徃時むかし)” の例文
これが徃時むかしの、妻か、夫か、心根可愛や、懐かしやと、我を忘れて近寄る時、忽然たちまちふつと灯は滅して一念未生みしやうの元の闇に還れば、西行坐を正うして、能くこそ思ひ切り玉ひたれ
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
されば徃時むかしは朕とても人をば責めず身を責めて、仏に誓ひ世に誓ひ、おのれが業をあさましく拙かりしと悔い歎きて、心の水の浅ければ胸の蓮葉はちすばいつしかと開けんことは難けれど
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
入道の縁は無量にして順逆正傍じゆんぎやくしやうばうのいろ/\あれど、たゞ徃生を遂ぐるを尊ぶ、徃時むかしは世間の契を籠め今は出世間の交りを結ぶ、御身は我がための菩提の善友、浄土の同行なり悦ばしや
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)