往古むかし)” の例文
仰せらるゝ者かな往古むかしは昔し今は今なり一旦貴殿にめぐみし金子を如何に某しかく零落れいらくして一錢二錢の袖乞そでごひをなせばとて今更受取り申べきいはれなし貴殿が昔の恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは往古むかし、漢土から爆竹の風が伝わって、左義長さぎちょうと言って代々行われた土俗が遺っているのである。
我国の雪は鵞毛がまうをなさず、降時ふるときはかならず粉砕こまかきをなす、風又これをたすく。ゆゑに一昼夜ちうや積所つもるところ六七尺より一丈にいたる時もあり、往古むかしより今年ことしにいたるまで此雪此国にふらざる事なし。
往古むかしより日本にても、西洋にても、冤鬼えんきあるいは妖怪の説ありて、人も往々これを見しなどというものも最も多けれども、これはみな誑惑癖きょうわくへきをなすの妄念より出ずるか、あるいは夢か
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
往古むかし神はアブラハムを試みて、約束の子イサクを燔祭はんさい犠牲いけにえとして要求し給うた。
ほんの寸法だけで左足の堆積やまと右足の堆積とから手当り次第に掴み取りして似合の一対とするように、人間が肢を八本もっていたアンドロギュノスの往古むかしかえり度い本能からばかりならば
アンドロギュノスの裔 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
山間やまあいを流れてゆく水だの、ここらの山や谷のたたずまいは、麻往古むかし、平氏や源氏のつわものばらが、野に生れた道の——武家発生の故郷ふるさとだった時代の景色を——何とはなく感じさせるものが
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)