“吝嗇”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
りんしょく48.6%
けち32.6%
りんしよく6.3%
けちんぼ2.1%
しみつたれ2.1%
けちん1.4%
しわんぼう1.4%
けち/\0.7%
しぶちん0.7%
しみた0.7%
しみっ0.7%
しわ0.7%
つまし0.7%
つましさ0.7%
シムプル0.7%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
そのために、吝嗇りんしょくな客ほど彼をひいきにする、といわれていた。この、客と船頭との微妙な因果関係については、こういう例がある。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
買いたいものがあっても金に不自由していた自分は妙に吝嗇けちになっていて買い切れなかった。「これを買うくらいなら先刻さっきのを買う」
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
一つフロツクコートで患者くわんじやけ、食事しよくじもし、きやくにもく。しかれはかれ吝嗇りんしよくなるのではなく、扮裝なりなどにはまつた無頓着むとんぢやくなのにるのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「メクワジヤ」と稱する貝は青くて病的な香を發する下等動物である。それを多食する吝嗇けちんぼの女房はよく眼を病んで堀端ほりばたで鍋を洗つてゐた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
書林ほんや小僧こぞうおこつて、あんな吝嗇しみつたれやつはありやアしない、おれたび使賃つかひちんれた事がない、自分のうちならばもうきやしないと思つても、奉公ほうこううへだから仕方しかたがなく
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
本当に自家うち吝嗇けちんぼうめやかましい小言ばかり言ひやがつて、人を使ふ法をも知りやあがらない、死んだお老婆ばあさんはあんなのでは無かつたけれど、今度の奴等やつらと来たら一人として話せるのは無い
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ですから今では殆んど吝嗇しわんぼうとか、欲張りの代名詞になっています。これは誠に残念に思います。正当に利己主義を使うことが日本ではまだ実行されていないようにさえ思います。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
なんて過多あんまり吝嗇けち/\したことも言へないぢやないか。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『奥さんが来てからなア……先生とこはお餅も搗けへんのやで、奥さんはほんとに吝嗇しぶちんや!』
一度に十円位までの奴は吝嗇しみたれて汚ない、しかし一夜に二三十円以上の阿呆になると、これこそ小気味よう図抜けてゐまツせ、雪駄の裏金に小判を付けたり
上方者の啖呵 (新字旧仮名) / 村上浪六(著)
それにしても収穫みいりの悪いのに慣れている彼の金の使いぶりは、神経的に吝々けちけちしたもので、計算に暗いだけになお吝嗇しみったれていた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ごく吝嗇しわひと御座ございまして、旦
吝嗇家 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
また、或る人は、ご叮嚀ていねいにも、モンテーニュのエッセエの「古人の吝嗇つましさに就いて」という章を私に見せて、これが井伏の小説の本質だなどと言った。すなわち
『井伏鱒二選集』後記 (新字新仮名) / 太宰治(著)
私は、沼男ニツケルマンのやうな顔つきで穴倉の湯に蹲つては、過剰金の嵩ばかりを計算してゐる吝嗇シムプルさ加減を見れば見るほど、慨歎の至りと感ずるだけであつた。
風流旅行 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)