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遠くは六朝りくちょう時代より近くは前清ぜんしんに至るまでの有名な小説や筆記の類にって、時代をって順々に話していただくことに致しました。
新人が立ち、旧人はわれ、ふるい機構は、局部的にこわされてゆく。そしてまた局部的に、新しい城国が建ち、文化がはじめられて来た。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
または烏などをう手つきが、やはり一種の形式的な道場癖をもっていて、妙に私をして感心させるような剣術を思わせるのであった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
この女のためにはけいを講じ史を読むのは、家常の茶飯であるから、道家の言がかえってその新をい奇を求める心をよろこばしめたのである。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その思い附きをって空想をせることに、鶴見は特に興味を感ずる。新聞社に投じた文章もそうした思い附きの一つに過ぎなかった。
そして晝間でも御殿の下の日当りのよい石崖いしがけりかゝって、晴れた秋の空を見上げながらひとりぼんやりと幻をいかけたりした。
それでも、畿内の空の日だと思うと何となく懐かしい、私は日頃の癖のローマンチックの淡い幻影まぼろし行手ゆくていながら辿った。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
やがて瞳は好奇と欲望の光を帯びて来て、その眼眸は薄い夏衣なつぎの下に、真弓の美しく発達した腰や脚の形をふらしかつた。
水と砂 (新字旧仮名) / 神西清(著)
吾人はもとより滔々たる天下とともに諸公をうて中興の天地を頌歌しょうかし、その恩沢に浴するの便宜なるを知らざるにあらず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それによく似た流行をう人の群だ、自分の趣味でも主張でもなく、人のあとにくっついてうろうろする、煩わしいが罪のない気の毒な人達だ。
睡っている間も、ベーカー街一〇一番を忘れなかった私は、美しい幻をいながら、仕度もそこそこに家を飛出した。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
二三日の後、我は新月の光をひて、又同じところに來しに、こたびは自ら禁ずること能はずして、進みて灰色の寺壁の下に立ち、格子窓を仰ぎ視たり。
芳子は女学生としては身装みなりが派手過ぎた。黄金きんの指環をはめて、流行をった美しい帯をしめて、すっきりとした立姿は、路傍の人目をくに十分であった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
残る一羽もかう言ひさして、慌てて連のあとをつて、またたくうちに灰色の空に見えなくなつてしまつた。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
同時に例の不断の痛苦は彼をむちうつやうに募ることありて、心も消々きえきえに悩まさるる毎に、齷齰あくさく利をふ力も失せて、彼はなかなか死の安きをおもはざるにあらず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
葛城が軍艦から母の家に帰って来る毎に、彼は彼女と談話だんわを交えた。信仰を同じくし、師を同じくし、同じ理想をう二人は多くの点に於て一致を見出した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
冬の間は比較的麓の方に下っているのだそうであるが、晩春になると雪解の跡に萌え出づる瑞々しい芳草をうて、上へ上へとのぼり、夏は全く山上を棲処としている。
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その視線をうて望めば、北のかた黄海の水、天と相合うところに当たりて、黒き糸筋のごとくほのかに立ち上るもの、一、二、三、四、五、六、七、八、九条また十条。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
遊牧期にある民族としては、こうした習俗は当然のことであって、実際を言うと水草をうて転々した時代においては、屍体のことなどに屈托しては居られなかったに相違ない。
本朝変態葬礼史 (新字新仮名) / 中山太郎(著)
涼をうといっても、海はまだ羽田、大森でさえ開けない、上野や道灌山の森蔭へ行って寝ころぶくらい、さなくば近郊の滝めぐり、目黒の不動、角筈の十二社、王子名主の滝
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
あえて流行をう考も無いし、もう年を取ったからしゃれても仕方が無いと思って居るので、妻の御仕着せを黙って着て居るが、女などがいい着物を着たのを見ると、成程なるほどいいと思う。 
そうして只圓翁の凜烈りんれつの気象は暗にこれに賛助した事になるので、翁の愛嬢で絶世の美人といわれた到氏夫人千代子女史が、夫君の後をうて雪中を富士山頂に到り夫君と共に越冬し
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
この時に至りて我は既に政界の醜状をくむの念漸く専らにして、利剣をつて義友と事を共にするの志よりも、静かに白雲をふて千峰万峰をづるの談興にふけるの思望おほいなりければ
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
しかれどもかかる流行的理論をいて軽々しく政体その他の変改を主張することは国民論派のあえてせざるところなり。何となればこの論派はいたずらに改革そのものを目的とするにあらず。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
さればとて印度インド民族はアングロサクソン民族では無い。それがこのまま晏如あんじょとして何時いつまでも英国の節度に服して行くのであろうか。民智は時をうて進歩し、自治的能力はそれに伴って発達する。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
自由に、楽んで、内なる光明をって
三好、松永の乱にわれて、諸国を逃げあるいていた亡命の将軍家義昭よしあきは、先頃から若狭わかさ武田義統たけだよしむねを頼って来て、そこに身を寄せ
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此説は懐之に自知の明があつて、早きをうて責任ある地位をのがれたものとも解せられる。わたくしは只その年月の遅速をつまびらかにしない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
うしろからわれるような、絶えざる強迫観念におそわれながら、まるで一人のさびしい犯罪者の落ちてゆくように、小路のまがり角などで
或る少女の死まで (新字新仮名) / 室生犀星(著)
彼女の姿が再び夜の闇に消えてしまっても、まだ部屋の中に漂いつつ次第にうすれて行く匂を、幻をうように鋭い嗅覚きゅうかくで趁いかけながら。………
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
この書簡は彼が露艦をうて長崎にきたり、遠遊のこころざしを果さんと欲して得ず、その帰途周防すおうより横井翁に寄せたるもの。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
同じやうな型にはまつた作、流行をつたやうな作、チヤンと構図と構成のきまつたやうな作、さうした作の多いのは、つまり対世間の作者が多いからである。
解脱非解脱 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
川上かわかみの空に湧いて見えた黒雲は、玉川たまがわの水をうて南東に流れて来た。彼の一足毎に空はヨリくらくなった。彼は足を早めた。然し彼の足より雲の脚は尚早かった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
其一にからだもたせたまま、眼はいつしか三千米の天空に今年のこの夏の唯一日であるかの如くに今日をほこっている高根の花をうて、その純なる姿にうっとりと見入った。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それを以て如何いかにして太陽の光輝を想い得よう、日に照せば彼は一片の石塊となる、回顧はついに茫乎として去った夢をうに過ぎない……私はつくづくと年の経ったのを感じた。
頭部に受けし貫一が挫傷ざしようは、あやふくも脳膜炎を続発せしむべかりしを、肢体したい数個所すかしよの傷部とともに、その免るべからざる若干そくばくの疾患を得たりしのみにて、今や日増に康復こうふくの歩をひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
聞く所にれば近来も怪談大流行、到る所に百物語式の会合があると云ふ。で、私も流行をうて、自分が見聞の怪談二三を紹介する。ただいずれも実録であるから、芝居や講釈の様に物凄いのは無い。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
浪をふ——常世とこよの島の島が根に
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あとをこそふといへ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
残務に当っている一部の者は、極端な劇務げきむわれ、閑役かんやくの者は、門扉もんぴを閉めきって、主君のに服しているほか、なす事もなかった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男の何かに確乎しっかりとつかまっていようとする筒井には、妙に貞時の感覚とか印象とか親切さが日をうて加わり、解きがたいものになっていた。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
僕をこの催しに誘い出したのは、写真を道楽にしているしとみ君と云う人であった。いつも身綺麗みぎれいにしていて、衣類や持物に、その時々の流行をっている。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かくのごとく武士は高等武士をうて集まり、輜重部は武士を趁うて集まり、諸々もろもろの貨物は輜重部を趁うて集まり、ここにおいてか一城下には必ず一の市邑しゆうを生じ
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かの法師丸の時代に女首の刺戟しげきが与えた不思議な快感、奇怪な幻想、「秘密な楽園をふ心」は
明治二十二年の夏には、父に伴われて磐梯山破裂の跡をたずねての帰途初めて、二十七年の九月には、利根水源探検隊のあとって偶然にも、私は尾瀬の一部に足を蹈み入れた。
尾瀬の昔と今 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
朽ちせぬ光のべたるみそらへば
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
にもかかわらず彼らの迷妄はさめず、宗教の名にかくれて世衆を惑乱し、それにくみさぬ良民はって、兇徒を嘯集しょうしゅうし、勢いますます猖獗しょうけつして
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また秋が来たとき生絹は笛吹く人のもと殿仕とのつかえしていたが、落着いて見れば津の国からの便りもあらず、生絹も雑用にわれて問うこともなかった。
荻吹く歌 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
抽斎は友人多紀茝庭さいていなどと同じように、すこぶるオランダ嫌いであった。学殖の深かった抽斎が、新奇をう世俗と趨舎すうしゃを同じくしなかったのは無理もない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
はかりごといよいよ出でていよいよたがい、あるいは神奈川に返り、あるいは横浜に赴き、あるいは外艦をうて羽根田にいたるも、陸上より艦を眺め、陸上より艦を追うのみにして
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)