“けち”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
38.7%
吝嗇25.3%
蹴散15.1%
希知2.2%
2.2%
卑劣1.6%
1.1%
不吉1.1%
狭隘1.1%
矮小1.1%
蹶散1.1%
鄙劣1.1%
奇怪0.5%
不幸0.5%
0.5%
卑吝0.5%
吝薔0.5%
少量0.5%
屑々0.5%
弱小0.5%
怪痴0.5%
0.5%
慳吝0.5%
稀知0.5%
0.5%
鄙吝0.5%
非難0.5%
駈散0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
長「そりゃア知っていますが、女という奴アけちなもんで、お嬢さんのように施しを褒めてくれる女はございませんから持たないんです」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆あさんは腹の中で、相変らず吝嗇けちな人だと思った。この婆あさんの観察した処では、石田に二つの性質がある。一つは吝嗇である。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
と云ううちに交通巡査も、物蔭ものかげに隠しておいた自働自転車を引ずり出して飛乗った。爆音を蹴散けちらして箱自動車セダンの跡を追った。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いつのにやら松がなくなったら、板橋街道のような希知けち宿しゅくの入口に出て来た。やッぱり板橋街道のように我多馬車がたばしゃが通る。一足先へ出た長蔵さんが、振り返って
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
笹村はふと頭が曇って来ると、得意になって二人のしていることに、片端からけちをつけずにはいられなかった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
米屋がどうの、炭屋がどうの——仮令たとへ餓ゑ死しようと、今更虹蓋つくるやうな卑劣けちな了簡を持つてたまるものか!
名工出世譚 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
其様そんけちな根性だからとても恋はかなはねヱ。之からちつ肝玉きもつたまを練る修行に時々吠えてやるかナ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
清吉そなた腑甲斐ふがいない、意地も察しもない男、なぜ私には打ち明けてこないだの夜の始末をば今まで話してくれなかった、私に聞かして気の毒とおつに遠慮をしたものか、あまりといえば狭隘けちな根性
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
寄生木になって栄えるは嫌いじゃ、矮小けちな下草になって枯れもしょう大樹おおきを頼まば肥料こやしにもなろうが、ただ寄生木になって高く止まる奴らを日ごろいくらも見ては卑しい奴めと心中で蔑視みさげていたに
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ひづめで落葉を蹶散けちらす音、これは騎兵演習の斥候せっこうか、さなくば夫婦連れで遠乗りに出かけた外国人である。何事をか声高こわだかに話しながらゆく村の者のだみ声、それもいつしか、遠ざかりゆく。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
味気なき世に未練はもたねばものの見事に死んで退けて、十兵衛という愚魯漢ばかものは自己が業の粗漏てぬかりより恥辱を受けても、生命惜しさに生存いきながらえて居るような鄙劣けちやつではなかりしか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「いや、こちらにも奇怪けちな事件がありましてね、村長さん!」
奇怪けちなことが起りをつてね、助役さん!」
下女の中にて三郎兵衞を少しうたがふ者ありしが夫は證據なき事とて是非なく今年ことし厄落やくおとしと斷念あきらめ帳面を〆切しめきりしが是を不幸けちの始として只一人の娘にむこえらあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勿論? 勿論ですとも! 何奴なにやつか知らんけれど、実にきたない根性、けちな奴等です。然し、怨を返すといふ点から謂つたら、奴等は立派に目的を
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すると、誰れも口をつぐんでしまって知らぬ顔をする。私はカッとなった。で、自分一人でその金を払おうかと思ったが、この田舎漢いなかもの卑吝けちな奴達のお先に使われるような気がして止した。
黄昏 (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
このうちは、金持かねもちでありながら、たいへん吝薔けちであるということを、むらでは、みんならぬものがないくらいでした。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
まけたとて大敗軍もねへもんだ其樣な少量けちな事を聞みゝへ此馬鹿八めとのゝしるにぞ目玉の八は負腹まけばらにて心地宜らぬ折柄をりから故大いにいかりナニ馬鹿八だと此拔作め口の横にさけまゝに餘り大造を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
堕落か成功か、其様そん屑々けちな評価は如何でも構わぬ。儂は告白する、儂は自然がヨリ好きだが、人間がいやではない。儂はヨリ多く田舎を好むが、都会とかいてることは出来ぬ。儂は一切が好きである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ねえ貴下、わたくしはなんの因果で弱小けち土地とこに生れたんでしょう。もうもうほんとに愛想が尽きたんですよ。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、結局この船に付いた怪痴けちを払い除ける事は出来なかったらしい。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
マルタいぬは一名を獅子犬と呼ばれてゐるが名ばかり立派でからもう弱虫なけちな奴だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
曹操がそれをあわれんで自身の一女を娶合めあわせたので、諸人の尊重をうけてきたが、ようやくその為人ひととなりが現われてくるにつれて天性やや軽躁けいそう、そして慳吝けちたちも見えてきたので
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「全体僕が零余子なんて稀知けちな号を使はずに、堂々と佐々木与次郎と署名して置けばかつた。実際あの論文は佐々木与次郎以外にけるものは一人ひとりもないんだからなあ」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けちえんのつかあなから一疋
蛍狩 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
潔癖は吾儘者の鄙吝けちな高慢である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人をほめれば自分の器量が下るとでも思うのか、人のた事には必ず非難けちを附けたがる、非難けちを附けてその非難けちを附けたのに必ず感服させたがる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
戦の潮合しほあひを心得た将門は、くつわつらね馬を飛ばして突撃した。下野勢は散〻に駈散けちらされて遁迷ひ、余るところは屈竟くつきやうの者のみの三百余人となつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)