或夜あるよる
季子は省線市川駅の待合所に入って腰掛に腰をかけた。しかし東京へも、どこへも、行こうという訳ではない。公園のベンチや路傍の石にでも腰をかけるのと同じように、ただぼんやりと、しばらくの間腰をかけていようというのである。 改札口の高い壁の上に装置 …
題名が同じ作品
或夜 (旧字旧仮名)永井荷風 (著)