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烟
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けぶり
ふりがな文庫
“
烟
(
けぶり
)” の例文
「むずかしいなあ。これで好いか」末造は
烟
(
けぶり
)
を吹きつつ縁側に背中を向けた。そして心中になんと云うあどけない奴だろうと思った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
天
(
そら
)
を仰ぎ、地を
敲
(
たた
)
きて
哭悲
(
なきかな
)
しみ、
九三
ともにもと物狂はしきを、さまざまといひ
和
(
なぐさ
)
めて、かくてはとて
遂
(
つひ
)
に
九四
曠野
(
あらの
)
の
烟
(
けぶり
)
となしはてぬ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
横ぎりて六時發横川行の滊車に乘らんと急ぎしに
冗口
(
むだぐち
)
といふ魔がさして
停車塲
(
ステーシヨン
)
へ着く此時おそく
彼時
(
かのとき
)
迅
(
はや
)
く滊笛一聲上野の森に
烟
(
けぶり
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
応接室へ帰つてから、一同雑談で持切つて、室内に籠る
煙草
(
たばこ
)
の
烟
(
けぶり
)
は丁度白い
渦
(
うづ
)
のやう。茶でも出すと見えて、小使は出たり入つたりして居た。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
六千四百
噸
(
とん
)
の
巨船
(
きよせん
)
もすでに
半
(
なかば
)
は
傾
(
かたむ
)
き、
二本
(
にほん
)
の
煙筒
(
えんとう
)
から
眞黒
(
まつくろ
)
に
吐出
(
はきだ
)
す
烟
(
けぶり
)
は、
恰
(
あたか
)
も
斷末魔
(
だんまつま
)
の
苦悶
(
くもん
)
を
訴
(
うつた
)
へて
居
(
を
)
るかのやうである。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
安
(
やす
)
んじけりさるにても
訝
(
いぶか
)
しきは
松澤夫婦
(
まつざはふうふ
)
が
上
(
うへ
)
にこそ
芳之助
(
よしのすけ
)
在世
(
ざいせ
)
の
時
(
とき
)
だに
引窓
(
ひきまど
)
の
烟
(
けぶり
)
たえ/″\なりしを
今
(
いま
)
はたいかに
其日
(
そのひ
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
倒れながら
屹
(
きっ
)
とその
面
(
おもて
)
を上げると、翼で群蝶を
掻乱
(
かきみだ
)
して、白い
烟
(
けぶり
)
の立つ中で、鷲は
颯
(
さっ
)
と舞い上るのを、血走った目に
瞶
(
みつ
)
めながら少年は
衝
(
つ
)
と立った。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人これをえず
徒
(
いたづら
)
にその
生命
(
いのち
)
を終らば地上に殘すおのが
記念
(
かたみ
)
はたゞ
空
(
そら
)
の
烟
(
けぶり
)
水の
泡抹
(
うたかた
)
のみ 四九—五一
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
四季絶間なき
日暮里
(
にっぽり
)
の火の光りもあれが人を焼く
烟
(
けぶり
)
かとうら悲しく、茶屋が裏ゆく土手下の細道に落ちかかるやうな三味の音を仰いで聞けば、
仲之町
(
なかのちょう
)
芸者が
冴
(
さ
)
えたる腕に
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
乃
(
すなは
)
ち溪聲を樹間に求め、樹に
縋
(
すが
)
り、石に
凭
(
よ
)
りて
纔
(
わづ
)
かにこれを窺ふ。水は國道の絶崖に
偏
(
かたよ
)
りて、其處に劒の如く
聳立
(
しやうりつ
)
せる
大岩
(
たいがん
)
に
衝
(
あた
)
り、その飛沫の飛散する霧のごとく
烟
(
けぶり
)
の如し。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
忽
(
たちま
)
ちその「ましん」も生徒も
烟
(
けぶり
)
の如く
痕迹
(
あとかた
)
もなく消え
失
(
う
)
せて、ふとまた木目が眼に入った。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
烟
(
けぶり
)
は
低
(
ひく
)
い
檐
(
のき
)
を
偃
(
は
)
つて、ぐる/\と
空間
(
くうかん
)
が
廻轉
(
くわいてん
)
するやうに
見
(
み
)
えつゝ
飛
(
と
)
び
散
(
ち
)
る
忙
(
せは
)
しい
雪
(
ゆき
)
の
爲
(
ため
)
に
遁
(
に
)
げ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
を
妨
(
さまた
)
げられたやうに
低
(
ひく
)
く
彷徨
(
さまよ
)
うて
行
(
ゆ
)
く。おつぎは
外側
(
そとがは
)
に
置
(
お
)
いた
手桶
(
てをけ
)
を
執
(
と
)
つた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
或るときは共に舟に
棹
(
さをさ
)
して青海原を渡り、烟立つヱズヰオの山に漕ぎ寄せつるに、山は
全
(
また
)
く水晶より成れりと覺しく、巖の底なる
洪爐
(
こうろ
)
中に、
烟
(
けぶり
)
渦卷
(
うづま
)
き火燃え上るさま
掌
(
たなぞこ
)
に指すが如くなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
大分
騒々敷
(
そうぞうし
)
い
容子
(
ようす
)
だが
烟
(
けぶり
)
でも見えるかと云うので、生徒
等
(
ら
)
は面白がって
梯子
(
はしご
)
に
登
(
のぼっ
)
て屋根の上から見物する。何でも昼から
暮
(
くれ
)
過ぎまでの戦争でしたが、
此方
(
こちら
)
に関係がなければ怖い事もない。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
夢路を辿る心地して、瀧口は夜すがら馳せて
辛
(
やうや
)
く着ける和歌の浦。見渡せば
海原
(
うなばら
)
遠
(
とほ
)
く
烟
(
けぶり
)
籠
(
こ
)
めて、月影ならで物もなく、濱千鳥聲絶えて、浦吹く風に音澄める
磯馳松
(
そなれまつ
)
、波の響のみいと冴えたり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
隈
(
くま
)
青き
眼
(
め
)
の光
烟
(
けぶり
)
とともにスツポンの深き
恐怖
(
おそれ
)
よりせりあがる。……
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
紅流に
烟
(
けぶり
)
たち
海潮音
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
唯
(
ただ
)
一人暇を取らずにいた女中が驚き
醒
(
さ
)
めて、
烟
(
けぶり
)
の
厨
(
くりや
)
を
罩
(
こ
)
むるを見、
引窓
(
ひきまど
)
を開きつつ人を呼んだ。浴室は
庖厨
(
ほうちゅう
)
の外に接していたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
仏前の燈明は線香の
烟
(
けぶり
)
に交る夜の空気を照らして、何となく部屋の内も混雑して居るやうに見える。父の
遺骸
(
なきがら
)
を納めたといふは、
極
(
ご
)
く粗末な棺。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
蚊いぶし火鉢に火を取分けて三尺の椽に
持出
(
もちいだ
)
し、拾ひ集めの杉の葉を
冠
(
かぶ
)
せてふうふうと
吹立
(
ふきたつ
)
れば、ふすふすと
烟
(
けぶり
)
たちのぼりて
軒場
(
のきば
)
にのがれる蚊の声
悽
(
すさ
)
まじし
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
見上
(
みあぐ
)
る山には松にかゝりて藤の花盛りなり
見下
(
みおろ
)
せば岩をつゝみて山吹咲こぼれたり
躑躅
(
つゝぢ
)
石楠花
(
しやくなげ
)
其間に色を交へ木曾川は雪と散り玉と碎け木曾山は雲を吐き
烟
(
けぶり
)
を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
私は時々縁側に出て見たが、崖下には人
一人
(
いちにん
)
も居ないように寂として居て、それかと思う
烟
(
けぶり
)
も見えず、近くの植込の
間
(
あいだ
)
から、積った雪の滑り落ちる響が、淋し気に聞えるばかり。
狐
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
大口
開
(
あ
)
いて馭者は
心快
(
こころよ
)
げに笑えり。白糸は再び煙管を
仮
(
か
)
りて、のどかに
烟
(
けぶり
)
を吹きつつ
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母
(
はゝ
)
なるものは
青
(
あを
)
い
烟
(
けぶり
)
に
滿
(
みち
)
た
竈
(
かまど
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つては
裾
(
うづくま
)
りつゝ、
燈火
(
ともしび
)
を
點
(
つ
)
ける
餘裕
(
よゆう
)
もなく
我
(
わ
)
が
子
(
こ
)
をぶつ/\と
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
恁
(
か
)
うして
忙
(
いそが
)
しさに
楢
(
なら
)
や
雜木
(
ざふき
)
の
枝
(
えだ
)
で
欺
(
あざむ
)
いた
手段
(
しゆだん
)
が
發見
(
はつけん
)
されないのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
漸
(
ようや
)
くの事で空しき
骸
(
から
)
を
菩提所
(
ぼだいしょ
)
へ送りて
荼毘
(
だび
)
一片の
烟
(
けぶり
)
と立上らせてしまう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
老婆は話し了りて、燃えぬ薪の
烟
(
けぶり
)
に
咽
(
むせ
)
びて、
涙
(
なみだ
)
押拭
(
おしのご
)
ひぬ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
紅流に
烟
(
けぶり
)
たち
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
ところ/″\に高く
顕
(
あらは
)
れた寺院と樹木の梢まで——すべて旧めかしい町の
光景
(
ありさま
)
が香の
烟
(
けぶり
)
の中に包まれて見える。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
末造は折々烟草を呑んで
烟
(
けぶり
)
を吹きながら、
矢張
(
やはり
)
女房の顔を暗示するようにじっと見て、こんな事を言っている。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
厭
(
い
)
やと
思
(
おも
)
へば
日
(
ひ
)
がな
一日
(
いちにち
)
ごろ/\として
烟
(
けぶり
)
のやうに
暮
(
くら
)
して
居
(
ゐ
)
まする、
貴孃
(
あなた
)
は
相變
(
あいかは
)
らずの
美
(
うつ
)
くしさ、
奧樣
(
おくさま
)
にお
成
(
な
)
りなされたと
聞
(
き
)
いた
時
(
とき
)
から
夫
(
それ
)
でも一
度
(
ど
)
は
拜
(
おが
)
む
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
るか
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
一団の
烟
(
けぶり
)
が急に
渦
(
うづま
)
いて出るのを、
掴
(
つか
)
んで投げんと欲するごとく、婆さんは手を
掉
(
ふ
)
った。風があたって、
※
(
ぱっ
)
とする下火の影に、その髪は白く、顔は赤い。
黄昏
(
たそがれ
)
の色は一面に裏山を
籠
(
こ
)
めて庭に
懸
(
かか
)
れり。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
公債の利の細い
烟
(
けぶり
)
を立てている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
明
(
あく
)
る年の一月、謝肉祭の頃なりき、家財衣類なども売尽して、日々の
烟
(
けぶり
)
も立てかぬるやうになりしかば、貧しき子供の群に入りてわれも
菫花
(
すみれ
)
売ることを覚えつ。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
厭やと思へば日がな一日ごろごろとして
烟
(
けぶり
)
のやうに暮してゐまする、
貴嬢
(
あなた
)
は相変らずの美くしさ、奥様にお成りなされたと聞いた時からそれでも一度は拝む事が出来るか
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「何か又、お前が誤解したんだろう——雲を
烟
(
けぶり
)
と間違えたんじゃないか」
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
杉葉の
瓦鉢
(
かわらばち
)
の底に赤く残って、
烟
(
けぶり
)
も立たず燃え尽しぬ。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
小林
(
こばやし
)
ぬしは明日わが隊とともにムッチェンのかたへ立ちたまふべければ、君たちの中にて一人塔の
顛
(
いただき
)
へ
案内
(
あない
)
し、粉ひき車のあなたに、
滊車
(
きしゃ
)
の
烟
(
けぶり
)
見ゆるところをも見せ玉はずや
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
末造は床の間の柱に寄り掛かって、烟草の
烟
(
けぶり
)
を輪に吹きつつ、空想に
耽
(
ふけ
)
った。
好
(
い
)
い娘だと思って見て通った頃のお玉は、なんと云ってもまだ子供であった。どんな女になっただろう。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
先づ二人が
面
(
おもて
)
を
撲
(
う
)
つはたばこの
烟
(
けぶり
)
にて、
遽
(
にわか
)
に入りたる目には、
中
(
なか
)
なる人をも見わきがたし。日は暮れたれど暑き頃なるに、窓
悉
(
ことごと
)
くあけ
放
(
はな
)
ちはせで、かかる烟の中に居るも、
習
(
ならい
)
となりたるなるべし。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
烟
漢検1級
部首:⽕
10画
“烟”を含む語句
黒烟
烟草
烟管
烟筒
水烟
砂烟
烟出
烟草入
血烟
烟突
煤烟
巻烟草
烟草盆
烟草屋
炊烟
烟硝
土烟
香烟
青烟
雪烟
...