“烟”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
けむり55.5%
けむ24.5%
けぶり8.1%
けぶ6.0%
けふり1.8%
けふ1.8%
たばこ0.9%
カマド0.6%
えん0.3%
かす0.3%
むせ0.3%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
彼の考えは吐き出される煙草のけむりのように渦巻いた——彼は刑事に尾行されている——彼は郵便局の現金を盗み出したのであろうか。
あめんちあ (新字新仮名) / 富ノ沢麟太郎(著)
これはそも驚くまじき事か、火のが降るやうに満面に吹き附けて、すぐ下の家屋の窓からは、黒くきいろけむと赤い長い火の影とが……
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「むずかしいなあ。これで好いか」末造はけぶりを吹きつつ縁側に背中を向けた。そして心中になんと云うあどけない奴だろうと思った。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
角海老かどゑびが時計の響きもそぞろ哀れのを伝へるやうに成れば、四季絶間なき日暮里につぽりの火の光りもあれが人を焼くけぶりかとうら悲しく
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うろにのぞんでたきたてしに熊はさらにいでず、うろふかきゆゑにけふりおくいたらざるならんと次日つぎのひたきゞし山もやけよとたきけるに
さもうれしげにうなづくと見えしがけふりのごとくきえうせ、月は皎々けう/\として雪をてらせり。
毛氈まうせん老樹らうじゆもとにしきたばこくゆらせつゝ眺望みわたせば、引舟は浪にさかのぼりてうごかざるが如く、くだる舟はながれしたがふてとぶたり。行雁かうがん字をならべ帰樵きせう画をひらく。
又此汐の満ち干る如満ち干よ。又此石の沈むが如沈みこやせと咀言してカマド(?)の上に置かしたと言ふのが著しい例である。
二仕掛を左右さゆうげんに下し終り手を拭いてえんを吹く時。後の方には、船頭の鈴を弄する声す。亦投綸とうりんに取りかかりたるを知る。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
日浮びてひかりを重ね、雲散りてかすまず。えだを連ね穗をはすしるしふみひとしるすことを絶たず、とぶひを列ね、をさを重ぬるみつきみくらに空しき月無し。名は文命よりも高く、徳は天乙にまされりと謂ひつべし。
顔は煙にむせびながら、眉をひそめて、空ざまに車蓋やかたを仰いで居りませう。手は下簾したすだれを引きちぎつて、降りかゝる火の粉の雨を防がうとしてゐるかも知れませぬ。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)