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吝嗇
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りんしょく
ふりがな文庫
“
吝嗇
(
りんしょく
)” の例文
そのために、
吝嗇
(
りんしょく
)
な客ほど彼をひいきにする、といわれていた。この、客と船頭との微妙な因果関係については、こういう例がある。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
強欲、残忍、
吝嗇
(
りんしょく
)
、
佞奸
(
ねいかん
)
、あらゆる悪評を冷視して一代に蓄えてきた金銀財宝、倉に
充
(
み
)
つる財貨は、いったいどうなったことやらと?
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
説いたが春琴も
道修町
(
どしょうまち
)
の町家の生れであるどうしてその辺にぬかりがあろうや極端に
奢侈
(
しゃし
)
を好む一面極端に
吝嗇
(
りんしょく
)
で
慾張
(
よくば
)
りであった。
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
与えられるものを、黙って着ている。また私は、どういうものだか、自分の衣服や、シャツや
下駄
(
げた
)
に於いては極端に
吝嗇
(
りんしょく
)
である。
服装に就いて
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
コスモはもう
譬
(
たと
)
えようのない嬉しさであった。たいていの人間は秘密な宝をかくし持っているものである。
吝嗇
(
りんしょく
)
の人間は金をかくしている。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
▼ もっと見る
そのために、人々はみんな左内のふるまいを、奇怪なこととあやしんで、あれは
吝嗇
(
りんしょく
)
で根性いやしい無風流者だと、爪はじきをして憎んだ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
そして彼はまんまと目的を達した。ロドルフは
吝嗇
(
りんしょく
)
にもかかわらず、クリストフと同様に、エルンストから
騙
(
だま
)
し取られていた。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
平生人には
吝嗇
(
りんしょく
)
と言われるほどの、倹約な生活をしていて、衣類は自分が役目のために着るもののほか、寝巻しかこしらえぬくらいにしている。
高瀬舟
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
一つフロックコートで
患者
(
かんじゃ
)
も
受
(
う
)
け、
食事
(
しょくじ
)
もし、
客
(
きゃく
)
にも
行
(
ゆ
)
く。しかしそれは
彼
(
かれ
)
が
吝嗇
(
りんしょく
)
なるのではなく、
扮装
(
なり
)
などには
全
(
まった
)
く
無頓着
(
むとんじゃく
)
なのに
由
(
よ
)
るのである。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
六白に生まるる人は、
愛敬
(
あいきょう
)
うすく、親戚、朋輩の交わり絶ち、かつ
吝嗇
(
りんしょく
)
の心あるがゆえに、人にうとまるるなり。もっとも、その性質朴なるものなり。
妖怪学
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
父親は娘の前途を
呪
(
のろ
)
っただけで、
行方
(
ゆくえ
)
を捜索しようともしなかった。家の中はいよいよ
落莫
(
らくばく
)
たるものになった。主人の
吝嗇
(
りんしょく
)
はますます露骨になってきた。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
倹約は
吝嗇
(
りんしょく
)
に傾きやすく文華は
淫肆
(
いんし
)
に陥りやすく尚武はとかくお
釜
(
かま
)
をねらひたがるなり。尚武の人は言ふおかまは武士道の弊の一端なり。
白璧
(
はくへき
)
の
微瑕
(
びか
)
なり。
猥褻独問答
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
男女教員の風儀だとか
吝嗇
(
りんしょく
)
とか不勤勉ということが村人の眼にあまるのである。ところがそういう村人は森の小獣と同じように
野合
(
やごう
)
にふけっているのである。
禅僧
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
鼠は好んで人の物を盗み
匿
(
かく
)
す。西鶴の『
胸算用
(
むねさんよう
)
』一に、
吝嗇
(
りんしょく
)
な隠居婆が、妹に貰いし年玉金を失い歎くに、家内の者ども疑わるる事の迷惑と諸神に祈誓する。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
アリストテレースは
凡
(
すべ
)
て徳は中庸にあるとなし、たとえば勇気は粗暴と
怯弱
(
きょうじゃく
)
との中庸で、節倹は
吝嗇
(
りんしょく
)
と浪費との中庸であるといった。能く
子思
(
しし
)
の考に似ている。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
そうして彼ら夫婦は
極
(
きわ
)
めて冷やかな極めて
吝嗇
(
りんしょく
)
な人達です。だから来た当座僕は空腹に堪えかねて、三日に一遍ぐらい姉の
家
(
うち
)
へ帰って飯を食わして貰いました。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし、この頑固さを、世間でいうように、強欲とか
吝嗇
(
りんしょく
)
とかに片づけてしまうのは当らないと思った。
吉良上野の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
な人間が生前に隠して置いた
財物
(
ざいもつ
)
の附近に、夜中徘徊するというのもやはりこのわけです。この人たちは自分の
黄金
(
こがね
)
に対して厳重な見張りをしているのです。
世界怪談名作集:11 聖餐祭
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
なその家ではそうした残り肴をとられても口ぎたなく
罵
(
ののし
)
られるので、お菊は驚いて猫を追いのけようとした。その
機
(
はずみ
)
に手にしていた皿が落ちて
破
(
わ
)
れてしまった。
皿屋敷
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
従来親戚の間の評判のよくない私、妄想や、誤解や、曲解や、悪意や、敵意から、偏屈、一刻、怠惰、
吝嗇
(
りんしょく
)
、
貪慾
(
どんよく
)
、等、等、勝手放題な悪名をばらまかれた私である。
結婚
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
第三に
吝嗇
(
りんしょく
)
の
譏
(
そしり
)
さえ招いだ彼の節倹のおかげだった。彼ははっきりと覚えている——
大溝
(
おおどぶ
)
に面した貸本屋を、人の好い貸本屋の婆さんを、婆さんの内職にする
花簪
(
はなかんざし
)
を。
大導寺信輔の半生:――或精神的風景画――
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
の、
貪欲
(
どんよく
)
の、冷淡の、悪意の、残忍の、勝利の、歓喜の、極端な恐怖の、強烈な——無上の絶望の、広大な精神力の諸観念が、雑然とかつ逆説的に湧き上ったのである。
群集の人
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
してみれば、今安次を勘次の家へ、株内と云う口実で連れていったとしたならば? 勘次の母の
吝嗇
(
りんしょく
)
加減を知っていればそれだけ、秋三には彼女の
狼狽
(
うろた
)
える様子が眼に見えた。
南北
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
なんでも大変
吝嗇
(
りんしょく
)
な武士で金銭ばかり数えている者で人に
嘲
(
あざけ
)
られていたが、ある事変が起って、人を助けなければならない時、日頃愛する金銭を、すこしもかえりみなかったので
旧聞日本橋:04 源泉小学校
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
そして、芯だけになったのに、
吝嗇
(
りんしょく
)
なラザレフが
点
(
とも
)
したとすると、芯の下方が燃えることになるから、下の蝋が熔けるにつれて、横倒しに押し流され炎が直立しなくなってしまうぜ。
聖アレキセイ寺院の惨劇
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
狡猾
(
こうかつ
)
で、
吝嗇
(
りんしょく
)
で、不潔で、ほとんど始末の付かない者のように認められているらしいが、必ずしもそんな人間ばかりで無いと云うことを、私の実験によって語りたいと思うのである。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
手強
(
てごわ
)
く意見をするお皆を裸にして放り出したのは今から十年前、お皆は人知れず娘のお浜と
往来
(
ゆきき
)
して、夫の心の解けるのを待ちましたが、多の市の非道と
吝嗇
(
りんしょく
)
は年とともに募るばかり
銭形平次捕物控:064 九百九十両
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
な男が自分の宝と置き換えられた石をながめている時でも、詩人がたましいをこめた、ただひとつの原稿を何かのために火に
焚
(
や
)
こうとしている時でも、この時における彼女ほどには
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
・貪慾ないしは幸運によって、一門の旧家であるがごとく反りかえって歩くと、後ろ指をさす者などもあったか知らぬが、実は今日のごとく経済上の異動の激烈でない時代においては
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ソノ金ヲ皆ンナ遣ッテ仕舞ッタガ二月バカリデ知ッテ、兄ガ
吝嗇
(
りんしょく
)
故ニ大層ニオコッタカラ、トウトウドコマデモ知ラヌ顔デシマッタガ蔵宿デハイロイロセンサクヲシタガ、知レズニシマッタ
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そして生活ぶりは極度に
吝嗇
(
りんしょく
)
を極めて人との交際を
嫌厭
(
けんえん
)
しておりますから、近隣のものでこの男と
往来
(
ゆきき
)
しているのはほとんどありませんし、また当人がこれだけの財を持っているということを
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
すべての美点は欠点のうちに投げ込まれるものだ。倹約は
吝嗇
(
りんしょく
)
に近く、寛大は浪費に接し、勇気はからいばりに隣する。きわめて
敬虔
(
けいけん
)
なことを
云々
(
うんぬん
)
する者は、多少迷信的な言葉を発するものだ。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼女はいったい
身嗜
(
みだしな
)
みに金を懸ける方であったのに、板倉とああ云う仲になってからは貯金の必要を感じ出すと共に
吝嗇
(
りんしょく
)
になり
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
日常のごく
些細
(
ささい
)
なことで、女の信乃が恥かしくなるほどこまかく、倹約というより寧ろ
吝嗇
(
りんしょく
)
にちかいところが少くなかった。
めおと蝶
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこが学者であるということになっていた。近所での黄村の評判はあまりよくなかった。極端に
吝嗇
(
りんしょく
)
であるとされていた。
ロマネスク
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
なぜだろう、なぜだろうと云ううちに、いつかあれは
吝嗇
(
りんしょく
)
なのだということに
極
(
き
)
まってしまったそうだ。僕は書生の時から知っていたが、吝嗇ではなかった。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
吝嗇
(
りんしょく
)
一方にて金をたくわえ、公共慈善等には一銭も出金せぬものに対し、他よりその行為を
擯斥
(
ひんせき
)
して、かの家は犬神の系統である、人狐の
住家
(
すみか
)
であると称し
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
あたかも一握りの黄金を握りしめてる
吝嗇
(
りんしょく
)
家のように、戦々
兢々
(
きょうきょう
)
として自分だけを守ってる愛情だった。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「
吝嗇
(
りんしょく
)
のためにするように考えられては、藤吉郎という、この家の
主
(
あるじ
)
の
障
(
さわ
)
りになる。そうした向きで用のない商人には、せいぜいなんぞ他の物を買うてとらすがよい」
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は浪費家であるけれども、根は
吝嗇
(
りんしょく
)
で、つまりキンケン
力行
(
りっこう
)
の世人よりもお金を惜しみ物を惜しむ人間の執念を恵まれているのだが、
守銭奴
(
しゅせんど
)
の執念をもちながら浪費家だ。
オモチャ箱
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
また悪事を行なう欲ふかで
吝嗇
(
りんしょく
)
な人が、そのために富み栄えるばかりか、長寿まで保ってその終りをまっとうするということについては、私なりの異なった見解があるのです。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
なお言い換えると、描写された性格が一字もしくは二三字の記号につづまってしまう。勇気のある人、親切な人、
吝嗇
(
りんしょく
)
な人と云った風に簡単になる、すなわち覚えやすくなる。
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
文次郎とお菊は、もとより継母の深い心も知らず、ただもうお嘉代の世にも
稀
(
まれ
)
なる
吝嗇
(
りんしょく
)
に愛想を尽かし、日頃心ひそかに
怨
(
うら
)
んで、しばらく江戸から姿を隠そうと、相談しているのでした。
銭形平次捕物控:147 縞の財布
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
姉も同じく、配給所の前に立並ぶ女達の中には少くとも五、六人は似た顔立を見るような奥さんである。ヒステリックでもなく、と云って、さほど
野呂間
(
のろま
)
にも見えず
華美
(
はで
)
好きでも
吝嗇
(
りんしょく
)
でもない。
或夜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ええ、内匠頭の短慮と
吝嗇
(
りんしょく
)
はよく知っていますが、殿中で切りつけるには、よくよく堪忍のできぬことがあってのことだろうというので、やはり同情されています。梶川の評判はよくないようです。
吉良上野の立場
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
例の格式更新の願いが彼の
吝嗇
(
りんしょく
)
から出たというのである。奉行職になれない不満だろう、とか。格式よりも金のほうが大事なんだろう、とか。
竹柏記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
けれども、あまり学校へは行かなかった。からだが弱いのである。これは、ほんものの病人である。おどろくほど、美しい顔をしていた。
吝嗇
(
りんしょく
)
である。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あわてて言いだした——(彼は根は悪い男ではなかった。
吝嗇
(
りんしょく
)
と見栄とが彼のうちで争っていた。クリストフに恵んでやりたくはあったが、なるべく安価に済ましたかった。)
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
いったい信長には、その豪放と派手気に似合わず、本性は
吝嗇
(
りんしょく
)
なのだという評がよく世間に
撒
(
ま
)
かれていた。また実際、その例ともいえるようなことを挙げればいくらでもあった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
女主人お米の徹底した
吝嗇
(
りんしょく
)
振りはさすがに和助の口から言い兼ねた様子です。
銭形平次捕物控:070 二本の脇差
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
“吝嗇(けち)”の解説
けちは、金銭や品物を惜しんで出さないこと、また、そのような人。吝嗇家(りんしょくか)ともいい、「けち」に「吝嗇」の字を当てることもある。また、特に金銭を溜め込むことに執着する人物は「守銭奴(しゅせんど)」と称されることもある。誤った用法であるが、金に執着する人のことを「銭ゲバ」と呼ぶ場合も有る。
人物類型としてのけちは、いつの時代にも人気のある魅力的な題材であり、様々な文化において作家や芸術家が作品を生み出す豊かな主題となってきた。
(出典:Wikipedia)
吝
漢検1級
部首:⼝
7画
嗇
漢検1級
部首:⼝
13画
“吝嗇”で始まる語句
吝嗇家
吝嗇漢
吝嗇坊
吝嗇者
吝嗇奴
吝嗇屋
吝嗇爺
吝嗇臭