続スウィス日記(千九百二十三年稿)ぞくスウィスにっき(せんきゅうひゃくにじゅうさんねんこう)
蒼茫として暮れてゆくアルプスの群山を仰げば、あの氷の上を羚羊のごとく跳び廻った日が夢のように遠い。 日に露された蛍光石の闇に光を放つように、身に沁みた歓びを胸底に秘して、眼を閉じて回顧に耽った幾年が、今、こうして染み染みと山に対えば、あたか …