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けち
ふりがな文庫
“
吝
(
けち
)” の例文
あの品の好い紳士は、あれで心は残酷で、
吝
(
けち
)
くさいのだろう。あの百姓は単純そうに見えて、本当に嫌にしつこくて
貪欲
(
どんよく
)
なのだろう。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
長「そりゃア知っていますが、女という奴ア
吝
(
けち
)
なもんで、お嬢さんのように施しを褒めてくれる女はございませんから持たないんです」
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「そんな
吝
(
けち
)
じゃアありませんや。お
望
(
のぞみ
)
なら、どれ、附けて上げましょう。」と
婦人
(
おんな
)
は切の端に銀流を
塗
(
まぶ
)
して、滝太郎の手を
密
(
そっ
)
と取った。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
いかにも
吝
(
けち
)
くさく
行
(
ぎょう
)
と行とをくっつけるように書いて行ったが、そうすると今度は余白がたくさん残るので、それも気が気ではないのだ。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
ニヤリニヤリと岡つ引を迎へると言つた肌合の女——
吝
(
けち
)
で無慈悲で、
強慾
(
がうよく
)
だつた寅五郎と、生れ變つて來ても氣性の合ひさうもない柄です。
銭形平次捕物控:121 土への愛著
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
この紳士はこの町で名高い
吝
(
けち
)
ん坊でしたが、つかつかと乞食の処に近よりまして、その若い男の死骸を買おうと申しました。
正夢
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
萠円
(著)
「こんなものをくれるところをもって見ると、それほど
吝
(
けち
)
でもないようだね。
他
(
ひと
)
の
家
(
うち
)
の子をブランコへ乗せてやらないって云うのは嘘だろう」
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「然うねえ。けれども余り安物を持ち込むのも考えものよ。田舎の人は直ぐに値踏みをしますからね。
吝
(
けち
)
だと思われちゃ業腹じゃありませんか?」
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
、頼まれたって触れて歩くような、そんな
吝
(
けち
)
な野郎でもございませんから御心配なさいますな。まあ、なんにしてもお怪我がなくてようございました
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『だつて兄樣、さうすれば九寸位になつてよ。可いわ、そんなら八寸にしときませう。』『
吝
(
けち
)
だな。も少し負けろ。』
鳥影
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
彼は、ぱふりぱふりと煙草を
燻
(
くゆ
)
らしながら、和尚の生活の
淫
(
みだ
)
らなことや、
吝
(
けち
)
で、彼には卵を食わせないこと、煙草も買ってくれないことなどを話した。
再度生老人
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
お客がビール一本注文したら三本位持って行って了うのだよ。カツレツなんか注文したら、そんな
吝
(
けち
)
くさい物を
女給
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
今お前が始めて受けた苦痛に促されてそう云ってくれるのを、己が
好
(
い
)
い事にして同意して、その
詞
(
ことば
)
に酔わされてしまっては、己は
吝
(
けち
)
な野郎になってしまう。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
『
安
(
やす
)
い
贈物
(
おくりもの
)
だ!』と
愛
(
あい
)
ちやんは
思
(
おも
)
ひました。『
私
(
わたし
)
は
誕生日
(
たんじやうび
)
に
此麽
(
こんな
)
吝
(
けち
)
な
贈物
(
おくりもの
)
をして
貰
(
もら
)
ひたくない!』
併
(
しか
)
し
愛
(
あい
)
ちやんは
敢
(
あへ
)
てそれを
聲
(
こゑ
)
に
出
(
だ
)
して
言
(
い
)
ひませんでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
説いてもらう法もあるが、大野は
吝
(
けち
)
ん坊で、七百両説に大賛成であろうし、大石は仇名の通り昼行灯で、算盤珠のことで殿に進言するという柄ではないし……
吉良上野の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
己れがもう少し大人に成ると質屋を出さして、昔しの通りでなくとも田中屋の看板をかけると楽しみにしてゐるよ、
他処
(
よそ
)
の人は祖母さんを
吝
(
けち
)
だと言ふけれど
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
金づかいは
吝
(
けち
)
な客だが
馴染
(
なじ
)
みは古い。またそれを腹勘定に入れているこのお客さまだ。やたら小女にまで威張り散らしていたが、ふと白壁の書に目をとめて。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その風呂敷も一緒に焼いてしまえば好かったんですが、そこが人情の
吝
(
けち
)
なところで、風呂敷まで焼くにも及ぶまいと、そのまま残して置いたのが運の尽きでした
半七捕物帳:50 正雪の絵馬
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その多くは
無代価
(
ただ
)
で書物を貰はうとする
吝
(
けち
)
な
輩
(
てあひ
)
で「
平素
(
ふだん
)
から
貴君
(
あなた
)
を尊敬してゐる」とか、「御著作は欠かさず読んでゐるが、近頃手許が苦しくて買へないから」
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
気の毒な事には、この油断のない、
吝
(
けち
)
な末造の処置を、お玉親子は大そう善意に解釈して、現金を手に渡されぬのを、自分達が尊敬せられているからだと思った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
兄貴のやつ
吝
(
けち
)
なことをしないで、もう二三枚
呉
(
く
)
れておけばいいのに。などと、
肚
(
はら
)
のなかで舌打ちをした。
風流太平記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
さて竜に生まるるは、必ずしも
瞋痴
(
ばかにおこ
)
った者に限らず、
吝嗇
(
けち
)
な奴も婬乱な人も生まれるので、
吝
(
けち
)
な奴が転生した竜は相変らず
慳
(
しわ
)
く、
婬
(
みだら
)
なものがなった竜は、依然多淫だ。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「これが本当に罰が当つたと云ふものだ。ちよいと
吝
(
けち
)
な考を出したゞけで、遣る物は倍になつた。」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
どうしてって、家の遠いのも厭だったし、姑という人が、物がたくさんあり余る癖に
吝
(
けち
)
くさくて、三年いても前垂一つ私の物と言って拵えてくれたことせえなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
アイルランド人を
吝
(
けち
)
ん坊とするように、よく漫画雑誌などの材料にせられたものである。
放心教授
(新字新仮名)
/
森於菟
(著)
と、そんな
吝
(
けち
)
な肉感なんか、忽ちすッとんでしまうほど空はとろけそうに碧く、ギラギラ燃えていた。その空の奥に、あなたの顔の
輪廓
(
りんかく
)
が、ぼおっと浮んだような気がしました。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「
汝
(
きさま
)
も懸賞小説なんぞと
吝
(
けち
)
な
所為
(
まね
)
をするない。三文小説家になつて
奈何
(
どう
)
する気ぢや。」
貧書生
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
外
(
ほか
)
の在留して居る日本人が下宿の飯は
吝
(
けち
)
臭いと云つてよくこぼすが、おれの下宿は反対に潤沢なのに驚く。元来少食なおれは
兎角
(
とかく
)
辞退ばかりしなければならないのに弱る程である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
ある時ふと其感情を
損
(
そこ
)
ねてからと言ふものは、重右衛門
大童
(
おほわらは
)
になつて怒つて、「何だ、この重右衛門一人、村で養つて行けぬと
謂
(
い
)
ふのか。そんな
吝
(
けち
)
くさい村だら、片端から焼払つて了へ」
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
吝
(
けち
)
ン坊で、不妊症のこの田舎女房は、青く鳥肌だった顔をしょッちゅう戸外へむけていて、馬を
挽
(
ひ
)
っぱった
頬被
(
ほおかむ
)
りや、自転車に乗った百姓達を見ると、顔色とまるで反対な声を出して——
一寸
(
ちょっと
)
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
青昆布などの
扱
(
あし
)
らいに、ツイ騙されて南京米をも知らずに頬張るが、以前はそんな
吝
(
けち
)
なのはなかったものだ、
憚
(
はばか
)
んながら今でも千住の鈴木まで買いにゆくなら、ころもにしてある油揚も別製なれば
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
人間って
吝
(
けち
)
だから三百円もする金魚は決して殺しはしないわよ、それに、皆さんは金魚だけはどんな残酷屋さんでも、殺すもんですか、金魚は生涯可愛がられることしか、皆さんから貰ってないもの
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
吝
(
けち
)
なファウスト奴。貴様は見違えた奴になったなあ。2720
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「なんだい、
吝
(
けち
)
ん坊の婆あ——」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
彼
(
あ
)
の
坊主
(
ばうず
)
は
妙
(
めう
)
な事を
云
(
い
)
ふて、人の見て
居
(
ゐ
)
る
前
(
まい
)
では物が
喰
(
く
)
はれないなんて、
全体
(
ぜんたい
)
アノ
坊主
(
ばうず
)
は
大変
(
たいへん
)
に
吝
(
けち
)
で
金
(
かね
)
を
溜
(
ため
)
る
奴
(
やつ
)
だと
云
(
い
)
ふ事を聞いて
居
(
ゐ
)
るが
黄金餅
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「
吝
(
けち
)
なことをお言いなさんな、お民さん、
阿母
(
おふくろ
)
は
行火
(
あんか
)
だというのに、押入には
葛籠
(
つづら
)
へ入って、まだ
蚊帳
(
かや
)
があるという騒ぎだ。」
女客
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寅五郎が
吝
(
けち
)
なのと、お富が
我儘
(
わがまま
)
なせいだろう。五年も前から寝部屋まで別にして、お富は姪のお豊と一緒に裏二階に寝ている
銭形平次捕物控:121 土への愛着
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
この講堂にかくまでつめかけられた人数の景況から
推
(
お
)
すと堺と云う所はけっして
吝
(
けち
)
な所ではない、
偉
(
えら
)
い所に違いない。
中味と形式
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが
吝
(
けち
)
でなく、無駄をしないという感じなので気もちがよかった。折からの雪をとって来て土瓶の中に入れながら
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
一知はマユミの両親が極度に浅ましい
吝
(
けち
)
ん
坊
(
ぼ
)
であると同時に、鬼とも
獣
(
けもの
)
とも
譬
(
たと
)
えようのない残酷な
嫉妬焼
(
やきもちや
)
きである事を、ずっと以前から予想していた。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一体己がこんな事をお前にいうのは
吝
(
けち
)
なのだ。
馬鹿
(
ばか
)
だと云っても
好
(
い
)
いかも知れない。しかし考えて見てくれ。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
今は
紙幣
(
さつ
)
びらを切つてゐる成金の、
吝
(
けち
)
な、
見窄
(
みすぼ
)
らしかつた以前を知つてゐるのは、この婆芸者である。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
昔
(
むか
)
しの
通
(
とほ
)
りでなくとも
田中屋
(
たなかや
)
の
看板
(
かんばん
)
をかけると
樂
(
たの
)
しみにして
居
(
ゐ
)
るよ、
他處
(
よそ
)
の
人
(
ひと
)
は
祖母
(
おばあ
)
さんを
吝
(
けち
)
だと
言
(
い
)
ふけれど、
己
(
お
)
れの
爲
(
ため
)
に
儉約
(
つましく
)
して
呉
(
く
)
れるのだから
氣
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でならない
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼は
吝
(
けち
)
でないので、ずいぶん思い切って金を遣った。しかもその縄張りは余り広くないので、収支がとても
償
(
つぐな
)
わない。彼の身代はますます
削
(
けず
)
られてゆくばかりであった。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
土蔵付きの
母屋
(
おもや
)
が、八間か九間、家は広いが、
吝
(
けち
)
ン
坊
(
ぼう
)
な権内は、ろくに
雇人
(
やといにん
)
も使っていない。
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吝
(
けち
)
な野郎ぢやナ。一生に一度の大作を残して
書籍館
(
しよじやくゝわん
)
に御厄介を掛けて奈何する気ぢや。
貧書生
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
親分が——
日済貸
(
ひなしが
)
しが利をはたるような
吝
(
けち
)
な真似をしてねえで、
奪
(
と
)
るならすっぱりと気持よく奪れ、やくざの繩張は腕と腕だ……とおっしゃったところ、鼻猪之め、にやりと笑って
無頼は討たず
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
吝
(
けち
)
な癖に、女には目がないとか、不思議に
食奢
(
くいおごり
)
だけはするとか云うのがそれである。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「うむ、水戸はいったい
吝
(
けち
)
なところじゃ、
家中
(
かちゅう
)
を廻り歩いてもトンと
祝儀
(
しゅうぎ
)
が出まい」
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「けれども
他
(
ほか
)
の方の振り合いもございますから、今も申しました通り、私、出すなら
余
(
あんま
)
り
吝
(
けち
)
なことはしたくありませんの。
如何
(
いかが
)
でしょう、五十円ばかり? ねえ、あなた、五十円丈け?」
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
吝
漢検1級
部首:⼝
7画
“吝”を含む語句
吝嗇
吝嗇漢
吝嗇家
吝嗇坊
鄙吝
吝々
物吝
卑吝
吝嗇者
慳吝
吝嗇奴
吝嗇爺
吝嗇屋
吝嗇臭
吝坊
吝垂
吝気
吝臭
吝薔
貪吝
...