)” の例文
「しかし、こんなに、みじかくては、よくべないだろう。それに、せまいかごのなかに、はいっていたので、羽先はさきがすれているから。」
自由 (新字新仮名) / 小川未明(著)
茶店のえんに腰を掛けて、渋茶を飲みながら評議をした。……春日野の新道しんみち一条ひとすじ勿論もちろん不可いけない。峠にかかる山越え、それも覚束おぼつかない。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蜥蜴は死んだのか、気絶したのか、少しも動かぬ。トラはわんぐりといはじめた。まだ生きて居ると見えて、蜥蜴のが右左にうごいた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まるで権現ごんげんさまのっぱ持ちのようにすまし込んで、白いシャッポをかぶって、先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すっと空をかすめて、炬火の光を長くに引きながら、程離ほどはなれた大河の淵へ落ちこんで、そのまま見えなくなってしまいました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
元気なすずめ一羽いちわ、少し先の、半ば割れた赤煉瓦あかれんがの上に止って、絶えず全身をくるくる回し、をひろげて、かんにさわる鳴き声を立てていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
禅智内供ぜんちないぐの鼻と云えば、いけで知らない者はない。長さは五六寸あって上唇うわくちびるの上からあごの下まで下っている。形は元も先も同じように太い。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
左様さようでござりましたか。では、この飴はお子供衆におあげなさるのでござりますか。』と、そのについて亭主はいた。
小夜の中山夜啼石 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
くろってじゃれるのは、おまえしたっているからだよ。あたしゃまた、わるいいたずらでもされたかとおもって、びっくりしたじゃァないか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「東みず……水の尾村の東水の尾というところよ……でも、ここは、わたしの家があるだけよ。村のあるところは、もっとずっと向うですわ」
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
うす浅黄色あさぎいろのかすみの中に、ほたるがいくつもほの青い光のをひいて、高く低くとんでいましたが、林太郎はそれをつかまえようともしません。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
けれども、そこはヒースがたいそう高くしげっているため、エゾヤマドリの美しくまがったばねとふといくちばしとがつきでて見えるばかりでした。
そのうちに八つのの中の、中ほどの尾をお切りつけになりますと、その尾の中に何かかたい物があって、剣の刃先はさきが、少しばかりほろりと欠けました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そのこうたちは、祖先義清いらい、一世紀余も住み古してきた代々の家だった。北の彼方に、国分寺のあとがある。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこでねこはすっかりとくいになって、をふりてながら、みんながくびながくしてっているところへ行って
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
薫とのつらい気持もをひいているのに、父を見れば父を見るで、また父の気持ちを兼ねなければならない……小初は心づかれが一身に担い切れない思いがする。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
岡山と広島の間にみちと云う小さな町があります。ほんの腰掛けのつもりで足を止めたこの尾の道と云う海岸町に、私は両親と三人で七年ばかり住んでいました。
文学的自叙伝 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
そして、歌をうたいながら、を上下にふりうごかすので、そのたびに、金や、銀が、ピカピカ光りました。首のまわりに、小さなリボンがさがっていて、それには
頭はまどうかがは堂にくという素晴らしい大きさである。葉公はこれを見るやおそれわなないてげ走った。その魂魄こんぱくを失い五色主無ごしきしゅなし、という意気地無さであった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
カムヌナカハミミの命は、天下をお治めになりました。すべてこのカムヤマトイハレ彦の天皇は、御歳おとし百三十七歳、御陵は畝傍山の北の方の白檮かしにあります。
外国人がいこくじんをおいはらえという人々ひとびとは、ちょっとしたことがあると、すぐ外国人がいこくじんをきりころすようならんぼうをしました。生麦なまむぎじけんもその一つで、これはをひきました。
ポチは、妹と弟とをのければ、ぼくのいちばんすきな友だちなんだ。居留地きょりゅうちに住んでいるおとうさんの友だちの西洋人がくれた犬で、耳の長い、のふさふさした大きな犬。
火事とポチ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
左に掲ぐる地名は以前鉦打かねうち部落の住んでいたためにできたものと思う。なかんずく下総しもうささんのことは前にも話が出ている(柳田、念仏団体の変遷、郷土研究二巻二号)。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
道端には淡紅たんこうの花を簇開ぞくかいする小灌木「しもつけ」がまだ咲残り、帯紫たいし色の鐘状花しょうじょうか蛍袋ほたるぶくろや、とらがちょいちょいその間にまじる。「がくうつぎ」が白い花をつけて灌木の間をいろどる。
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
河内介の三倍ものかさのある衣裳を着けた夫人の立ち姿が、そのとき牡丹ぼたんくずれ落ちるようなゆったりとした動揺を起して、をわたる松風にも似た大袈裟おゝげさきぬずれの音を立てた。
思わず、君、失礼だけれどこれを電車賃にしたまえと、よれよれの五十銭ぜにを男の手ににぎらせた。けっしてそれはあり余る金ではなかったが、惻隠の情はまだ温くをひいていたのだ。
馬地獄 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
うちに里宮があり、奥ノ院の小祠は東岳と西岳との間の鞍部で、五万の図でいえば、東北麓の尾ノ内沢の源頭に当る尾根に、千五百六十米の小圏で現された小隆起の西側に安置され
奥秩父 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
かれがをふる具合で、わたしはかれがこの手紙が主人から来たことを知っていると思った。この三日のあいだにかれが少しでもうれしそうな様子を見せたのはこれがはじめてであった。
その頃は売立の会などにしましても、今日ほど繁々あるわけでもありませず、時折祇園のとが辺で小規模に催されるくらいでした。したがってそんな会は私にとっては大切な修業場でした。
座右第一品 (新字新仮名) / 上村松園(著)
ぼくの生活理想も、恋愛れんあいも。……そしておそらくそれは将来にもながくを引くことであろう。いや、あるいはぼくの一生がすでにそれによって決定されてしまっているのかもしれないのだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そのほか四条派しじょうはの画には清水きよみずの桜、とが紅葉もみじなどいふ真景を写したのがないではないやうであるが、しかしそれは一小部分に止つてしまつて、全体からいふと景色画は写生でないのが多い。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この事件は、よほど頭をしっかりさせて研究しないと、途中で飛んでもない錯覚に陥るおそれがあると云って警告しといたじゃないか……吾輩は姪の浜、浦山の祭神、うず権現ごんげん御前おんまえにかけて誓う。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みのがめひきたるごとき者、したる牛の首あげたるごとき者あり、月島星島桂島かつらじまきょせるがごときが布袋島ほていじまなら立てるごときは毘沙門島びしゃもんじまにや、勝手に舟子かこが云いちらす名も相応に多かるべし。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まず一番始まりが紀州の那智、次に二番が同国紀三井寺、三番が同じく粉川寺こがわでら、四番が和泉のまき寺、五番が河内の藤井寺、六番が大和の壺坂、七番が岡寺、八番が長谷寺、九番が奈良の南円堂なんえんどう
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
単に鼻をぎ合うとか、り合うとか、目をちょっと見合すとかいうだけで、相互そうごの意志が完全に疎通そつうするのに、人間はまわりくどく長たらしい会話をして、しかもなお容易に意志を通じ得ない。
うしのシチュー 秋 第二百五十 牛の尾
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
びっくりしたので、としちゃんは、きやんで、けて、赤犬あかいぬると、やさしそうなつきをして、っていました。
小さな年ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
さそりいい虫じゃないよ。ぼく博物館はくぶつかんでアルコールにつけてあるの見た。にこんなかぎがあってそれでされるとぬって先生がってたよ」
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「何、その方の物語は、いけ禅智内供ぜんちないぐとか申す鼻の長い法師の事じゃ? これはまた鼻蔵の後だけに、一段と面白かろう。では早速話してくれい。——」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
編笠あみがさかぶる親分のについて、一同が人影を織りながらゾロゾロと水車場の間を歩み出しましたが、そこの小屋の蔭を出た途端に、目の前の草原が、夕焼けのように
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都下砂村の有名な金魚飼育商の秋山が蘭鋳からその雄々おおしい頭の肉瘤にくりゅうを採り、琉金りゅうきんのような体容の円美と房々ふさふさとしたを採って、頭尾二つとも完美な新種を得ようとする
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
王子は一生懸命にそのにすがりつかれますと、尾だけがぬけ落ちて王子の手に残りました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
夜、紫なるとらの花拾銭、シオン五銭買って来る。雨にれて犬と歩む。よき散歩なり。フミキリの雨、夜の雨、青く光って濡れて走る郊外電車、きわめてこころよし。——十三日
生活 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
その大じゃと申しますのは、からだは一つでございますが、頭とは八つにわかれておりまして、その八つの頭には、赤ほおずきのようなまっかな目が、燃えるように光っております。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
この犬ののふり方にはたいていの人のしたや口で言う以上いじょう頓知とんち能弁のうべんがふくまれていた。わたしとカピの間にはことばはらなかった。はじめての日からおたがいの心持ちはわかっていた。
初霜はつしもけて、昨夜さくやえんげられた白菊しらぎくであろう、下葉したはから次第しだいれてゆくはな周囲しゅういを、しずかにっている一ぴきあぶを、ねこしきりにってじゃれるかげが、障子しょうじにくっきりうつっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
たいまつをとぼし、ろうそくをつけて正体しょうたいをよくますと、あたまはさる、背中せなかはとら、はきつね、あしはたぬきという不思議ふしぎなばけもので、ぬえのようなごえしていたことがわかりました。
(新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ただ、光の鈍い、長々とを引いた、えだに分れたような稲妻いなずまが、空にひらめいているだけで、それもひらめくというよりはむしろ死にかけている鳥のつばさのように、ぴくぴくふるえているのだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
その船は、クジャクののように、美しい色をしていました。そして、何千という、目のようなものを持っていました。ところが、その目というのは、じつは、鉄砲てっぽうをうつための、穴だったのです。
うしのスープ 秋 第二百五十 牛の尾
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)