語
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
“往時”の意味
《名詞・形容動詞》
過ぎ去った昔。昔日。
(出典:Wiktionary)
往
常用漢字
小5
部首:⼻
8画
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
“往”で始まる語句
往
往来
往々
往來
往生
往昔
往還
往復
往古
往反