“己(お)” の例文
老人(としより)に子供(こども)だから馬鹿(ばか)にして思(おも)ふやうには動(うご)いて呉(く)れぬと祖母(おばあ)さんが言(い)つて居(ゐ)たつけ、己(お)れが最(も)う少(すこ)し大人(おとな)に成(な)ると質屋(しちや)を出(だ)さして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
庄「旦那妙なもので、これは本当に真の友達で、銭が無けりゃア貸して遣(や)ろう、己(お)らが持合(もちあわ)せが有れば貸そうという中で有りますと」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
己(お)れに勇気のない事を見破つたから、あきらめたまでなンだ。誰だつて、一生のうちに、死を考へないものはなからうぢやないかね……。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
己(お)ら家(げ)の餓鬼奴等も亦何っちゅうだっぺ、折角、ねんごろにきいてくれるにさあ石なげるたあ。此間(こねえ)だも——
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
お前方は月並月並というて大変恐怖(こわ)がって居るが己(お)れなどは月並からやって来たのだから、もう月並になろうとしてもなれんので恐怖くも何んともない、月並を
子規と和歌 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「己(お)れあ車屋の黒(くろ)よ」昂然(こうぜん)たるものだ。車屋の黒はこの近辺で知らぬ者なき乱暴猫である。しかし車屋だけに強いばかりでちっとも教育がないからあまり誰も交際しない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この古家(ふるいえ)の静かな壁の中(うち)から、己(お)れ自身の生涯が浄められて流れ出るような心持がする。
「馬鹿言えッ! それならお前に読うで貰わいでも、己(お)りゃちゃんと知っとるわい。」
恭三の父 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
されどそはかならずよく燃ゆとこの群の年かさなる子、己(お)のが力にあまるほどの太き丸太を置きつついえり。その丸太は燃えじと丸顔の子いう。いな燃やさでおくべきと年上の子いきまきて立ちぬ。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「どうしたんだべいな? 伊作あ、己(お)らを呼んでるてばな。」
三人の百姓 (新字新仮名) / 秋田雨雀(著)
「己(お)らまた、柱暦の絵に描(か)いた、倭武尊(やまとたけ)様かと思った奴さ。」
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「己(お)らあ、もう醤油屋へは行かんのじゃ。」
まかないの棒 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
隨分(ずゐぶん)厭味(いやみ)に出來(でき)あがつて、いゝ氣(き)の骨頂(こつちやう)の奴(やつ)ではないか、己(お)れは親方(おやかた)の息子(むすこ)だけれど彼奴(あいつ)ばかりは何(ど)うしても主人(しゆじん)とは思(おも)はれない
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
久「アレヘエそれじゃアおらが困るべいじゃアねえか、旦那どんが己(お)れにわれえ喋(しゃべ)るなよと云うたに、困ったなア」
「己(お)ら御免だ。」と主税は懐手で一ツ肩を揺(ゆす)る。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
己(お)れは此樣(こん)な無學漢(わからづや)だのにお前(まへ)は學(もの)が出來(でき)るからね、向(むか)ふの奴(やつ)が漢語(かんご)か何(なに)かで冷語(ひやかし)でも言(い)つたら、此方(こつち)も漢語(かんご)で仕(し)かへしておくれ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
車「足元だって、己(お)れはア女の死骸と云って己(おれ)を欺(だま)かしたが、こりゃア男だ、女の死骸に□□があるかえ」
己(お)れは何(ど)うもお前(まへ)さんの事(こと)が他人(たにん)のやうに思(おも)はれぬは何(ど)ういふものであらう、お京(きやう)さんお前(まへ)は弟(おとゝ)といふを持(も)つた事(こと)は無(な)いのかと問(と)はれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
伴「なに己(お)らたちには何(なん)だか訳が分らねえが、幽霊は此奴(こいつ)があると這入(へい)られねえという程な魔除(まよけ)のお守(まもり)だ」
お京(きやう)さん己(お)れが本當(ほんたう)に乞食(こじき)の子(こ)ならお前(まへ)は今(いま)までのやうに可愛(かあい)がつては呉(く)れないだらうか、振向(ふりむ)いて見(み)ては呉(く)れまいねと言(い)ふに
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
勘「厭(いや)だな、本当に涙をこぼして師匠が己(おれ)に頼んだが、お前(めえ)が家(うち)を出なければ斯(こ)んな事にはならねえ、お前(めえ)が出て歩くから斯んな事に、オイ表に人が待って居るじゃアねいか己(お)れが出よう」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奴(やつ)め身體(からだ)が痛(いた)い癖(くせ)に親父(おやぢ)に知(し)らすまいとして働(はたら)いて居(ゐ)た、夫(そ)れを見(み)たら己(お)れは口(くち)が利(き)けなかつた、男(をとこ)が泣(な)くてへのは可笑(をか)しいでは無(な)いか
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此間(こねえだ)の火事の時、此の娘(こ)も焼出され逃げる途中母親(おふくろ)に別れ、一人で来る後(うしろ)から悪者に附かれ、持っていた包を奪(と)られ、母親に済まないという所から身を投げようとする所へ己(お)れたちが通り掛り
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
己(お)いらは少(ち)つとも聞かなかつたと正太もちうちうたこかいの手を止めて、誰れか中間(なかま)が来たのでは無いかと嬉(うれ)しがるに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
親方(おやぶん)が人を打殺(ぶちころ)して三日の間番をさせられた時の臭(にお)いが鼻に通って、いまだに忘れねえが、其の臭いに違(ちげ)えねいから隠したって駄目だ、死人(しびと)なら死人だとそう云えや、云わねえと己(お)れ了簡(りょうけん)があるぞ
男(をとこ)は皆(みんな)あんな物(もの)、氣(き)が多(おほ)いからとお福(ふく)の笑(わら)ひ出(だ)すに、惡(わる)く當(あて)つ擦(こす)りなさる、耳(みゝ)が痛(いた)いでは無(な)いか、己(お)れは斯(か)う見(み)えても不義理(ふぎり)と土用干(どようぼし)は仕(し)た事(こと)の無(な)い人間(にんげん)だ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
五「駄目だ、己(お)れ往って相談して来る所がある」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
傘屋の吉だよ、己(お)れだよと少し高く言へば、嫌な子だね此樣な遲くに何を言ひに來たか、又お餅(かちん)のおねだりか、と笑つて、今あけるよ少時(しばらく)辛棒おしと言ひながら
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
久「種が上るか下(さが)るか己(お)らア知んねえものを」
それならば己(お)れが呼んで来る、万燈は此処(ここ)へあづけて行けば誰れも蝋燭(ろうそく)ぬすむまい、正太さん番をたのむとあるに、吝嗇(けち)な奴め、その手間で早く行けと我が年したに叱(し)かられて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
僕は鼻緒を切つてしまつてどう為(し)ようかと思つてゐる、本当に弱つてゐるのだ、と信如の意久地なき事を言へば、そうだらうお前に鼻緒の立(たち)ッこは無い、好いや己(お)れの下駄を履(はい)て行(ゆき)ねへ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ことことと羽目を敲(たた)く音のするに、誰れだえ、もう寐(ね)てしまつたから明日(あした)来ておくれと嘘(うそ)を言へば、寐たつて宜(い)いやね、起きて明けておくんなさい、傘屋(かさや)の吉(きち)だよ、己(お)れだよと少し高く言へば
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)