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田中屋
友達いやしがりて
萬年町の
呼名今に
殘れども、三五
郎といへば
滑稽者と
承知して
憎くむ
者の
無きも一
徳なりし、
田中屋は
我が
命の
綱、
親子が
蒙むる
御恩すくなからず
昔しの
通りでなくとも
田中屋の
看板をかけると
樂しみにして
居るよ、
他處の
人は
祖母さんを
吝だと
言ふけれど、
己れの
爲に
儉約して
呉れるのだから
氣の
毒でならない
馬鹿さわぎもせねば
串談も三ちやんの
樣では
無けれど、
人好きのするは
金持の
息子さんに
珍らしい
愛敬、
何と
御覽じたか
田中屋の
後家さまがいやらしさを、あれで
年は六十四