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逢
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お
ふりがな文庫
“
逢
(
お
)” の例文
だが、その夜は、あいにく、
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
にもめぐまれず、しかもそれ以後まもなく、二人の恋は、致命的な事件に会わねばならなかった。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不思議な現象に
逢
(
あ
)
わぬ前ならとにかく、
逢
(
お
)
うた
後
(
のち
)
にも、そんな事があるものかと冷淡に看過するのは、看過するものの方が馬鹿だ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
眞「成程、じゃア
私
(
わし
)
が師匠に
逢
(
お
)
うてお前様お梅はんと寝て居りみすから、私に何うか
賭博
(
ばくち
)
の
資本
(
もとで
)
を貸してお呉んなさませと云うか」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
上方の遊びもつまらなくなって、こうして江戸へ出て来たが、お前と一緒でないと、どこの遊びも
面白
(
おもしろ
)
くない。ここで
逢
(
お
)
うたが百年目さ。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
宮地翁が河野が神仙に
逢
(
お
)
うたことを知ったのは、明治九年の夏のことであった。宮地翁はその時、教部省の
命
(
めい
)
で大阪に在勤して神道の講義をしていた。
神仙河野久
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
渠
(
かれ
)
がお通のあとを追うは
殆
(
ほとん
)
ど
旬日前
(
じゅんじつぜん
)
よりにして、美人が外出をなすに
逢
(
お
)
うては、影の形に添う如く絶えずそこここ
附絡
(
つきまと
)
うを、お通は知らねど見たる者あり。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三谷と倭文子は、東京へ帰ってからも、三日に一度は、場所を打合わせて置いて、楽しい
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
を続けていた。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そのかわりに二人の心は、日が暮れるのを待ちかねてこの地境の黒い土の上で
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
を楽しみ合うのでした。
卵
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
況
(
いわ
)
んやその人のためにはあらゆる背徳と忘恩の罪を犯してまで熱情を傾け盡したのに、
逢
(
お
)
う瀬を楽しめる時が来てから幾程もなく仲を
割
(
さ
)
かれてしまうのである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「月あかり見ればおぼろの舟の
内
(
うち
)
、あだな
二上
(
にあが
)
り
爪弾
(
つまび
)
きに忍び
逢
(
お
)
うたる首尾の松。」と
心悪
(
こころにく
)
いばかり、目前の実景をそのまま中音の美声に謡い過ぎるものがあった。
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お千代が心ある計らいによって、おとよは一日つぶさに省作に
逢
(
お
)
うて、将来の方向につき相談を
遂
(
と
)
ぐる事になった。それはもちろんお千代の夫も承知の上の事である。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
「それは目に見えておる。どういう目に
逢
(
お
)
うても」こう言いさして三男市太夫は権兵衛の顔を見た。「どういう目に逢うても、兄弟離れ離れに相手にならずに、固まって行こうぞ」
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
ついこの冬の末にそれもこの二本松のお城下にあった話じゃそうに厶りまするが、怪談に
逢
(
お
)
うたは旅の憎じゃとか申すことで厶りました。多分修行
半
(
なか
)
ばの
雲水
(
うんすい
)
ででも厶りましたろう。
十万石の怪談
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
佐渡
(
さど
)
では
能登
(
のと
)
と土佐と二つの国から漂着した男女が、行き
逢
(
お
)
うてここに島人の始祖となったという伝説もあるそうだが、それはおそらく空想の翼が、
生
(
は
)
え揃うてから
後
(
のち
)
の飛躍であった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「今
曲者
(
くせもの
)
に
逢
(
お
)
うたのじゃ」若衆は既に沈着に声も乱さず云うのであった。「すぐ川の側の
藪畳
(
やぶだたみ
)
、そこまで来ると覆面の武士が、十人ほどむらむらと走り出て、私に切ってかかったのじゃ。 ...
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
途端に今まで黙っていたりし女は急に呼びとめて、この二三日にのっそりめに
逢
(
お
)
うたか、と石から飛んで火の出しごとく声を
迸
(
はし
)
らし問いかくれば、清吉ふりむいて、逢いました逢いました
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
こうして夏から秋ぐちまで、ひとめを忍ぶ
逢
(
お
)
う瀬がつづいたのである。
初蕾
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「こないだ○○町で
逢
(
お
)
うたらば、ホラ
侠客
(
きょうかく
)
の『○○天山』の新聞で働いとるげなてち——、その言うこつがええたい、こんどはぬしどんが四の五の言うなら
叩
(
たた
)
ッ
斬
(
き
)
ってしまうちゅうけんな、おッそろしか——」
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
「長唄も
岡安
(
おかやす
)
ならまんざらでもないけれども、松永は唯つッこむばかりで面白くもなんとも有りゃアしない。それよりか清元の事サ、どうも意気でいいワ。『
四谷
(
よつや
)
で始めて
逢
(
お
)
うた時、すいたらしいと思うたが、因果な縁の糸車』」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
今ひとたびの
逢
(
お
)
うせともがな
現代語訳 平家物語:10 第十巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
逢
(
お
)
う
魔
(
ま
)
が
時刻
(
とき
)
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
世話になった昔の人に、心細く附き添う
小
(
ち
)
さき影を、
逢
(
あ
)
わぬ五年を
霞
(
かすみ
)
と隔てて、再び
逢
(
お
)
うたばかりの
朦朧
(
ぼんやり
)
した間柄と云い切ってしまった。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
先刻
(
さっき
)
も申す通り私は決して悪人ではない、賊の為に災難に
逢
(
お
)
うて逃げる
機
(
はずみ
)
に此の穴へ落ちた者、其の時お前が
追掛
(
おっか
)
けて出た
彼
(
あ
)
の二人の者こそ泥坊じゃぞえ
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「なんぼ神経麻痺してたかて、あてに
逢
(
お
)
うたらハッキリするやろ? そやなかったら熱情足らんねんし」いいなさって、興奮の程度で
孰方
(
どっち
)
パッション強いか分る
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
もう一つ、もっと大事な意味があったように、私は子供の頃から聞かされていた。この夜は、
牽牛星
(
けんぎゅうせい
)
と織女星が、一年にいちどの
逢
(
お
)
う瀬をたのしむ夜だった
筈
(
はず
)
ではないか。
作家の手帖
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「今日は、
豪
(
えら
)
い目に
逢
(
お
)
うた、主翁、お前は、あの毎日碁を打ちに来る坊主を、
何
(
な
)
んと思う」
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それは、どこか人目につかぬ場所に、家を一軒借りて、そこを静子と私との
媾曳
(
あいびき
)
の場所と定め、誰にも知られぬ様に、二人丈けの秘密の
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
を楽しもうということであった。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
翌日また
正午頃
(
ひるごろ
)
、里近く、滝のある処で、
昨日
(
きのう
)
馬を売りに行った
親仁
(
おやじ
)
の帰りに
逢
(
お
)
うた。
高野聖
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相思の恋人を余儀なく人の夫にして近くに見ておったという悲惨な経過をとった人が、ようやく春の恵みに
逢
(
お
)
うて、新しき生命を授けられ、梅花月光の契りを再びする事になったのはおとよの
今宵
(
こよい
)
だ。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
最前
逢
(
お
)
うた五六匹のじゃらんじゃらんもことごとくこの婆さんの腹の中でまた誰ぞ来たと思われては山を
下
(
くだ
)
り、思われては山を登ったのだろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ないないかような大難に
逢
(
お
)
うて、
天主
(
でうす
)
様の
御救
(
おたす
)
けに
与
(
あずか
)
り、
天国
(
はらいそう
)
へ生れて、安楽な
活計
(
たつき
)
に、ひもじい目にも
逢
(
あ
)
わず、
瓔珞
(
ようらく
)
をさげていたいと願うていたところじゃ、早う打ち殺して
切支丹転び
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そいで夏過ぎてからも、大阪の家が近いとこにあったさかい常時
孰方
(
どっち
)
ぞから呼び出しては
逢
(
お
)
うてたら、或る時女学校時代のお友達から綿貫のことについて妙な
噂
(
うわさ
)
あるのん聞いた。
卍
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一段と
濃
(
こまや
)
かに、真剣になって行ったので、その
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
も繁く、彼等が
夢現
(
ゆめうつつ
)
の恋に酔うことが烈しければ烈しい程、随って柾木が、あの歯ぎしりする様な、苦痛と快楽の
錯綜
(
さくそう
)
境にさまよう事も
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お町は
漸
(
ようや
)
く
安堵
(
あんど
)
して、其の夜は
神仏
(
しんぶつ
)
へ
願
(
がん
)
掛けて、「
八百万
(
やおよろず
)
の神々よ、
何卒
(
なにとぞ
)
夫文治郎に
逢
(
お
)
うて
敵
(
かたき
)
を討つまで、此の命を
全
(
まっと
)
うせしめ給わるように」と
瞬
(
またゝ
)
きもせず
夜
(
よ
)
の明くるまで祈って居りました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「おお、先生はどうしとるか。帰ってから、まだ尋ねる
閑
(
ひま
)
がないから、行かんが。君先生に
逢
(
お
)
うたら
宜
(
よろ
)
しく云うてくれ。ついでに御嬢さんにも」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
男が
心
(
しん
)
から今夜の
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
に感激しているなら、片時も女の側を離れまいとするのが当り前である。それだのに女をひとり行かして、自分は寝て待っているなんて、その
料簡
(
りょうけん
)
が気に入らない。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それとも山中の
逢
(
お
)
う
魔
(
ま
)
が
時
(
とき
)
の幻に過ぎなかったのか。京子は判断に迷った。
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
蟠「いや
何
(
ど
)
うも飛んだ目に
逢
(
お
)
うた」
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
不折ハ今
巴里
(
パリ
)
ニ居テコーランノ処ヘ通ッテ居ルソウジャナイカ。君ニ
逢
(
お
)
ウタラ鰹節一本贈ルナドトイウテ居タガ、モーソンナ者ハ食ウテシマッテアルマイ。
『吾輩は猫である』中篇自序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「しかし鉄片が磁石に
逢
(
お
)
うたら?」「はじめて逢うても
会釈
(
えしゃく
)
はなかろ」と拇指の穴を
逆
(
さか
)
に
撫
(
な
)
でて澄ましている。
一夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
無理な
一瞥
(
いちべつ
)
の
下
(
もと
)
に余の
眸
(
ひとみ
)
に映った顔は、
逢
(
お
)
うたと
記
(
しる
)
すよりもむしろ眺めたと書く方が適当なくらい離れていた。余はこの一瞥よりほかにまた子供の影を見なかった。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小夜子の旅は明かなる夢と明かなる現実がはたと行き
逢
(
お
)
うて区別なき境に至ってやむ。夜はまだ深い。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
屋敷へ
出入
(
でいり
)
する機会もそれぎり絶えてしもうて、——その
後
(
ご
)
は
頓
(
とん
)
と
逢
(
お
)
うた事がありません
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
束
(
つか
)
の間に危うきを
貪
(
むさぼ
)
りて、長き
逢
(
お
)
う
瀬
(
せ
)
の
淵
(
ふち
)
と変らば……
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「あ、そうか。この間、何でも博士に一人
逢
(
お
)
うた」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
逢
漢検準1級
部首:⾡
11画
“逢”を含む語句
出逢
行逢
逢着
逢度
逢曳
遭逢
御逢
逢引
逢魔
逢坂
逢坂山
逢初
逢瀬
相逢
出逢頭
逢著
逢見
逢阪下
逢初川
巡逢
...